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第二部 第3章
404.三人兄弟
いつも通り、「ノア、わたしがきたぞ!」とやって来たイーニアス殿下は、わたくしが迷宮探検の前に差し上げたリュックを背負い、護衛や侍女も付けずに、転移で現れた。
最近はテオ様の魔法の授業に、転移でお越しになるから、公爵家の使用人たちも特に驚く事はなくなったけれど、最初はひっくり返るメイドもいましたのよね。
そんな殿下がリュックから、料理を取り出す所を見ると、前世の日本での事を思い出して、懐かしい思いに駆られてしまう。
ご近所でお裾分けしたり、お泊まりの時にお世話になるからと、お菓子や料理を差し入れしたりするあの庶民的感覚……ほっこりしますわ。
「カミラ、これがちちうえの、つくったりょうりだ。ばんさんに、だしてもらえるだろうか」
「かしこまりました! お預かりいたします」
カミラはすっかり、イーニアス殿下のやる事に慣れてしまって、いつも通り元気に対応している。
マディソンから、カミラは侍女長候補として教育中だと聞いた時は驚きましたけれど、納得ですわね。
「イーニアス殿下、ありがとう存じますわ。皇帝陛下にも、お礼をお伝え下さい」
「うむ。ちちうえに、つたえておこう」
イーニアス殿下は、以前からしっかりしているとは思っていたけれど、リューク殿下が生まれてから、より頼もしくなってきましたわね。
「ぁちゅ、ぺぇちゃ、こりぇ!」
「おりがみか! これはぺーちゃんが、おったのだろうか?」
「にゃ!」
ぺーちゃんもイーニアス殿下が大好きみたいで、自分が折った折り紙と、ノアが折ったあかいとりさんを見せている。
「ぉっち、にょあ! ぉっち、ぺぇちゃ!」
「あかいほうがノアで、このまんまるのほうが、ぺーちゃんか。とてもじょうずに、おっている」
「にゃ!」
ぺーちゃんはエッヘンというように胸を張り、後ろにコロンと転がった。
「あっ、ぺーちゃん、だいじょぶ?」
「ぁう……」
まんまるおめめのぺーちゃんを、ノアが抱き起こす。さすがお兄ちゃんだ。
頭を打たないよう、ガード用のリュックを背負わせているし、公爵家の床は絨毯でふかふかだから、怪我の心配はないけれど、ぺーちゃん付きのメイドたちは、ハラハラしながら見守っている。
「ぺーちゃん、きよ……きお、ちゅけるのよ」
「ぁーい」
「ぺーちゃん、たすけられなかった……すまぬ」
「ぁちゅ、ぺぇちゃ、にゃっ、ぅちょ、う!」
ぺーちゃん、今「大丈夫」って言いましたの?
「奥様、イーニアス殿下からのお料理を、シェフに預けてきますね」
「あ、ええ。カミラ、お願いね」
カミラがノアから離れると、ノア付きの恰幅の良いメイドが前に出る。
女性ながらにあの筋肉、随分鍛えておりますのね。頼もしいですわ。
子供たちはノアの作ったあかいとりさんや、ぺーちゃんの作ったお花(ボール)をみて楽しそうに笑い、折り紙に飽きたのか、今度はジグソーパズルで遊び始め、あっという間に晩餐の時間がやってきた。楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
「ぺぇちゃ、ぽんちゃ、くぅ!」
「わたちも、ぽんぽん、くぅちてりゅ」
「うむ。わたしも、くぅくぅだ」
あらあら、三人共、可愛らしいぽんちゃ、ですわね。
「皇帝陛下の手作りのお料理も楽しみですし、そろそろ食堂へ向かいましょうか」
三人は「はーい!」と散らばったおもちゃを片付けて、手を繋ぎ食堂へと歩き出す。まるで三兄弟のようだ、と頬が緩んだ。
陛下手作りの料理も、シェフの料理も美味しくいただき、大満足で食事を終えた後、お風呂の時間になったのだけれど、子供たちは遊びに夢中でなかなか入らない。メイドや侍女たちも困っているようで、カミラが代表してわたくしに相談にやって来た。
「奥様……、今日だけではないんです。最近ノア様もぺーちゃん様も、なかなかお風呂に入ってくださらなくて……」
「まぁ、そうでしたの?」
それは大問題ではありませんの。
子供がお風呂に入りたがらない事はよくあるが、ノアはそんな素振りを見せた事はなかったはずだ。
「一体、ノアにどんな心境の変化があったのかしら……」
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