継母の心得

トール

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第二部 第3章

422.父と子の冒険



『公爵がノアと、水と風の神殿に行くのであれば、朕はイーニアスと焔の神殿に行くのだ!』

ノアとテオ様が神殿に行く事が決まり、お昼寝し始めたノアとぺーちゃんを眺めながら、皇后様と妖精通信をしていた時だ。近くで皇帝陛下も聞いていたようで、どうしてかそんな事を言い出してしまった。

『はぁ……。わかったわよ。行ってくればいいじゃない』

え!? 皇后様、いいんですの?

珍しく皇后様が許可を出している。皇帝陛下は小躍りしているのではないだろうか、と思うほどの喜びようだ。

「皇后様、よろしいのですか?」
『ネロは焔神の加護もあるし、神殿まではテオ様も一緒だから安心だもの。いざとなったらイーニアスは、ネロと一緒に転移できるようにもなっているしね』
「イーニアス殿下は、珍獣の力を使えるようになっておりますのね」

管理者になったばかりで、すぐに力を使えるようになるなんて、どれだけ努力しているのかしら。

『まだ転移だけだけど、あの子、ノアちゃんと一緒に強くなるって約束したから、修行をしているのですって、頑張っているのよ』

息子が愛しくてたまらないのだろう。どこか誇らしそうに、優しい声で返事をする皇后様に、わたくしも笑みが漏れた。

「だからでしたのね。ノアも、強くなるんだって、一人で神殿に行こうとしておりましたのよ」
『一人で!? ノアちゃんったら、行動力はイザベル様に似たのね』

わたくしに似たと言われるのは嬉しいのですが、素直に喜べないのはなぜかしら。

「ゴホンッ、では、明日は皇帝陛下とイーニアス殿下も、焔神殿まではご一緒だという事ですわね」
『ええ。ネロが迷惑かけるかもしれないけれど……』
『レーテ、朕はこう見えて何でも出来るのだぞ』

皇帝陛下は手先が器用ですものね。

『はいはい。アンタはとりあえず、テオ様に連絡しておきなさいよ』
『うむ、世話になるしな。わかったのだ』

テオ様は、皇帝陛下もご一緒だと聞いて驚くかもしれませんわね。

「イーニアス殿下が転移出来るようになったのであれば、焔神殿までは転移で行けそうですわね」
『ディバイン公爵夫人、それはダメなのだ』

わたくしの言葉に、皇帝陛下が反対する。

「もしかして、イーニアス殿下が転移を使うとお身体に負担がかかってしまいますの?」
『いや、転移がイーニアスの負担になるのではない』
「では、どうして転移はダメなのでしょう?」

何か、他に重大な問題でもあるのかもしれない。

『冒険をショートカットするなど、ロマンの欠片もないではないか!』

えー……

「こ、皇帝陛下のお言葉も、もっともですわ……」
『イザベル様、ネロの戯言に付き合わなくてもいいわよ』
『レーテッ、戯言ではないのだ。一番大切な事なのだぞ!』

確かに、冒険にロマンは一番大切な事かもしれませんわ。

皇后様は呆れているようで、皇帝陛下の話を適当に流している。挙げ句、『男って、ロマンにこだわりすぎだと思うわ』などと言って、自分の夫を泣かせていた。

クールですわ……。

「わたくしも、その楽しそうな冒険に、一緒に行きたいのですけれど……テオ様に、さすがにダメだと言われてしまいましたの」
『そりゃあそうでしょうよ。イザベル様、あなた今妊娠中なのよ。妊婦が地下迷宮を冒険して、焔神殿、水と風の神殿に行くなんて、聞いた事もないわよ。まぁ、先日焔神殿には行ったんだけど』
「そうですわよね……。焔の神殿に行った後、テオ様が頼んで、念の為フロちゃんに治癒魔法をかけてもらいましたものね」

焔の神殿、もっとゆっくり見学したかったですわ。

そんなこんなで、父と子の楽しい冒険の日がやって来たのだ。

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