継母の心得

トール

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第二部 第3章

409.おもちゃの宝箱、従業員研修 〜 ベル商会にて/ベル商会従業員視点 〜



ベル商会従業員視点


グランニッシュ帝国の子供たちに、一度は行ってみたい所はどこか、と聞けば10人中10人が『おもちゃの宝箱』と声を揃えるでしょう。

そんな『おもちゃの宝箱』とは、世界初の子供遊具専門店で、あのディバイン公爵夫人が創設したお店です。
グランニッシュ帝国で強大な権力を持つディバイン公爵家の当主に、熱烈なアプローチをされ、年の差を乗り越えてディバイン公爵夫人となった元シモンズ伯爵家のご令嬢、イザベル様。あの方のシンデレラストーリーを知らない者はいないのではないでしょうか。

貧乏なシモンズ伯爵家の我が儘令嬢。

何故そのような噂が出たのか、今となっては貴族の妬みや僻みだったのだと皆が理解していますが、そんな馬鹿な噂がまことしやかに囁かれるのが貴族の世界なのだそうです。

イザベル様のサクセスストーリーは誰もが知っているので詳細は省きますが、おおまかに言うと、現在はベル商会という商会を起ち上げ、おもちゃの宝箱以外にも手広く事業展開されています。
飛ぶ鳥を落とす勢いの新興商会ですが、あと数年もすれば、間違いなく世界一になるでしょう。

皆様は、おもちゃの宝箱に就職を希望され、高い倍率の中を勝ち抜いた優秀な人材です。
そんな方々が何故、このベル商会に集められたのか、それは、『研修』を受けていただく事に他なりません。

おもちゃの宝箱の店舗には、貴族の方から庶民のお客様まで様々な方が幅広くいらっしゃいます。
特に韜晦トウカイ皇帝の大粛清後は、嫌な……いえ、選民主義の貴族が減った事もあるのでしょう。庶民のお客様が増え、貴族だ庶民だという垣根を越え、気になさる事なくお買い物を楽しんでおられる方が数多く見受けられます。

とはいえ、中には気になさる方もいらっしゃるので、そういった方は時間帯を選んでお越しになります。庶民のお客様は午前中か、仕事終わりの17時以降、貴族のお客様は13時から16時頃に来店される事が多いようです。

おもちゃ屋ですので、お子様連れのお客様が割合としては多いのですが、お友達のお子様やお孫さん、兄弟の子供などにプレゼントされる方や、カフェ目当ての若者も多く来店されます。
年齢も性別も身分も、そして人種もバラバラです。その為、接客は大変な事もありますが、やり甲斐もあります。

就業時間は基本9時~18時、休憩時間は1時間、そして、週休二日制で、6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した者には有給休暇が年間10日付きます。
希望者は寮もありますので安心してください。

残業をした場合ももちろん残業代が支払われます。が、無理をして身体を壊す事のないよう、残業時間は月に45時間を上限とします。

え? このように高待遇だと逆に怖い? そうでしょうとも。しかし、この職場にいれば、これが普通です。慣れてくださいね。

では説明はここまでにして、研修に移りたいと思います。
貴族に対する知識とマナー、商品知識、カフェ料理、その他覚える事は沢山ありますよ。

そうそう、これが一番大切でした。
情報漏洩が出来ないように、『魔法契約』を交わしていただきます。

はい、皆様問題ないようですね。ではお一人ずつこちらへお願いいたします。


そういえば、前に一度、ご自身を『チン』と言っていた男性が面接に来られましたが、おそらくあれは貴族の方なのでしょう。料理もお上手でしたし、手先も器用でしたので、とても欲しい人材でしたが、雇うとリスクを負いそうな気がしたので、上司が断念した、と話していました。

帰り際の肩を落とした後ろ姿は、なんとも哀愁が漂っていましたが、上司の勘はとてもよく当たりますので、仕方ありませんよね。

あ、全員の魔法契約が終わりましたか。では、講義を始めましょう。皆様、静粛にお願いいたしますね。


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