【1クール終】恋愛で痩せますか?いいえ痩せるならXXX運動です

まみ夜

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05&06:食事、どうする?

Bパート

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 百目鬼君がコンビニで買ってきてくれたお弁当箱に、昆布のオニギリを半分に切って、海苔を巻かないまま、四角になるように組み合わせて詰める。
 鰹節のパックに、お醤油を垂らして、オニギリの上に具のコンブといっしょに散らし、巻かなかった海苔を乗せた。
「ノンオイルのドレッシングが売り切れてたときは、この組み合わせが最強」
 鰹節とお醤油は、山崎さんの私物だった。
 その端に、銀杏切りの大根と人参のお漬物を置く、と途端に色合いが良くなった。
 メインのオカズは、サラダチキンか何かだ、と思っていたが唐揚げだった。
「揚げ物って倦厭されがちですけど、ガッツリ感が少量で満足できて、結果カロリー減らせるんですよ」
 唐揚げの三分の一とレンコンなどの野菜の煮物を、中華調理用のエビチリソースの袋に入れ、和える。
「浮いている油を始めに零して捨てるのがポイントです。辛味は油に大部分が溶けてますから、ご飯への欲求も減らせます。煮物は甘い味付けなので、チリソースに合います」
 手を加えない唐揚げと、チリソース和えを詰める。
「もうちょっと入る」
 山崎さんが言い、百目鬼君が、脇から唐揚げを追加しだした。
「カロリー的に無理でしょ?」
 私は、会議室の中で、テーブルに両手をついて、外に聞こえないように、声を殺していた。
「そんなに大きなのを入れちゃうの?」
「このくらいで驚かないでください。まだまだですよ」
「だめ、そんなにいっぱい入れたら、溢れちゃう!」
 私は、両手で口を押えて、悲鳴を上げた。
「この唐揚げは、胸肉なので、鶏モモ肉よりカロリー低いから、大丈夫です」
 バランを挟んで、卵焼き。
 佐伯さんは、出汁巻き卵より卵焼き、しかも甘いのが好きらしい、メモメモ。
 歓迎会でつれていってもらったお店でも、日替わり料理でお菓子のように甘い卵焼きが出るそうで、それに出会えたときの佐伯さんのハシャぎようは凄いらしい。
 なんか、可愛い。
 そういえば、バランって、コンビニにも売ってるんだね。
「お弁当グッズは、充実してますよ。朝、慌てて買いに来る人もいるんじゃないですか」
 コンビニはビルの一階にあって、普通に二十四時間営業していて、一般の人も買い物ができる。
 ほうれん草の胡麻和えに、ブロッコリー、プチトマト。
 プチトマトは余ったけど、残業中のオヤツに食べるそうだ。
 佐伯さんは、普通のトマトは少し苦手らしいけど、プチトマトは好きみたい、メモメモ。
 好き嫌いの法則が謎だけど、なんか可愛い。
「大雑把な計算ですけど、六百キロカロリー以下は確かですから、ショージさんの一食分には、十分ですね。アルファ=リノレン酸が足りないですが」
「こんなこともあろうかと」
 じゃじゃん、という口効果音と共に、山崎さんが蜂蜜が入っているような形の、小さい容器を出した。
「困ったときのチアシード」
 ちあしーど?
 百目鬼君が、お昼のお弁当のご飯に混ぜてたやつだ。
「大匙一杯でアルファ=リノレン酸一日の必要量が摂れるし、食感もいい」
 海苔を捲ってパラパラ、と撒いてくれた。
 完成かな?
「まあまあな出来」
「海苔の黒とご飯の白のコントラスト。黄色、緑、赤もあって、彩もいいですよ」
 山崎さんが選んだお惣菜を、百目鬼君のアドバイスでアレンジして、詰めただけなのに、嬉しい。
 でも、佐伯さんは、どう思うだろう?
 だって、コンビニのお惣菜を詰め直しただけなんだから。
 それでお弁当だなんて、図々しい女だ、と思われないだろうか。

「遅くなって、すまない」
「先輩、お疲れ様です。食事の用意、できてますよ」
「先に食べていてくれてよかったのに」
 佐伯さんが、ちょっと疲れた様子で、椅子に座った。
「あれ?弁当?誰かつくったの?」
 目聡くお弁当箱を目にとめて聞いてくるが、答えに私は躊躇してしまった。
 だって、私は、ほとんど何もしていないから。
「ショージさんです」
「香恋さん作」
 二人が、「ビシっ」と指さしてきたので、佐伯さんが私を見て、更に狼狽えてしまう。
「東海林さんがつくったの?」
「でも、お惣菜を詰め直しただけで、その、」
「嬉しいなあ!」
 私の言い訳を遮って、彼は少し大きな声を出した。
「弁当箱に詰められてるだけで、なんだか食欲が沸いてくるよ。コンビニの、中身が見える弁当のフタほど、広告屋として、想像力を削ぐ残念なモノはないんだから。ああ、この弁当箱のドキドキ感。疲れが吹き飛ぶよ。ありがとう東海林さん」
「いえ、あの、それほどの」
 ちょっとまって、手放しの喜びようが、逆にプレッシャーだ。
 想像力が膨れ上がって、お弁当への期待値が、どんどん凄いことになってる予感がする。
 早く、お弁当箱を開けて、現実を見て欲しい。
「早く、開けて見てください。先輩」
 百目鬼君が、佐伯さんの後ろに立って、肩越しに促す。
 いや、やっぱり待って。
 まだ、心の準備が!
「うお、本当に詰め直しただけかい?すっごく美味しそうだ!」

「あ、味噌汁にお湯入れてきますね。サッキー、手伝って」
 僕は、肩越しに、その匂いを嗅ぎながら先輩に対しての、「チョロッ」という言葉を飲み込んだ。
 先輩が、僕がアレンジした惣菜を食べてくれるだけでもご褒美だけど、先輩の卵焼きにちょっとだけアイスコーヒー用のガムシロップをかけて甘くしたのを告白したら少しは、僕にも感謝してくれるのだろうか。
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