継母の心得

トール

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第二部 第3章

415.スライムでオムツは作れるか!?



ノアとぺーちゃんと共にスライム見学に行った翌日、オリヴァーからの新素材の研究成果報告書や、スライムに関する研究論文をよみながら、オムツや他の赤ちゃんグッズの構想を練っているところなのだが、最初は赤ちゃんグッズだけを考えていたのに、妊婦のグッズが少ないと思いつき、そちらも合わせて考え始めたところだった。

「この際だから、妊婦用のグッズと、赤ちゃん用のグッズの両方を商品化すべきよね……」

まず妊婦用グッズ。すぐに商品化可能なのは、マタニティドレスだ。

わたくしはネグリジェが一番楽に着れて好きなのだけど、それでは邸を歩き回れない。だから、自分用に胸下の切り返しがお腹の形に沿った山型になっているタイプをいくつかと、なんの切り返しもないタイプを、生地は軽く着やすいもので、とデザイン案を描いて注文したのが数ヶ月前。

これが使用人たちにとても評判が良くて、商品化してほしいと言われましたの。

後は、出産後の授乳しやすい前開きドレスや授乳ケープ、授乳用下着も考えている。
普通乳母に任せたりするようだけど、わたくしは自分で授乳したいと考えているから、必要になりそうなのだ。

そして赤ちゃん用グッズ。
こちらは、今考えているのが、
・紙オムツ
・哺乳瓶
・ベビーバス
・馬車用チャイルドシート
・スキンケア用品

うち、スキンケアとベビーバスはすでに完成しておりますし、馬車用チャイルドシートは設計図を作ってもらっているところ。哺乳瓶はサンプルは出来ているのだけど、粉ミルクがまだですのよね……。そして紙オムツは素材すら見つかっていない、と……。問題は山積みですわ。

頭を悩ます事もあるけれど、こういったものを商品化する事で、より子育てもしやすくなると思いますの。

わたくし、10年後にはこのディバイン公爵領を子育てしやすい領地No.1にしたいのですもの!


「───ベル……、ベル」

テオ様の美声が聞こえ、ハッとして論文から顔を上げると、すぐそばにわたくしの夫の姿があって驚いた。

「テオ様っ、いつの間にいらっしゃったの?」

リビングのソファで本や書類を広げ、机の上を散らかしていたので、慌てて片付ける。

「ベル、そのままで大丈夫だ。それより、随分集中していたようだが、何か調べ物か?」

隣に座って、わたくしの読んでいた本を覗いてくるテオ様に、「はい。スライムの事で少し……」と研究論文を見せる。

「スライム? 何故そんなものを……」
「スライムって脱皮しますでしょう。一見脱皮というか分身したかのように見えますが……、そのゼリー状の皮? を何かに使えないか、と思いましたの」
「脱皮後の皮は、暫くすると水に還るはずだ。再利用は難しいのではないか?」
「それが、この論文に、塩を混ぜるとピンポン玉……いえ、えっと……あ、先日テオ様にプレゼントしていただいた宝石! あれくらいの大きさになり、ゼリー状のまま保てるのだと書いてありましたの。水分が少なくなるからか、形も好きに出来るのですって」

粘土とスライムの中間みたいな感じかしら?

「……いや、その状態を保てるとして、スライムの皮を一体何に利用する気だ」

若干引いているテオ様に微笑み、胸を張って説明する。

あ、ちょっとテオ様、説明している時にわたくしのお腹を撫でないでくださいまし! 少しくすぐったいですわ。

「ゴホンッ、塩を混ぜたゼリー状のものに水分を与えると、みるみる吸収したそうですの! 元の大きさになるまで水を吸収すると、塩分が薄まるからなのか、よくは分かりませんが、水に還るのですって」
「それは……掃除にでも利用する気か?」

片方の手でわたくしの腰を抱き、もう片方はお腹を撫で続けているのだけど、話は続けるらしい。まだぺたんこですのに、最近はよくお腹を撫でてくるのだ。

「掃除道具もいいかもしれませんが、これを赤ちゃんのオムツに出来ないかしら、と考えておりますのよ」
「なるほど……水分を吸収するならそれも可能か? しかし、スライムの皮を直接肌にあてるのは気持ちが悪い気がするな……」

それは、さすがに気持ち悪いかもしれませんわ。何しろスライムは排泄物や汚れ、ゴミを食べますから、イメージが悪いのよね。

「ゼリー状のスライムを吸水性の高い紙で挟んではどうかしら、と考えておりますの」
「紙だと?」

さすがに紙は高級だからか、テオ様は現実的ではないと首を横に振った。

「羊皮紙に比べ、安くなったとはいえ、まだ高級品だ。輸入品で量も限られている。それを赤ん坊の下着に使うのは非現実的すぎるだろう」
「……そうですわよね」
『ねぇねぇ、スライムの皮を、紙でサンドイッチにしないといけないのはどうしてなの?』
「ひゃあ!?」

テオ様の容赦ない一言に落込みそうになったその時、突然正妖精が現れ話に割り込んできたのだ。

「ちょっと!? 急に現れるから心臓に悪いですわよっ」
『ごめん、ごめん。それで、どうしてサンドイッチにするの?』

ぐいぐいくる正妖精の問いに答える。

「それは、直接肌に触れると気持ち悪そうなのと、漏れを防ぐ為で……」
『えー? スライムって、直接触る方がいいよ? 触ると肌を清潔に保ってくれる効果と、保湿効果もあるし、防臭効果もあるんだよ』
「え!? そんな事論文には一言も書いてありませんでしたわよ!?」
『そうなの? でも、ゴミや汚れを食べてるのは知ってるでしょ? ほぼ水分で出来てる事も』

た、確かに。わたくし、前世の紙オムツのイメージで、吸水紙は必要だと思っておりましたが、それなら……

「スライムの皮を糸状にして織り、スライム布にしてしまえば……っ」

超高性能な紙オムツ、いえ、スライムオムツに!! それに、生理用品も出来るのではなくて!?

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