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第二部 第3章
389.新素材の名前
本日は、ディバイン公爵タウンハウスにて、おもちゃの宝箱帝都支店とベル商会幹部の会議が開かれている。
当然テオ様とわたくしも、この会議に出席しているのだけれど、そこに何故か、皇后様の姿があるのはどうしてなのかしら?
「邪魔はしないから、見学させてちょうだい!」なんて言われて、少し離れた所から目を輝かせている皇后様は、好奇心を抑えられない少女のようで、とても可愛らしい。
「───おもちゃの宝箱帝都支店で、赤ちゃん用品を売り出しましたが、思っていた以上に売上が良く、専門店にすべきではないかという案が上がっております」
赤ちゃん用品は、ベビーベッドや折りたたみ式ベビーカーなどの大物から、ベッドメリーやガラガラ、おしゃぶりや哺乳瓶、スタイなどの小さなものまで取り揃えている。なので場所を取ってしまう為、わたくしも別にした方が良いと思っていた所だった。
「場所は、おもちゃの宝箱の隣が良いのではないかと思っているのですが……」
「お待ちください! もし、隣にという事であれば、赤ちゃん専門店ではなく、カフェを別にしてはどうでしょうか。カフェの場所におもちゃ売り場を広げ、一階に赤ちゃんグッズの売り場を大きく取れば良いと思います」
なるほど。確かにカフェは大人気で、席が空くまで結構な時間お待たせしておりますものね。
「それなら、カフェの一階に持ち帰りできるカウンターを別に作るのも良いかもしれませんわね」
わたくしの提案に、それは良いと皆が賛同してくれましたのよ。
「どうせ隣にカフェを移すのであれば、思い切っておもちゃの宝箱と通路で繋げてみるのはどうでしょうか」
「いくら隣接しているとはいえ、建物の構造上それは危険ではありませんか?」
「新素材を使用すれば、安全性は上がるのでは?」
「確かに新素材であれば……」
皆の話が新素材の事に変わっていっているので、わたくしここで手を上げましたの。
「皆様、わたくし前々から気になっていたのだけれど」
わたくしがこう切り出した途端、誰もが口を噤み、緊張感が増す。
「新素材に名前をつけませんこと?」
「「「!?」」」
いえね、新素材の後にそれを原料にゴムやプラスチックが作られておりますのよ。それらも新素材でしょう。何だかややこしいですし、いつまでも新素材というのもおかしいと思いますのよ。
「奥様の仰る通り、新素材に正式名称は必要かと思われます」
誕生日席に座るテオ様の右側に、書類を片手に立っているウォルトが賛同し、皆もちょっとホッとした様子で頷いている。
気になった、と切り出したからか、何か注意されると思わせてしまったのかしら。申し訳ない事をしましたわ。
「ベル、新素材の名称に関しては、シモンズ伯爵と皇帝陛下も交え議論した方が良いだろう」
テオ様にもっともな事を言われ、ちょっと恥ずかしくなりましたわ。
今や新素材はグランニッシュ帝国の産業の中心にある。それを生産しているシモンズ伯爵家の当主と、皇帝陛下、皇后陛下、ディバイン公爵での話し合いが妥当だろう。
「そうですわよね。先走った発言でした。申し訳ありませんわ。旦那様」
「いや、名称に関しては私も考えていた所だ。また、シモンズ伯爵……義父上に連絡後、皇帝と皇后両陛下に面会の約束を取り付けよう」
「このように些細な事で、両陛下のお時間を頂戴してしまっても大丈夫でしょうか……」
皇后様をチラリと見れば、大丈夫よ! という表情で大きく頷き、ウィンクされてしまった。
「その他にも話し合いたい事はあるからな。大丈夫だ」
「そうですのね。少し安心いたしましたわ」
その後会議は、カフェを移転する方向でまとまり、赤ちゃん用品の拡充に伴った新商品開発をする事となったのだ。
そういえば、お父様はお忙しいようですし、帝都に来る時間があるのかしら……
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