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第二部 第3章
419.色づく世界 〜 テオバルド視点 〜
テオバルド視点
「また、とんでもないものを開発したものだ……」
私の妻は、一人で戦争でもする気なのだろうか。新素材『ベリッシモ』やレール馬車もそうだが、それらは全て戦争の道具として利用すれば、軍事国家大国として、世界征服も現実味を帯びるだろう。
「ベルがそんな考えを持つとは思わないが」
「旦那様、奥様がどうかなさいましたか?」
私の独り言に、ウォルトが不思議そうに顔を傾ける。
「いや、ベルは……私の妻は、どこまでいくのかと思ってな」
「奥様は、経済で世界を支配なさる気ではありませんか」
このままいけば、そうなるかもしれん……
「否定はできんな」
「そうでしょうとも。レール馬車がベル商会主体であれば、その時点で世界の三割は支配出来たはずです」
「その代わりに、誰もがベルを狙うだろう」
今回のスライムに関しても、レール馬車よりマシとはいえ、ベル商会で扱うには危険すぎる。温度調節が可能な生地など、使い方次第でいくらでも戦争の道具になるものだ。
「一つの商会が背負うには限界もある」
「奥様は聡明な御方です。理解されているからこそ、レール馬車と同様に、旦那様と皇后陛下に任せると仰っておりました」
「スライムの乱獲を防ぐ為にも、製法を秘匿する為にもそれが良いだろう。ただでさえ、シモンズ伯爵家のベリッシモは自国、他国問わず狙われている。ディバイン公爵家はそちらで手一杯だ」
「ベリッシモの取り扱い、そして販路はディバイン公爵家が独占しておりますので、莫大な収益が見込まれておりますが、予想以上に他国との取引も拡大しており、今後右肩上がりで利益が得られるのは間違いありません。そうなるとディバイン公爵家の影響力は増すばかりです。シモンズに手出し出来る者も少ないのではないでしょうか」
本来ディバイン公爵家の影響力が強まる事は、皇族を頂点とする帝国で良い事とはいえない。しかし、シモンズ伯爵家や妻子を守る為には他者の追随を許さぬ程の権力は必要なのかもしれん。
「旦那様、現在の皇帝陛下は、大粛清以降庶民に絶大な人気を誇っております。そして、貴族の支持も集めている上、ディバイン公爵家当主がイーニアス殿下の後見人。今や皇族の権威は揺るぎないものになっております」
「お前は、ディバイン公爵家の力が増す事が、皇族の、ひいては帝国の利益に繋がると考えているのか」
「はい。奥様が嫁いで来られる前は絶望的だった未来が、私には今、輝いて見えます。旦那様、悪辣皇帝に抑圧されていたディバイン公爵家は、この国は、変わったのです」
ウォルトの言葉に、色のなかった日々を思い出した。まさか悪魔などという巫山戯た存在が、我々の歯車を狂わせていたとは……。ベルに出会わず、あのままだったらと思うと、ぞっとしない話だ。
「改めて、素晴らしい奥様をお迎えになられましたね」
「そうだな。私の人生で一番幸運だったのは、ベルに出会った事だ」
不思議なもので、ベルと出会って初めて、私の世界が色付いた。
恋だの愛だのと、くだらんものに労力を使う事は無駄だと思っていたが、なるほど。人を愛するとはつまり、頭で考えるのではなく、感情で身体が動くのだ。労力も何もない。愛する人の為にする事全てが己の幸福となる。
「旦那様は、奥様と出会い変わられました」
「自分でもそう思っている……」
ウォルトは私の言葉に小さく笑うと、「珈琲をお淹れいたします」と一礼して行ってしまった。
「アイツも、変わっただろうに……」
自覚しているのか、していないのか、雰囲気が明るくなった乳兄弟にくすぐったいような気持ちになりながら、窓を開け放つと、花の香りが風に乗り、私の鼻を掠めたのだ。
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いつも【継母の心得】をお読みいただきありがとうございます。
暫く、風邪を拗らせ更新をお休みしておりましたが、皆様の励ましや応援のコメントを見て元気をいただき、復活いたしました!
コメントの返信が出来ず、申し訳ありません。
皆様のコメント、全て目を通しております。
感涙するほどの温かいコメント、本当にありがとうございます!
本日より、また毎日更新を再開しますので、よろしくお願いいたします。
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