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05&06:食事、どうする?

Aパート

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「これも、これも、と」
 佐伯さんの宣言通り、残業になったので、山崎さんと晩ご飯の買い出しに、コンビニに来ていた。
 佐伯さんは、他の部署との調整で、文字通り走り回っている。
 百目鬼君も一緒にコンビニまで来たのに、準備がある、とお箸とかを買って、先に戻ってしまっていた。
 それにしても、お昼にカロリーとか、PFCバランスとかの話をしたので、買い物カゴに、入れにくい。
 四人で取り分けて食べよう、とのことで、お弁当を四人分ではなく、オニギリやお惣菜を買うのだけど、脳裏にいろいろ巡る上、佐伯さんとの食事なので、カッコつけたい。
 でも、お腹減った、とカゴに入れかけては戻し、を繰り返している。
 それを後目に、山崎さんは、無造作に思えるくらいテキパキ、と商品を選んでいく。
 お漬物とか、インスタントのお味噌汁とか、手慣れた感じだ。
 レジでは、私が電子マネーで支払い、領収書をもらった。
 業務命令での残業中の食事なので、経費で落とせるそうだ。
 経費精算の方法は明日、佐伯さんが教えてくれるのだ、待ち遠しい。
 とりあえずは、目の前の残業だ。
 佐伯さんと晩ご飯を食べて、がんばろう。
 エレベーターの中で、山崎さんが「じーーーー」っと私を見ていた。
「え?なに?」
「今、あたしたちもいるのに『佐伯先輩とご飯!』って思ってた」
「え?そんな、こと」
「顔に出てた」
 エレベーターが着き、私を置いて行ってしまった彼女を追って、会議室に入る。
 そのテーブルの上には、空のお弁当箱が四つ並んでいた。
「みんなで食べる気があるなら、あたしたち四人分のお弁当をお願い」
「先輩にも食べさせるんですから、腕の見せどころですよ」
 ???
 アナタハ、ナニヲイッテイルノデショウカ?

 山崎さんが、猫耳っぽいカチューシャを取り出している隙に、私はクルリ、と振り返って、逃亡を図った。
 が、素早く百目鬼君が、ドアの前に立ち塞がる。
 それでも往生際悪く、一歩踏み出そうとしたが、山崎さんが背後から、ウェストに抱きついていて、動けない。
「ピンチはチャンスって、このこと?」
「そう」
 見えないが、ドヤ顔を極めているのか、彼女の鼻息が荒い。
「まあまあ、お弁当といっても、買ってきた総菜を詰め直すだけですから」
 それを、佐伯さんに、食べてもらう?
 詰めただけとはいえ、私のお弁当を食べてもらう?
 疲れた彼に、「お疲れ様」って食べてもらう?
 私は、拳を突き出し、親指を立てる、と言った。
「ピンチはチャンス!」

「やる気が出たならいい」
 あたしは、抱きついたまま、その匂いを嗅ぎながら香恋さんに対しての、「チョロッ」という言葉を飲み込んだ。
 香恋さんが、あたしが選んだお惣菜を食べてくれるだけでもご褒美だけど、佐伯先輩に褒められたら少しは、あたしにも感謝してくれるのだろうか。
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