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第二部 第3章
407.野菜嫌いのぺーちゃん
「おかぁさまっ、ぺーちゃん!」
パーティーの翌日、わたくしは朝食前に、目を爛々と輝かせてシンバルを叩くおサルのおもちゃのように、手をたたくぺーちゃんを膝の上に乗せ、ノアとイーニアス殿下の魔法の訓練を見学していた。
すると、ノアがこちらを見て駆け寄って来たのだ。それを見たイーニアス殿下も嬉しそうに笑って後に続く。
どうやら、魔法の訓練はすでに終わっていたようで、教えていたテオ様も片付けを従者に任せ、悠然とこちらに向かって来ている。
「ノア、イーニアス殿下、とっても頑張っておりましたわね。かっこよかったですわ」
「にょあ、あちゅ、ちゅっ、ぉーい!」
フフッ、ぺーちゃんは魔法の訓練に興味があるみたいですわ。
「わたち、がんばった、のよ!」
「うむ。ノアはよくがんばっている」
「うふふっ、アスでんかもよ!」
相変わらず仲良しですわね。あら、ほっぺが汚れていますわ。イーニアス殿下は鼻の頭の上を汚して……
「二人ともやんちゃですわね」
ハンカチを取り出し、二人の顔の汚れを拭いてあげると、くすぐったそうに身体をよじる。
「おかぁさま、くしゅぐったーい」
「イザベルふじん、くすぐったいぞ」
「フフッ、はい、綺麗になりましたわ」
「かぁちゃ、ぺぇちゃ、みょ!」
羨ましかったのか、ぺーちゃんが自分にもやってくれと言うので、ハンカチの綺麗な部分で顔をくすぐってあげる。
「ぅにゃ~っ、ふふっ、ぺぇちゃ、ぅっ、ちゃ、にゃー!」
くすぐったいと大喜びするぺーちゃんに、マディソンの顔が崩れている。
マディソンはぺーちゃんを孫みたいに可愛がっていますものね。ノアも同じように可愛くてたまらないようですし。
「ベル、見学に来たのか」
「ぅみゃ!?」
そこに立っているだけで存在感のあるテオ様は、太陽に照らされて神々しく輝いている。
妖精よりも人外の美しさだと思うのはわたくしだけかしら?
「テオ様、ぺーちゃんが見たいというものですから、連れて来ましたのよ」
「ぺーが?」
「みゃ……っ」
見つめられて固まってしまったぺーちゃんは、最近はテオ様に対して慣れてきたはずなのだけど、不意打ちに弱いのかもしれない。
「そういえば、ぺーは特異魔法が使えるのだろうか?」
「ぺーちゃんの血筋はディオネ辺境伯家ですけれど、枢機卿……ウィーヌス様が特異魔法の使い手でしたから、ぺーちゃんももしかすると、使える可能性はありますわね……」
「にゅっくぅ!」
「ぺーちゃん、ぎくぅって、なぁに?」
「にょあっ、ちぃー!」
ん? ノア、ぺーちゃんが何て?
「ディオネは魔力探知だったか……。ぺーも探知系の特異魔法の使い手になるやもしれんな」
「そうですわね。ですがぺーちゃんはまだ赤ちゃんですから、魔法を教えようとは思わないでくださいましね?」
「三歳のノアに、ベル式魔力コントロール法を教えていた君に言われたくはないが……」
「ぅ……っ」
それは、たまたまマンガの真似をしていたら、思わぬ事が起こってしまいましたのよ。
「かぁちゃ、ぺぇちゃ、ぽんちゃ、くぅ!」
「あら、そうですわね。ノア、イーニアス殿下、皆で朝食にいたしましょう」
「「はーい!」」
『わーい! ちょーしょくー!』
『アオ、あまーいスフレパンケーキ!!』
急に湧いて出た妖精たちに、心臓が飛び跳ねた。
「わたちも、しゅふれ、パンケーキ!」
「こーら、スフレパンケーキはおやつでしょう。朝食は、お野菜中心ですわよ」
『えー! やさいイヤー!』
『あまいのが、イー!!』
妖精たち、子供たちが真似をするからそんな事を言うのは止めてくださいまし!
「おかぁさま、わたち、おやさい、しゅきよ」
「うむ。わたしも、おやさいすきなのだ」
まぁっ、なんていい子たちですの!
「……ぺぇちゃ、ぃ、あい!」
ぺーちゃん、今のはノアでなくてもわかりましたわよ。
ウチで一番好き嫌いをするのは、ぺーちゃんですのよね……。困ったわ。どうしたらお野菜を食べてくれるのかしら。
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