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第二部 第3章
427.導きの烏 〜 テオバルド視点 〜
テオバルド視点
カァー、カァー……
焔神殿とは打って変わり、厚い雲に覆われた空は、今にも雨が降りそうで、烏の鳴き声がどこか不気味に響いている。私たちの周りは鬱蒼とした木々に囲まれ、道はない。
「ここは、森か……?」
「きと、くさ、たくさんね」
キョロキョロと、顔を忙しなく動かす息子に、「はぐれるなよ」と注意をして、さて、どこに向かえばいいものかと、ここに飛ばしたあの珍獣の雑さにイラッとする。
「ノア、何かに呼ばれた、もしくは見えた場合はすぐに教えてくれ。妖精もだ」
『わかったー!!』
「おとぅさま、くろい、とりさんいりゅ」
黒い鳥……烏の事か。先ほどから数羽、空を飛んでいるようだが。
もう一度、空を見上げると、一羽の烏がこちらに向かって飛んでくるではないか。
「何だ……?」
「くろいとりさん、きたの」
ここに陛下がいなくて良かった。いたら騒ぎ出したに違いない。
『風と水の神の加護持ち殿よ、よくぞお越しくださった』
静かに我々の前へと降り立ったカラスは、そう言ってお辞儀をするのだ。
「あかいとりさんみたい、おはなち、ちてるのよ」
『このカラス、みちびきの、カラス!!』
導きの烏だと?
「アオ、まさかこの烏が神殿への案内役か」
『そう!! このカラスいない、しんでん、たどりつけない!!』
つまり、加護持ちの前にしか姿を現さない案内役というわけだな。
『神殿まで、ご案内させていただく』
烏がそう言った刹那、森の地形が変化し、道が現れたのだ。
「わぁ! おとぅさま、みち、できた!」
『ノア、みて!! おハナも、さいてる!!』
「ほんとよ! きれーね」
よく見ると仄かに光っている花が、道を照らすように点々と咲いている。それをノアとキノコ妖精は嬉しそうに眺めて、ベルへのお土産に摘んで帰ろうなどと話している。
おそらく、この光る花は夜道を照らすライト代わりなのだろう。摘んで帰るのは止したほうがよさそうだ。
「ノア、早く神殿に行かねば、今日中にベルに会えないぞ」
「!? わたち、ちんでん、いく!」
私の言葉に、大変だ、と慌てて立ち上がる息子に微かに笑いが漏れた。
ノアは、本当に母が好きなのだな。
「では、はぐれないよう、私と手を繋いで行こう」
一本道で、案内役も付きはぐれる心配はないが、皇帝陛下とイーニアス殿下を思い出し、手を差し出す。
「はい!」
『アオも、て、つなぐー!!』
「アオも、おてて、ちゅなぎましょ」
『わーい!!』
ノアを真ん中に手を繋ぐと、私たちを静かに待っていた烏が、飛び立ったのだ。
『一本道ではあるが、一本道ではない。私を見失わぬよう、ご注意を』
焔の神殿の鳥とは正反対の落ち着きように、少し安心する。
「聞いたか、ノア。あの烏だけを見て歩くんだ」
「はい!」
興奮しているのか、頰が紅潮し、目も輝いている息子は、ハキハキ返事をすると、素直に空を飛ぶ案内役の烏を見る。
『いざ、カゼとミズの、しんでんへー!!』
「しゅっぱーちゅ!」
あまり遠いようならば、ノアを途中で抱き上げねばならないかもしれんな。
短い手足で歩く我が子と、真っ直ぐ続く道を見る。
「おとぅさま、ちんでん、どんなところかちらね」
「そうだな。焔神殿と似たようなものなのかもしれん」
焔神殿も迷宮から森の中に転移したからな。どこの森かは知らんが、一つの大きな森の東西南北に神殿があるのか、それとも東西南北の国の森ごとに神殿があるのか……
『ノア、ドキドキー!!』
「しょう! どきどき、しゅるの」
この楽しんでいるノアを、ベルに見せてやりたいものだ。
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