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第二部 第3章
454.狙われたイザベル8
「ウェルス様はテオ様と同じように魔力量が多く、何らかの理由で、魔石鉱山に魔力が溜まり、氷の魔法が込められた魔石が出来上がったのではないかと推測いたしますが、その辺りは歴史書にも詳しい事は書かれておりませんし、推測の域を出ませんわ」
「……まさか、先祖の保養地だったとは……」
予想外だとテオ様が息を吐く。
「あの領地がどういった経緯でウィニー男爵に渡ったのかはわからないけど、魔石鉱山が、しかも希少な氷の魔法が込められたものが見つかったとなると、例の貴族と商人……エンプティの動きが変わるかもしれないわ……」
例の貴族? 何の事かしら……。
「ウィニー男爵領は何の力も、現当主も未熟で後ろ盾もない。この事が表沙汰になれば恐らく、魔石を手に入れようと画策してくるはずだ。ベルを狙うよりも確実だと考えるだろう」
皇后様とテオ様がよくわからない話をしている。
『テオ! アカ、あのりょーちと、あのくにで、あばれる!』
『アオも!! めちゃくちゃ、する!!』
「止めろ。そんなことはしなくていい」
あの領地とあの国……? アカとアオも何か知っているの?
正妖精を見ると、わたくしと同じように首を傾げているので何も知らないようだ。もしかして、アカとアオが内緒で行動した事と関係があるのかもしれない。
皇帝陛下が悪魔に洗脳されて長いですもの。
その間にリッシュグルス国だけでなく、他国にもグランニッシュ帝国の情報を流す者、通じる者はいたでしょうし……、皇后様もテオ様も、問題は山積みなのだわ。
だとしても、わたくしは政治絡みの事は、聞かない方が無難ですわね。
「ベル、君は『氷の魔石』をどのように利用しようと考えている? 君の事だから、そのまま売り物にするという考えはないのだろう」
テオ様、わたくしの思考が読めるのかしら!?
「ええ。その通りですわ。氷の魔石ならば、いくらでも使い道はございますので、そのままでも構わないのですが、どうせなら特産となるようなものを作るのが良いのではないかと思いますの」
これぞウィニー男爵領の特産品だという代表的なものがあれば、雇用も生まれるのではないかと思う。
「それと、ウィニー男爵領は早々にお金を作り、食糧と燃料を備蓄しなくてはなりませんわ。ですから、国が当面の間魔石を買い取り、ウィニー男爵領地の備蓄とし、その間に特産品を作る、という流れが良いのではないかと思うのです。魔石に関しては、表だっては国が補助をしているように見えますから、当分は隠しておけますもの」
とはいえ、魔石の採掘を始めてしまえば、人の噂に戸は立てらないと言いますし、時間稼ぎ程度になるでしょうが。
「それしかないわよね……」
皇后様が深い溜め息を吐く。
何だか申し訳ないわ……。
「テオ様、お願いがあるのですが……」
「ベルの願いなら何でも叶えよう」
テオ様が爽やかに微笑んでくださるわ。眩しい!
皇后様は「わが人生に悔いなし!!」などとあのヒャッハーしている人が出てくる漫画の人物のような事を言っておりますわ。
「魔道具師を幾人か、ウィニー男爵領に派遣していただきたいのです」
「それは……」
我が領の魔道具師なら優秀な方も多いですし、最近魔道具師になりたい方が増えたと聞きますもの。
「ベル、いくら君の頼みであっても、それは出来ん」
「え……」
わたくしのお願いを叶えられないと辛そうなお顔をされるテオ様と、首を横に振るウォルト。
わたくし、言ってはいけないことを口にしてしまったのだわ。
「イザベル様、現在ディバイン公爵家には富が集中している状態なのよ。それをさらに、ディバイン公爵家が他領の魔石産業に手を貸してしまえば、貴族の反発どころの話じゃなくなるの。最悪、ディバイン公爵は現皇帝の転覆を企んでいると、討伐対象になる危険性も増すわ」
人の妬み嫉みは時に戦争を引き起こすのだ、と皇后様は仰った。
「そうですのね……」
「だからこそ、レール馬車は国の事業にしたんだ。ディバイン公爵家が皇族よりも力を持つわけにはいかないからな」
つい最近まで、皇帝派とディバイン公爵派が火花を散らしていたのだから、今は慎重になるべきだと二人は考えているようだ。
そうなると、魔道具師はどうしようかしら……貧乏だと言っていたウィニー男爵領では、魔道具師なんているのかしら??
「ベル、魔道具師に何をさせる気なんだ?」
テオ様はすまなそうに問いかけてくる。
もちろん、氷の魔石を使用した魔道具といえば───
「冷蔵庫やエアコンを作ってもらうのですわ!」
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