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第二部 第3章
416.家族で散歩
正妖精の思わぬ助言で、スライムに活路を見出したわたくしは、張り切って企画書を書きますわよ! と、ペンと紙を手に取ったのだけど、
「ベル、散歩の時間だ。今日はここまでにしろ」
テオ様に止められてしまいましたの。
「そうですわね。ノアとぺーちゃんが待ってますもの!」
「ああ。ノアもぺーも散歩の時間を楽しみにしているからな」
「テオ様、お散歩の時間になると、いつもわたくしを迎えに来て下さってありがとう存じますわ」
「私が、ベルと子供たちと、家族の時間を過ごしたいんだ。礼を言う必要はない」
「テオ様……っ」
子供たちと家族の時間を過ごしたいだなんて、成長しましたのね!
本来は5歳から始まる公爵家の後継者教育を、少しだけ早く始めたノアは、最近とても多忙で、朝、昼、晩の食事前の散歩で家族のコミュニケーションを取っている。だから遅れるわけにはいかないのだ。
「おかぁさま!」
「かぁちゃ!」
リビングを出たところでノアとぺーちゃんがカミラ、マディソンと共にやって来る。
少し前までは駆け寄って来ていたけど、今は歩いてやって来るのは、マナー講師の教育の賜物かもしれない。ぺーちゃんに歩幅を合わせているのもあるだろうけれど。
屈んで、やって来た子供たちと目を合わせ、頭を撫でる。
「ノア、午前中のお勉強は終わりましたのね」
「たくさん、おべんきょおち……し、たのよ」
「まぁ、お庭をお散歩しながら、お母様に何をお勉強したのか教えてくれるかしら?」
「はい! ……おかぁさま、あかちゃん、おげんき?」
「ぁーちゃ、ぅっ、ち?」
二人共お腹を触りたいのだろう。わたくしを見上げ、もじもじと聞いてくるノアと、抱っこしてというように両手を出してくるぺーちゃんに微笑み、「とってもお元気よ」と答えれば、嬉しそうに頷くのだ。ぺーちゃんを抱き上げようとすれば、さっとテオ様が抱っこするので、わたくしはノアと手を繋ぐ。
「おげんきね。はやく、うまれてね」
わたくしのお腹に話しかけているノアは、なんて優しいのかしら。優しい所はテオ様そっくりですわね。
「ノア、ありがとう」
「わたし、あかちゃんと、おもちゃであそぶのよ」
「ノアのおもちゃを貸してあげるの?」
「そおよ!」
「ぺぇちゃ、みょ!」
フフッ、ぺーちゃんも、ノアの真似をして、おもちゃを貸してあげるのですって。
散歩中、子供たちとわたくしがお喋りをして、テオ様が静かにそれを聞いているのだけど、必ず一度はテオ様からノアに話しかけるようにしているのは気付いていた。
テオ様なりに色々考えているようで、また少し、お父さんになったのだわ。と嬉しくなる。
「───それでね、もじ、かけるのよ!」
「すごいわ。文字が書けるようになったのね! じゃあ、お父様にお手紙を書いてみたらどうかしら」
「ベル?」
何を言い出すんだという顔をするテオ様をスルーし、ノアに提案する。
「おとぅさまに?」
ノアはテオ様をじっと見ると、「おとぅさまに、おてがみ、かくの!」とわたくしの目を見て頷いたのだ。
その後、30分程庭園を散歩して、昼食後はテオ様からノアに魔法の訓練をすると聞いたので、その様子をぺーちゃんと見ながら、スライム生地を使用したオムツや女性用のサニタリー用品についての企画書をまとめた。
後は、哺乳瓶を作ったものの、その中身の粉ミルクが問題なのよね……。
粉ミルクって、主に牛の生乳をろ過して、脱脂、加熱殺菌をした後、油分と水分が混ざる為の乳化剤や安定剤を混ぜたり、糖質やその他の栄養素を加えたりの成分調整後、濃縮して噴霧乾燥されて出来るってネットで見た記憶があるわ。
「加熱殺菌までは何とかなるけど……乳化剤や安定剤なんて無いし……それの代わりになりそうなものは、卵とか……? でもアレルギー体質の子には……。あーもうっ、分からないものはいくら考えても分からないわ! とりあえず今は、前世にあったベビー用品を書き出すべきね」
・抱っこ紐
・歩行器
・おしりふき
・鼻吸い器
・爪切り……
「と、さっき考えていたものも合わせて、とりあえずこんなものかしら!」
結構色々出て来たけど、この中のどれだけが実現出来るのか。
「あなたが生まれてくるまでには、頑張らないといけませんわね」
お腹を撫でる。まだ全然膨らんではいないのだけれど、話しかけて撫でると良いのだと聞いたことがある。
こうして、結構な数の企画書をまとめ、そのほとんどを職人さんたちが泣きながら形にしてくれる事になるのだが、わたくしがそれを知るのは、サンプルが出来上がってからだった。
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