刃先に触れる恋 —君が短くなるたび、僕は惹かれていく—

S.H.L

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第1部

第21章:二度目のデート ― すこし長く、すこし近く

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第21章:二度目のデート ― すこし長く、すこし近く

1|圭介「明日、空いてるか?」突然の誘い

 金曜日の夜。

 仕事を終えた澪のスマホが震えた。

 見ると――圭介からだった。

 圭介:
  明日、空いてるか。
  前みたいに歩くのもいいし、
  何か食いに行ってもいい。

 (……っ)

 二度目の“外で会う誘い”。

 澪は心臓が跳ねるのを感じながら返信した。

 澪:
  空いてます。行きたいです。

 送ってから気づく。

 (“行きたいです”って……
  これもう、告白みたいじゃない?)

 でも取り消さない。

 ――その気持ちに嘘はないから。



2|デート当日、鏡の前で悩む

 翌日。

 服を選びながら、澪は鏡の前に立った。

 2~3mmに伸びた坊主。

 ざら、ふわ……ざら

 触り心地が日に日に変わっていく。

 (この長さ……どう思うかな、圭介さん)

 伸びた髪も好きだけど、
 切りたい気持ちも生まれ始めている。

 理由は、ひとつ。

 (圭介さんに……綺麗にしてほしい)

 胸の奥がきゅっとなる。



3|待ち合わせ場所に、圭介は“前より柔らかい顔”で現れる

 駅前。

 圭介は白のプルオーバーに黒のパンツという
 シンプルな服で現れた。

 でも、前回より――
 表情が柔らかい。

 「ああ……澪」

 呼ばれただけで胸が熱くなる。

 「今日……その髪、いいな」

 「え……?」

 「前より柔らかい感じがする。
  ……触りたいくらいに」

 (な、なに言って……!)

 一瞬で顔が赤くなる。

 圭介は気まずそうに咳払いした。

 「……いや、言いすぎた」



4|商店街を歩く。肩の距離が“昨日より近い”

 二人は並んで商店街へ向かった。

 カフェ、古本屋、雑貨店。
 休日らしいゆったりした空気。

 澪は歩きながら気づく。

 (……肩が……ちょっと当たる)

 ほんの少し、
 服が触れる程度。

 でもそのたびに、
 胸がふわっと浮いた。

 (距離……近い……)

 圭介も意識しているようで、
 歩幅をわずかに調整してくる。

 それだけで心臓が騒いだ。



5|小さな喫茶店で向かい合う。圭介の視線が髪に留まる

 古い喫茶店に入る。

 木のテーブル、古いランプ。
 落ち着いた店内。

 コーヒーが運ばれた頃、
 圭介がじっと澪の髪を見た。

 「……3mmって、いいよな」

 「ど、どこがですか……?」

 圭介はゆっくり言った。

 「形がはっきりわかる。
  頭のラインが綺麗だし、
  触りたくなるような柔らかさがある」

 (触りたい……って……
  前回よりストレート……!)

 澪は視線をそらしながら、
 無意識に自分の髪を撫でてしまう。

 ざら……ふわ……

 それを見て圭介が笑った。

 「触るなら、俺に言え」

 「っ……!」

 心臓が破裂しそうだった。



6|「今度……どこ行きたい?」圭介からの質問

 コーヒーを飲み終える頃。

 圭介が唐突に言った。

 「なあ、澪」

 「はい……」

 「今度は、お前が行きたいとこに付き合う。
  どこがいい?」

 (……っ)

 前は圭介が誘った。
 でも今は、
 澪の希望を聞いてくれている。

 「えっと……
  海とか……行きたいです……」

 「海か。いいな。
  じゃあ次の休み、海に行こう」

 (決まった……)

 また会える。
 また近づける。

 胸が熱くなる。



7|喫茶店を出て歩くと、圭介が“立ち止まる”

 店を出ると、
 夕暮れが街を赤く染めていた。

 二人で歩いていると、
 圭介が急に立ち止まった。

 澪も止まる。

 「……澪」

 呼ばれた声が、
 今までと少し違う。

 圭介は澪のほうをゆっくり向く。

 「言わなきゃいけないことがある」

 (え……何……?)

 胸が高鳴る。
 手が震える。



8|「無理にとは言わねえけど……」圭介の言葉の続き

 圭介は少し迷って、
 でも逃げずに言った。

 「……無理にとは言わねえ。
  でも……」

 言葉が止まる。

 澪は息を呑む。

 「でも、俺は……
  今のお前を……」

 圭介が何を言おうとしたのか――
 その答えを聞く直前。

 自転車が横を通りすぎ、
 声が途切れた。

 「……っ」

 圭介は短く息を吐いた。

 「……悪い。場所が悪かったな」

 澪は首を振る。

 「聞きたいです。
  圭介さんの言葉、聞きたい……」

 圭介は目をそらし、
 そして静かに笑った。

 「ゆっくりでいいんだよ、澪。
  焦らせたくはない」



9|帰り道、澪の胸は“答えを知っている”

 駅へ向かう途中。
 二人はほとんど話さなかった。

 沈黙なのに苦しくない。
 むしろ暖かい。

 改札の前で圭介が言った。

 「今日はありがとう。
  また行こう。海、な」

 「はい……!」

 圭介は少し笑い、
 そのまま帰っていった。



10|夜、ベッドの上で気づく

 帰宅し、ベッドに横になりながら、
 澪は頭を撫でた。

 ざら……ふわ……
 ざら……ふわ……

 (圭介さん……
  言いかけた……あれ……)

 答えはわかっている。
 言葉にされる前から、
 胸はもう答えを持っている。

 だからこそ、
 次の海が怖くて、楽しみで、
 胸が苦しいほど高鳴った。
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