継母の心得

トール

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第二部 第3章

447.狙われたイザベル1



??視点


「───新素材に新型馬車、そして現在皇帝陛下主導の下、開発中のコウエンなる施設内で走らせる予定の、レール馬車。その他にも画期的な開発をし、販売しているディバイン公爵家とシモンズ伯爵家……、その全てに、一人の人物が関わっている」
「なんと!? して、その人物とは……?」
「イザベル・ドーラ・ディバイン。ディバイン公爵の妻であり、シモンズ伯爵家の長女。そして、あの『ベル商会』の会長だ」
「では、そのイザベル公爵夫人を……?」
「手に入れなければ、我らに未来はない───」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


最近、外出すると視線を感じるようになった。
ディバイン公爵家の紋章が入っていない馬車を使用しているというのにだ。

それもこれも、親方たちがおかしな像を立てたからに他ならない。

あれが庶民街の広場に建てられてから、街に行けば皆が見てくるようになったのですわ……!

なんですのあの女神像!?

女神様の像を建てたいという事だから許可したとウォルトから聞きましたけど、わたくしてっきり、教会にあるような、風の女神様の像だと思っていましたのよ。ディバイン公爵領だから、風と水の神の像を建てるのかしら。なんて思っていたら……、

なぜわたくしをモデルにしましたの!?

「ハァ……、何だか慣れませんわ」

外出の度に視線にさらされると、胃がチクチクしてきますの。悪女顔の女神像とか笑えませんもの。
妊娠中はあまり外出しないように、とテオ様に申し付けられているので、頻繁に外出するわけではないのだけれど、余計外出し難くなりましたわ……。

「おかぁさま、おなか、いたた? おかぁさまも、あかちゃんも、だいじょぶ?」

思い出して胃を押さえいたら、愛息子に心配されてしまった。

ノアは、黒蝶花の解毒の際に、わたくしがお腹を壊した事が記憶に刻まれているのか、お腹を押さえると、腹痛を起こしたと思うようになってしまった。しかも今は赤ちゃんがいるからか、余計過敏になっているのだろう。

お兄ちゃんですものね。ぺーちゃんはお庭で、マディソンと一緒にナラとデューク、そして子猫と遊んでいるようで、リビングの窓から楽しそうにしている姿が見える。

「ノア、大丈夫よ。お腹は痛くありませんわ」
「おなか、おてて、あててりゅのよ?」

心配そうに見上げてくる息子を抱き上げる。

あら、昨日よりも少し重くなったかしら? 背も高くなった? なんて、そんなわけはないのだけど、抱っこする度そう思ってしまうのよね。

「おかぁさま、おげんき?」
「ええ、元気いっぱいですわ!」
「わたち、おかぁさまとおにわ、いきたいの。ぺーちゃん、まってるのよ」
「じゃあ、お庭に行きましょう。デュークとナラと子猫も触らせてもらいましょうね」
「はい! でゅーくと、なりゃ、まりゅちゃん、さわりゅの!」

そんな他愛のない話をしながら、二人で庭に出る。

『ベル! ノアー! 聞いてよー!! ボク最近アカとアオに除け者にされてるんだ! 今日だって、二人だけで遊びに行って、ボクは連れて行ってもらえなかったし、酷いよねっ、酷すぎるよね!?』

外に出た途端、正妖精が泣きながら突撃してきたではないか。

そういえば、今日はアカとアオの姿を見てないと思っていたけれど、どこかに出掛けているのかしら?

「のけもの、めっ、ね!」
『そうなんだよノア! アカとアオをめっしてよー!!』
「はい! めっ、ちてあげりゅの!」

あらあら、ノアがアカとアオに「めっ」する気満々ね。

「それで、アカとアオはどこに行ったのかしら?」
『それも教えてくれないから困ってるのさ! ボク、妖精王なのに!』

ぷんぷんしながら、ぐるぐる飛び回る正妖精に呆れながら、ぺーちゃんの所へ向かう。正妖精も付いてくるので、今日はわたくしたちと一緒に過ごすらしい。

「ぺーちゃん、でゅーく、なりゃー、まりゅちゃーん!」
「ワンッ」
「ウォンッ」
「「にゃ!」」

ノアが名前を呼ぶとすぐにやってくるデュークとナラは、千切れそうなほど尻尾を振って、ノアに飛びつい……あら、急ブレーキをかけましたわ。もしかして、ノアを驚かさないように気を使ったのかしら。その後ろから、子猫を抱っこして、よちよち駆けてくるぺーちゃんの姿もある。

『あー、怖い顔の犬だ!』
「ワンッ」
「ウォンッ」

妖精が見えるのか、正妖精の言葉に反応して吠えると、正妖精はわたくしの後ろにサッと隠れる。

妖精って犬が苦手なの? でも、アカとアオは何も言ってなかったような……

『犬って、突然飛びついてくるから、ちょっと苦手なんだよね……』
「あら、デュークとナラはとても賢いのよ。ノアにも飛びつかなかったでしょう」
『そうだけど……顔が怖くない?』

それはわたくしも思っていたけれど。

「フフッ、くすぐったいのよ!」
「ワンッ」
「ウォンッ」

まぁ、ワンちゃんと戯れるわたくしの息子、可愛いわぁ。あらあら、ぺーちゃんも合流して、皆でじゃれ合っておりますわ。デュークが、ぺーちゃんの背中を支えて、子猫は大ジャンプ。ナラはそれを頭で器用にキャッチしましたわよ。なんて賢い動物たち!

『やっぱり怖い顔だね』
「ノアと戯れる二匹は可愛らしいですわ。あなたも触ってみらたどうかしら?」
『ぅう……、ボクは遠慮しておくよ』

正妖精、やっぱり犬が苦手なのかもしれませんわ。

「おかぁさま! でゅーくと、なりゃ、おさんぽちたいの!」
「ノアがお願いすれば、デュークとナラも付いてきますわ」
「はい! でゅーく、なりゃ、わたちと、おさんぽちよ?」
「ワンッ」
「ウォンッ」
「ぺぇちゃ、みょ!」
「にゃん!」

今日も我が家は、平和ですわ。

そう、思っていたのだけれど───
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