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暴れてやろうと思いまして
しおりを挟むトラビス領から一番近い領地に到着すると、案の定発病した人達を密室に隔離していると聞いた
さて、やりますか…
首に巻いていたスカーフをマスク代わりに口と鼻を覆って結ぶ
何してんだと言いたげに見てるウェルとエリックに
「2人もした方がいいよ」
と忠告するけど意味がわからないらしい
理解できない事はできないと頭で考えるタイプのウェルは拒否して、見た目が嫌だと格好を気にするエリック
もぉー!面倒な兄弟ねー
ムンプスウィルスは口と鼻から体内に入って感染するとクロードお兄様と同様の説明をウェルにする
「なるほどウィルスの侵入を防ぐのだな」
理解してくれたウェルはスカーフを取り出した
「それからねー気をつけないと後遺症もあるからねー」
エリックに向かって言えば、後遺症が当然気になる様子
「子種が無くなるのよ…」
これまたクロードお兄様の時と同様のパワーワードを耳元で囁いてやればエリックも慌ててスカーフを巻きだした
ふふふ…効果的面ね
ここの領地にはお医者様はいるが癒し手はいないらしい
うちの村は当然の事、トラビス領と比べても3倍は大きい領地なのに癒し手がいないなんて大変だなー
なんて他人事の様に思っていたけど、その大きな領地を私達3人でなんとかしないといけないのだと気がつくまでそう時間は掛からなかった
こりゃヤバい…
この兄弟2人で1日6人
おいおい、私は一体何人やらなきゃいけないんだ?
その時、私閃いちゃったんだよねー、
兄弟が6人癒して限界が来たら、その兄弟を私が癒せば元通りになるんじゃないかって!
私がウェル1人癒す事でウェルは後3人癒せるじゃん!
エリックも同様にすれば確実に癒せる人数は増えるし、私も大変楽になる!
ナイスアイディアじゃない?
その事をウェルとエリックに告げると、
「鬼か!」
「いや悪魔だ!」
と2人に親の仇の様な目で見られたよ
なんで?
とりあえず今日出来るところまでは頑張ってみた
重症な人が集められている部屋には約50人ほどいるらしい
ウェルとエリックは発熱と喉の腫れは癒せたがやっぱりウィルスを消す事は難しかったみたい
だから2人には熱と喉だけ頼んだ
もちろん3人終われば癒してまた3人、5回は繰り返したから2人合わせて30人は癒せたと思う
最後にはもう勘弁してと涙目になってたけどちゃんと癒してあげてたじゃん!
なんで?
残りの20人と、ウェルとエリックが癒した人達30人のウィルス除去は私が担当してなんとか隔離されてる重症な人達は全員今日中に終わった
ウィルスはもう消えてるからお家に帰っても平気だよって言ったら相当驚かれたけど、皆嬉しそうに帰って行った
もう死を覚悟してたって泣いてる人もいた
なんやかんや大変だったけど、やっぱり元気になって良かったなって本当心から思ったよ…
「アーーンーー」
元気になった領民の皆と対称的にヨレヨレになってる兄弟に低ーい声で呼んでくる
「おい、化け物!無理だぞ!こんなの普通の人は無理っ!」
エリックが叫ぶ
「確かにこれが連日続くのは厳しいですね」
今度は悔しそうにウェルが言う
まあー!人を化け物って、失礼しちゃうわねー
どうせ辛いのは今日だけよ
「力は使えば使うほど増えるの、限界を5回も超えたのだから明日はもっと楽になるわよ」
私の理論を不思議そうな顔で聞いている2人
「なんでわかるんだ?」
ウェルの質問に私は少し考える
だってそういう物じゃない?
異世界転生、チート能力、魔法、魔力
それ系の話ってだいたいそうじゃん?
と、前世の読書好きが顔を出す
でもそれを説明できないなー
「トラビス領の時、私がそうだったから」
まあこれは本当、トラビス領で今までに無いくらいの人数を癒したら次の日は楽になってたのよ
単になれただけかもしれないけど
「マジで?俺らもアンみたいになれる?」
エリックが目をキラキラさせて食いつく
「も、もちろん!なれるよー」
ちょっと噛んじゃったけど、エリックに合わせて同意しておく
ウェルはまだ怪しんでるみたいだけどね
「よーし、明日もガンガン癒して暴れてやろうぜっ!」
すっかりやる気になったエリックは私の肩に左手を回して右手はグーで突き上げる
「そうだそうだー暴れてやろー!」
冷たい視線のウェルから逃れ、エリックに調子を合わせ私も拳を突き上げるのだった
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