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12. domの兆し
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目が覚めたら、すっかり窓の外は朝日が差していた。
あれ?僕…あぁそうだ…昨日春人がうちに来てくれて、カレーライス食べてくれて、それから…
初めてした深いキスや甘いコマンドを思い出して、幸せな気持ちになった。昨日はすごい事いっぱいしちゃったな。気持ちよかったけど…冷静になると恥ずかしい…
どんな顔して春人に会えばいいんだろ…
そういえば、春人が隣にいない…リビングかな?
気分はすごくスッキリしている。しっかりプレイしてもらったから sub性が安定してるんだろうな…
自分の姿を見ると、全身のベトベトは綺麗になっていて、パジャマまで着ていた。
春人がしてくれたんだ…僕だけ先に寝ちゃって、申し訳ない事をしたなぁ…
寝室を出てリビングの中を見回しても、春人はいなかった…
キッチンも、お風呂も、トイレも、使ってない空き部屋も、全部見たけど、どこにも春人がいない…そういえば春人のカバンもなかった気がする…
僕は慌てて玄関へと駆け出した。玄関には春人の靴がなかった…帰ってしまったのかな…
慌てて外に出ようとして思いとどまった。
春人はどうして、何も言わずに帰ったんだろう…
昨日の事を思い出してみると、僕はただ蕩けていて、春人にしてもらってばかりで、春人に何もしてあげていない…僕は2回もイッて、そのまま寝てしまったけど、春人は一度もイケずに、さらに後始末までさせられて…
sub失格だ…春人はきっとこんな僕にガッカリして、嫌いになっちゃったんだろう…
だけど、僕が起きてたら別れたくないって泣き喚くかもしれないから、寝ているうちにそっと帰ったんだ…
ご主人様に悪い子だって…きっともういらないって思われたんだ…
さっきまで晴れ渡っていた心は黒い雲に覆われて、足元が崩れていく感覚に今にも引き摺り込まれそうになり、僕は玄関に蹲った。
ごめんなさい…ごめんなさい…もうしないから…帰ってきて…お願い僕を1人にしないで…
あれ…僕ははじめから1人じゃないか…
ていうか僕って誰のこと?
…まぁいいか…どうでもいいか…
体中が冷えていく感じがする…
手足が芯から冷えて動かなくなっていく…
このままじゃダメだ…不安症の薬を飲まなきゃって気持ちを、もうこのまま消えてしまえばいいという気持ちが覆い隠していく…
僕は真っ暗闇に沈んでいく…
***
「理人!理人!」
遠くから声が聴こえる…温かい優しい大好きな人の声…誰だっけ…誰でもいいや…この声に従えば幸せな気がする…
「理人、いい子だから【come back】俺を信じて帰っておいで…大丈夫だよ…理人はいい子だよ。大好きだよ」
あ…理人って…僕の名前だ…僕の大好きな人が僕を呼んでる。僕の事を大好きって言ってくれてる…
いい子だよって…僕のご主人様…僕…頑張るから…だから見捨てないで…春人…
「はると…」
「りひと?!よかった!戻って来てくれたんだね!【very good】偉いよ! もう大丈夫。帰って来てくれてありがとう!理人はsub drop仕掛けてたんだよ。
「春人、ごめんなさい…また迷惑かけちゃった…」
「そんなこと気にしなくていい…でも、いい子だから、 どうか俺の傍にいてくれ」
「傍にいていいの?僕悪い子なのに…昨日は僕1人だけ気持ちよくなって勝手に寝ちゃったし、後片付けも何もしなくて…呆れたよね…だから帰ったんでしょう?
それなのに、戻って来てくれて僕のケアしてくれてありがとう…心配かけてごめんなさい…僕、悪いところ全部直すから…お願い捨てないで…」
「違うよ!理人は何も悪くない!昨日はすっごく頑張ってくれたよ…すごく可愛かったよ!俺が悪かった…プレイのアフターケアを怠って理人を1人にした俺が悪いんだ…」
「ちが…はるとのせいじゃ…」
「【sush】理人、よく聞いて」
「いいかい理人…理人は誰のもの?」
「はる…と…の」
「そうだ。俺がneutralだろうが何だろうが、理人は俺のsubで、俺のものだ。だから全て俺の責任だ…いいね?」
「うん…」
「俺が主人で管理者だ。
だから誰に何を言われても耳を貸さなくていい。
だから自分自身を責める言葉にも耳を貸すな。
お前を管理するのは俺だけだ。
理人が間違えた時は俺がちゃんと躾けてやるし、お仕置きだってしてやる。
他の誰に責められる必要もない。
だから気にするな…
全て subの躾けができなかった俺の責任だ…わかったか?」
春人が僕に噛んで含めるように言い聞かせた。
「はい…」
わかりました。僕のご主人さま…
そうだった…僕は1人じゃない…僕をちゃんと見てくれるご主人様がいるんだ…
「【good】偉いぞ。俺がお前を捨てる事は絶対ない。俺のsubなんだから、俺を信じろ…」
僕に笑いかけてくれた春人の目には昏い光が宿っていて本当にdom様っぽい…
春人が頭を撫でてくれて…フワッと心が温かくなった…
溢れてくるグレアの中にほんの少しだけいつものグレアと違う愛しいグレアが混ざっているのを感じた…
あれ?
「お腹空いてないか?」
春人の声に思考が掻き消された。
「春人が起きたらすぐ食べられるように朝ごはんの材料買って来たんだ。グレアに蕩ける可愛い春人を他の奴に見せたくなくて、寝ている間に買い物に行ったんだ…1人にしてごめんな…」
僕は黙って首を振った。春人が自分の責任って言ってくれたのを否定したくなかった…『僕は春人のもの』って言ってくれたのが嬉しかったから…
僕はいつも実家で使用人に料理してもらってるから、カレーライス以外作れないけど、春人は料理が作れるらしい。
ささっとクロックムッシュとサラダと美味しいコーヒーを淹れてくれて、僕たちは遅い朝ごはんを食べた。
「美味しい!」
僕は夢中になってクロックムッシュを頬張った…サラダも食べだけど、ミニトマトは苦手だからなんとなく後回しにする…
僕のフォークがミニトマトに行かないのを春人が気づいてミニトマトを掬って僕に差し出した。
う…
「はい、あーん…」
僕は渋々とミニトマトを口に入れた。
「ん…あれ?美味しい!」
味はいつもと変わらないのに、春人に食べさせてもらっただけでこんなに美味しいなんて…
「ふふ…ミニトマトまで美味しくなるなんて…本当に躾けられちゃってる…」
「いい子だ」
褒めてもらうと心臓がきゅぅってなってグレアが溢れ出した。
「理人、セーフワードを言ってごらん」
「え…でも…」
「いいから…【say】」
「……………」
「……………」
春人は急かさずに僕が言うのをじっと待っている。
「…た…たかねのはな」
途端、今まで体中に溢れていたグレアがスッと引いた…
「あれ……?」
「どうだ?」
「グレアがなくなった…」
「やっぱりそうか…体内グレアも同じグレアならセーフワードでなくなるんじゃないかと思ったんだ…
セーフワードの効力が効いているうちは、俺たちは普通の恋人同士のように過ごせる。
これで外にも出かけられるし、学内で一緒に過ごす事もできる」
やった!すごい!これでずっと一緒にいられる。
「これなら僕たちは普通の恋人同士だね」
「グレアを感じなくても俺と一緒にいたいって思ってくれるか?」
「え…?」
「本当はすごく怖かったんだ…ずっとdomを求めていた理人にとって、グレアのトリガーとしての価値がなくなった俺でも理人は望んでくれるのかって…」
「ふふ…僕のグレアがどうして出るか、忘れちゃったの?僕が春人に恋をして、ときめいてグレアが出るんだよ…グレアが出なくたって、好きな人の傍にいられて嬉しくないわけないじゃない!」
「…そっか…理人ありがとう…」
春人が僕にキスしてくれた。キュンと胸が跳ねる。もっと春人がほしくて自分から舌を差し出した。
春人は僕の舌を口内に招き入れて舌を絡めてくれた。グレアで蕩けない頭はハッキリしていて、いつも以上に恥ずかしいけど、幸せだ…
***
「セーフワードが効いてるうちに出かけようか?」
「うん!春人の入れてくれるコーヒー、お揃いのカップで飲みたいな!」
「じゃ見に行こうか…」
僕らは着替えて、手を繋いで出かけた。
敢えて電車に乗らずに街をブラブラしながら一駅分歩き、僕らはショッピングモールに入った。
可愛い雑貨屋さんにちょっと渋めのステンドグラスみたいな色合いのマグカップを見つけて、僕らは色違いでそれを買った。
僕のマンションに置くものだし、僕が払うと言おうとした時、春人がお互いに相手の分を買って贈り合おうと提案してくれた。
こういう時ってどちらが支払うかでどうしても気まずいやりとりが発生してしまうけど、それを素敵なイベントに変えてしまうなんて、春人は本当にすごい。
neutralだし、やっぱり恋人とかいたのかな…
ちょっともやもやする…
その後はブラブラ買い物して、春人が使えそうな調味料とかを選んでいくつか買い足してから、僕たちはカフェに入った。
僕はパスタとグラタンで悩んでいて、メニューの同じところをずっと見てたらしくて、何も言ってないのに春人が両方頼んで分けてくれた。
外だけど、あーんってされると嬉しくて僕は餌付けされてるみたいにパクパク食べちゃう。
あれ?
なんか…トロンとしてきた…
「春人…グレア、また出てきたみたい…」
「セーフワード使う?それとも帰る?」
「ん…帰りたい…」
「いいよ…」
春人は食べずに終わってしまったケーキをお店の人に箱に詰めてもらって、全部の荷物を片手に持つと、もう片手で僕を抱っこして連れて帰ってくれた。
重くないかな…春人のいい匂いがする…僕は春人の肩に顔を埋めておでこをぐりぐりした。
***
家に帰ると春人は僕をソファに下ろして、ケーキを冷蔵庫にしまうと、僕のすぐ横に座った。
「プレイする?それとも休む?」
「…プレイしたい…あとイチャイチャも…したい」
「あんまり煽るなよ…理人…【kneel】」
僕は春人の前にペタンと座った。
「理人、【Kiss】」
どこにって言われなかった…僕を試してるのかな…
どこでも春人は怒らないと思うけど、朝のdom様な理人をもう一度見たくて、春人の足を持ち上げて靴下を脱がせてから、足の甲にそっと口づけた。
「~んっとにお前は!俺を煽る天才だな…覚悟しろよ」
春人は頭を抱えながら俺を睨んだ…あ…またさっきの目だ…その目がすごく色っぽくて僕はゾクゾクした…
さっき感じた大好きなグレアを仄かに感じる…
あれ?僕…あぁそうだ…昨日春人がうちに来てくれて、カレーライス食べてくれて、それから…
初めてした深いキスや甘いコマンドを思い出して、幸せな気持ちになった。昨日はすごい事いっぱいしちゃったな。気持ちよかったけど…冷静になると恥ずかしい…
どんな顔して春人に会えばいいんだろ…
そういえば、春人が隣にいない…リビングかな?
気分はすごくスッキリしている。しっかりプレイしてもらったから sub性が安定してるんだろうな…
自分の姿を見ると、全身のベトベトは綺麗になっていて、パジャマまで着ていた。
春人がしてくれたんだ…僕だけ先に寝ちゃって、申し訳ない事をしたなぁ…
寝室を出てリビングの中を見回しても、春人はいなかった…
キッチンも、お風呂も、トイレも、使ってない空き部屋も、全部見たけど、どこにも春人がいない…そういえば春人のカバンもなかった気がする…
僕は慌てて玄関へと駆け出した。玄関には春人の靴がなかった…帰ってしまったのかな…
慌てて外に出ようとして思いとどまった。
春人はどうして、何も言わずに帰ったんだろう…
昨日の事を思い出してみると、僕はただ蕩けていて、春人にしてもらってばかりで、春人に何もしてあげていない…僕は2回もイッて、そのまま寝てしまったけど、春人は一度もイケずに、さらに後始末までさせられて…
sub失格だ…春人はきっとこんな僕にガッカリして、嫌いになっちゃったんだろう…
だけど、僕が起きてたら別れたくないって泣き喚くかもしれないから、寝ているうちにそっと帰ったんだ…
ご主人様に悪い子だって…きっともういらないって思われたんだ…
さっきまで晴れ渡っていた心は黒い雲に覆われて、足元が崩れていく感覚に今にも引き摺り込まれそうになり、僕は玄関に蹲った。
ごめんなさい…ごめんなさい…もうしないから…帰ってきて…お願い僕を1人にしないで…
あれ…僕ははじめから1人じゃないか…
ていうか僕って誰のこと?
…まぁいいか…どうでもいいか…
体中が冷えていく感じがする…
手足が芯から冷えて動かなくなっていく…
このままじゃダメだ…不安症の薬を飲まなきゃって気持ちを、もうこのまま消えてしまえばいいという気持ちが覆い隠していく…
僕は真っ暗闇に沈んでいく…
***
「理人!理人!」
遠くから声が聴こえる…温かい優しい大好きな人の声…誰だっけ…誰でもいいや…この声に従えば幸せな気がする…
「理人、いい子だから【come back】俺を信じて帰っておいで…大丈夫だよ…理人はいい子だよ。大好きだよ」
あ…理人って…僕の名前だ…僕の大好きな人が僕を呼んでる。僕の事を大好きって言ってくれてる…
いい子だよって…僕のご主人様…僕…頑張るから…だから見捨てないで…春人…
「はると…」
「りひと?!よかった!戻って来てくれたんだね!【very good】偉いよ! もう大丈夫。帰って来てくれてありがとう!理人はsub drop仕掛けてたんだよ。
「春人、ごめんなさい…また迷惑かけちゃった…」
「そんなこと気にしなくていい…でも、いい子だから、 どうか俺の傍にいてくれ」
「傍にいていいの?僕悪い子なのに…昨日は僕1人だけ気持ちよくなって勝手に寝ちゃったし、後片付けも何もしなくて…呆れたよね…だから帰ったんでしょう?
それなのに、戻って来てくれて僕のケアしてくれてありがとう…心配かけてごめんなさい…僕、悪いところ全部直すから…お願い捨てないで…」
「違うよ!理人は何も悪くない!昨日はすっごく頑張ってくれたよ…すごく可愛かったよ!俺が悪かった…プレイのアフターケアを怠って理人を1人にした俺が悪いんだ…」
「ちが…はるとのせいじゃ…」
「【sush】理人、よく聞いて」
「いいかい理人…理人は誰のもの?」
「はる…と…の」
「そうだ。俺がneutralだろうが何だろうが、理人は俺のsubで、俺のものだ。だから全て俺の責任だ…いいね?」
「うん…」
「俺が主人で管理者だ。
だから誰に何を言われても耳を貸さなくていい。
だから自分自身を責める言葉にも耳を貸すな。
お前を管理するのは俺だけだ。
理人が間違えた時は俺がちゃんと躾けてやるし、お仕置きだってしてやる。
他の誰に責められる必要もない。
だから気にするな…
全て subの躾けができなかった俺の責任だ…わかったか?」
春人が僕に噛んで含めるように言い聞かせた。
「はい…」
わかりました。僕のご主人さま…
そうだった…僕は1人じゃない…僕をちゃんと見てくれるご主人様がいるんだ…
「【good】偉いぞ。俺がお前を捨てる事は絶対ない。俺のsubなんだから、俺を信じろ…」
僕に笑いかけてくれた春人の目には昏い光が宿っていて本当にdom様っぽい…
春人が頭を撫でてくれて…フワッと心が温かくなった…
溢れてくるグレアの中にほんの少しだけいつものグレアと違う愛しいグレアが混ざっているのを感じた…
あれ?
「お腹空いてないか?」
春人の声に思考が掻き消された。
「春人が起きたらすぐ食べられるように朝ごはんの材料買って来たんだ。グレアに蕩ける可愛い春人を他の奴に見せたくなくて、寝ている間に買い物に行ったんだ…1人にしてごめんな…」
僕は黙って首を振った。春人が自分の責任って言ってくれたのを否定したくなかった…『僕は春人のもの』って言ってくれたのが嬉しかったから…
僕はいつも実家で使用人に料理してもらってるから、カレーライス以外作れないけど、春人は料理が作れるらしい。
ささっとクロックムッシュとサラダと美味しいコーヒーを淹れてくれて、僕たちは遅い朝ごはんを食べた。
「美味しい!」
僕は夢中になってクロックムッシュを頬張った…サラダも食べだけど、ミニトマトは苦手だからなんとなく後回しにする…
僕のフォークがミニトマトに行かないのを春人が気づいてミニトマトを掬って僕に差し出した。
う…
「はい、あーん…」
僕は渋々とミニトマトを口に入れた。
「ん…あれ?美味しい!」
味はいつもと変わらないのに、春人に食べさせてもらっただけでこんなに美味しいなんて…
「ふふ…ミニトマトまで美味しくなるなんて…本当に躾けられちゃってる…」
「いい子だ」
褒めてもらうと心臓がきゅぅってなってグレアが溢れ出した。
「理人、セーフワードを言ってごらん」
「え…でも…」
「いいから…【say】」
「……………」
「……………」
春人は急かさずに僕が言うのをじっと待っている。
「…た…たかねのはな」
途端、今まで体中に溢れていたグレアがスッと引いた…
「あれ……?」
「どうだ?」
「グレアがなくなった…」
「やっぱりそうか…体内グレアも同じグレアならセーフワードでなくなるんじゃないかと思ったんだ…
セーフワードの効力が効いているうちは、俺たちは普通の恋人同士のように過ごせる。
これで外にも出かけられるし、学内で一緒に過ごす事もできる」
やった!すごい!これでずっと一緒にいられる。
「これなら僕たちは普通の恋人同士だね」
「グレアを感じなくても俺と一緒にいたいって思ってくれるか?」
「え…?」
「本当はすごく怖かったんだ…ずっとdomを求めていた理人にとって、グレアのトリガーとしての価値がなくなった俺でも理人は望んでくれるのかって…」
「ふふ…僕のグレアがどうして出るか、忘れちゃったの?僕が春人に恋をして、ときめいてグレアが出るんだよ…グレアが出なくたって、好きな人の傍にいられて嬉しくないわけないじゃない!」
「…そっか…理人ありがとう…」
春人が僕にキスしてくれた。キュンと胸が跳ねる。もっと春人がほしくて自分から舌を差し出した。
春人は僕の舌を口内に招き入れて舌を絡めてくれた。グレアで蕩けない頭はハッキリしていて、いつも以上に恥ずかしいけど、幸せだ…
***
「セーフワードが効いてるうちに出かけようか?」
「うん!春人の入れてくれるコーヒー、お揃いのカップで飲みたいな!」
「じゃ見に行こうか…」
僕らは着替えて、手を繋いで出かけた。
敢えて電車に乗らずに街をブラブラしながら一駅分歩き、僕らはショッピングモールに入った。
可愛い雑貨屋さんにちょっと渋めのステンドグラスみたいな色合いのマグカップを見つけて、僕らは色違いでそれを買った。
僕のマンションに置くものだし、僕が払うと言おうとした時、春人がお互いに相手の分を買って贈り合おうと提案してくれた。
こういう時ってどちらが支払うかでどうしても気まずいやりとりが発生してしまうけど、それを素敵なイベントに変えてしまうなんて、春人は本当にすごい。
neutralだし、やっぱり恋人とかいたのかな…
ちょっともやもやする…
その後はブラブラ買い物して、春人が使えそうな調味料とかを選んでいくつか買い足してから、僕たちはカフェに入った。
僕はパスタとグラタンで悩んでいて、メニューの同じところをずっと見てたらしくて、何も言ってないのに春人が両方頼んで分けてくれた。
外だけど、あーんってされると嬉しくて僕は餌付けされてるみたいにパクパク食べちゃう。
あれ?
なんか…トロンとしてきた…
「春人…グレア、また出てきたみたい…」
「セーフワード使う?それとも帰る?」
「ん…帰りたい…」
「いいよ…」
春人は食べずに終わってしまったケーキをお店の人に箱に詰めてもらって、全部の荷物を片手に持つと、もう片手で僕を抱っこして連れて帰ってくれた。
重くないかな…春人のいい匂いがする…僕は春人の肩に顔を埋めておでこをぐりぐりした。
***
家に帰ると春人は僕をソファに下ろして、ケーキを冷蔵庫にしまうと、僕のすぐ横に座った。
「プレイする?それとも休む?」
「…プレイしたい…あとイチャイチャも…したい」
「あんまり煽るなよ…理人…【kneel】」
僕は春人の前にペタンと座った。
「理人、【Kiss】」
どこにって言われなかった…僕を試してるのかな…
どこでも春人は怒らないと思うけど、朝のdom様な理人をもう一度見たくて、春人の足を持ち上げて靴下を脱がせてから、足の甲にそっと口づけた。
「~んっとにお前は!俺を煽る天才だな…覚悟しろよ」
春人は頭を抱えながら俺を睨んだ…あ…またさっきの目だ…その目がすごく色っぽくて僕はゾクゾクした…
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