24 / 59
05&06:食事、どうする?
Aパート
しおりを挟む
「これも、これも、と」
佐伯さんの宣言通り、残業になったので、山崎さんと晩ご飯の買い出しに、コンビニに来ていた。
佐伯さんは、他の部署との調整で、文字通り走り回っている。
百目鬼君も一緒にコンビニまで来たのに、準備がある、とお箸とかを買って、先に戻ってしまっていた。
それにしても、お昼にカロリーとか、PFCバランスとかの話をしたので、買い物カゴに、入れにくい。
四人で取り分けて食べよう、とのことで、お弁当を四人分ではなく、オニギリやお惣菜を買うのだけど、脳裏にいろいろ巡る上、佐伯さんとの食事なので、カッコつけたい。
でも、お腹減った、とカゴに入れかけては戻し、を繰り返している。
それを後目に、山崎さんは、無造作に思えるくらいテキパキ、と商品を選んでいく。
お漬物とか、インスタントのお味噌汁とか、手慣れた感じだ。
レジでは、私が電子マネーで支払い、領収書をもらった。
業務命令での残業中の食事なので、経費で落とせるそうだ。
経費精算の方法は明日、佐伯さんが教えてくれるのだ、待ち遠しい。
とりあえずは、目の前の残業だ。
佐伯さんと晩ご飯を食べて、がんばろう。
エレベーターの中で、山崎さんが「じーーーー」っと私を見ていた。
「え?なに?」
「今、あたしたちもいるのに『佐伯先輩とご飯!』って思ってた」
「え?そんな、こと」
「顔に出てた」
エレベーターが着き、私を置いて行ってしまった彼女を追って、会議室に入る。
そのテーブルの上には、空のお弁当箱が四つ並んでいた。
「みんなで食べる気があるなら、あたしたち四人分のお弁当をお願い」
「先輩にも食べさせるんですから、腕の見せどころですよ」
???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
山崎さんが、猫耳っぽいカチューシャを取り出している隙に、私はクルリ、と振り返って、逃亡を図った。
が、素早く百目鬼君が、ドアの前に立ち塞がる。
それでも往生際悪く、一歩踏み出そうとしたが、山崎さんが背後から、ウェストに抱きついていて、動けない。
「ピンチはチャンスって、このこと?」
「そう」
見えないが、ドヤ顔を極めているのか、彼女の鼻息が荒い。
「まあまあ、お弁当といっても、買ってきた総菜を詰め直すだけですから」
それを、佐伯さんに、食べてもらう?
詰めただけとはいえ、私のお弁当を食べてもらう?
疲れた彼に、「お疲れ様」って食べてもらう?
私は、拳を突き出し、親指を立てる、と言った。
「ピンチはチャンス!」
「やる気が出たならいい」
あたしは、抱きついたまま、その匂いを嗅ぎながら香恋さんに対しての、「チョロッ」という言葉を飲み込んだ。
香恋さんが、あたしが選んだお惣菜を食べてくれるだけでもご褒美だけど、佐伯先輩に褒められたら少しは、あたしにも感謝してくれるのだろうか。
佐伯さんの宣言通り、残業になったので、山崎さんと晩ご飯の買い出しに、コンビニに来ていた。
佐伯さんは、他の部署との調整で、文字通り走り回っている。
百目鬼君も一緒にコンビニまで来たのに、準備がある、とお箸とかを買って、先に戻ってしまっていた。
それにしても、お昼にカロリーとか、PFCバランスとかの話をしたので、買い物カゴに、入れにくい。
四人で取り分けて食べよう、とのことで、お弁当を四人分ではなく、オニギリやお惣菜を買うのだけど、脳裏にいろいろ巡る上、佐伯さんとの食事なので、カッコつけたい。
でも、お腹減った、とカゴに入れかけては戻し、を繰り返している。
それを後目に、山崎さんは、無造作に思えるくらいテキパキ、と商品を選んでいく。
お漬物とか、インスタントのお味噌汁とか、手慣れた感じだ。
レジでは、私が電子マネーで支払い、領収書をもらった。
業務命令での残業中の食事なので、経費で落とせるそうだ。
経費精算の方法は明日、佐伯さんが教えてくれるのだ、待ち遠しい。
とりあえずは、目の前の残業だ。
佐伯さんと晩ご飯を食べて、がんばろう。
エレベーターの中で、山崎さんが「じーーーー」っと私を見ていた。
「え?なに?」
「今、あたしたちもいるのに『佐伯先輩とご飯!』って思ってた」
「え?そんな、こと」
「顔に出てた」
エレベーターが着き、私を置いて行ってしまった彼女を追って、会議室に入る。
そのテーブルの上には、空のお弁当箱が四つ並んでいた。
「みんなで食べる気があるなら、あたしたち四人分のお弁当をお願い」
「先輩にも食べさせるんですから、腕の見せどころですよ」
???
アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?
山崎さんが、猫耳っぽいカチューシャを取り出している隙に、私はクルリ、と振り返って、逃亡を図った。
が、素早く百目鬼君が、ドアの前に立ち塞がる。
それでも往生際悪く、一歩踏み出そうとしたが、山崎さんが背後から、ウェストに抱きついていて、動けない。
「ピンチはチャンスって、このこと?」
「そう」
見えないが、ドヤ顔を極めているのか、彼女の鼻息が荒い。
「まあまあ、お弁当といっても、買ってきた総菜を詰め直すだけですから」
それを、佐伯さんに、食べてもらう?
詰めただけとはいえ、私のお弁当を食べてもらう?
疲れた彼に、「お疲れ様」って食べてもらう?
私は、拳を突き出し、親指を立てる、と言った。
「ピンチはチャンス!」
「やる気が出たならいい」
あたしは、抱きついたまま、その匂いを嗅ぎながら香恋さんに対しての、「チョロッ」という言葉を飲み込んだ。
香恋さんが、あたしが選んだお惣菜を食べてくれるだけでもご褒美だけど、佐伯先輩に褒められたら少しは、あたしにも感謝してくれるのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる