文字の大きさ
大
中
小
209 / 333
第二部 第3章
460.人の良い所を見る
『それ、管理者と同じ、魔力の補充の儀式じゃな』
渋い老人のような声が、頭の中に直接響く。これは珍獣や妖精の通信の特徴で、初めて経験した時は、これが念話か! とテンションが上がったものだ。
クレオ大司教から七神祭の事を伺った翌日、遊びに来たイーニアス殿下とそのお話になって、珍獣と通信する事になったのだ。
「フィニ、ならば、かんりしゃは、ひつようないのでは、ないだろうか?」
『いいや。七神祭の魔力補充は、管理者の魔力補充と比べて、魔力補充とは名ばかりの、カスみたいなもんだからの』
わたくしの前で、イーニアス殿下と、焔神殿の珍獣である赤いオウムが念話している。その通信はわたくしやノア、この部屋にいる者には聞こえており、カス……、とカミラが小さく呟いたのが耳に届いた。
「おかぁさま、かしゅ、なぁに?」
「そうねぇ、ノアがクッキーを食べた時に、口の端にくっつけている欠片の事かしらね。ホホホッ」
少々口が悪いですわね。ノアとイーニアス殿下に悪影響を及ぼさないといいのですけれど。
『まぁ、一箇所から全ての神殿に、魔力を送る装置であるから、届く魔力が微々たるものになるのは、仕方のない事よ。今はわしの神殿には、イーニアスという管理者がおるのでな。問題はない』
カッカッカと高笑いが聞こえてくるが、それ、管理者のいない神殿の珍獣に聞かれると、怒られるのではなくて?
「フィニ、かんりしゃでなくとも、まりょくのほじゅうは、できるのだろうか?」
『さすがイーニアス、鋭い所を突いてきおったな!』
「フィニは、いぜん、かんりしゃに、まりょくをほじゅう、してもらわねば、せかいが、たいへんなことになる、といっていた」
『その通り、神殿に直接魔力を補充する者は、管理者でなくてはならん。しかし、管理者一人に負担させるには、管理者がいなくなった時すぐ、世界滅亡の危機に陥ってしまうだろう』
「それは、とてもこまる」
『だからわしらは、加護を持つ者の魔力であれば、補充できるよう、ある装置を作ったのだ。が、』
が?
『これがクソ装置でな! 管理者以外の魔力の中には、所謂、不純物が混ざっとるんだが、それを濾過しすぎて、補充とは名ばかりのちょろっとしか魔力が取れん上、大掛かりな儀式が必要で五年に一回しか動かせぬポンコツ。もう全く使えんのよ』
「つかえぬのか? こわれている……のだろうか?」
「しょーち、こわれてりゅ?」
『そうじゃ! 壊れているのと同意だの!』
えー……
『その、そうちゅ、かんがえたのは、フィニでござんちゅ』
『そうですよ。あなたが、『わしに任せておけ!』と言って設計したのでしょう』
『うぬ!? そ、その声は……っ』
あら、この声、
「あっ、ももんちゅ、ちろあん!」
風と水のモモンガと白龍ですわね。よく考えると、声だけだけれど、この場の人外率が高い上、それに慣れている使用人たちの順応性がすごいですわ。
「ももんちゅ、ちろあん。フィニが、そうちをつくったのか?」
『そうですよ、イーニアス。フィニが装置を設計し、私たちが力を貸したのです。各神殿の管理者が途切れて久しかったものですから、危機感が私たちの判断力を鈍らせてしまいました』
焔神殿の珍獣の立ち位置が、今の一言でわかりましたわ。
「フィニは、せっけいが、できるのだな!」
イーニアス殿下、人の良いところを見つけるのが得意ですわ! なんて純真ですの!!
『さすがイーニアス! わしを褒めてくれるのは、イーニアスだけだ!』
子供一人にしか褒めてもらえないというのも、いかがなものかしら……
「つまり、焔神殿の珍獣……フィニ様が設計をした装置に盛大な儀式と共に魔力を込めるのが『七神祭』ですのね。ただ、それをした所で大して意味がないと」
『その通りだ。だから、土の加護持ちがおらずとも、問題はない。大体、毎回光と闇の加護持ちはおらぬのだし、土の加護持ちがおらなんでも、大きな問題になっておらんのは、何となく教会の者もわかっておるからだろう』
まぁ、そうでしたのね。一応、クレオ大司教にもそのようにお伝えしてあげませんとね。
「ぃまぁ、まじぇ、にゃんにょ……めぇ、ぎちぃ……っちって!?」
「ぺーちゃん、いままで、にゃんのために、ぎちき、ちてたんだ、っていってりゅのよ」
「ぺーちゃん、ぎしきとは、ひとびとの、こころの、へいおん? のために、するものだ、と、クリシュナせんせいが、いっていた。だから、いみはあるのだぞ」
「にゃ!?」
『さすがイーニアス! どうだ、ももんちゅ、ちろあん。わしの管理者は素晴らしかろう! カッカッカ』
『ノアも、まけてないで、ござんちゅ』
『そうですよ。イーニアスも素晴らしいですが、ノアも素晴らしい管理者です』
珍獣たちが、管理者自慢をするのも無理ありませんわ。わたくし、子供たちが天才すぎて、将来に楽しみしかありませんもの。
感想 12,013
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
王妃教育を辞退したら「困る」と国王陛下が直接迎えに来ました ~婚約破棄された私に、王太子ではなく国王陛下が求婚してきます〜
【全一話完結】
王太子の心変わりによって婚約を破棄された侯爵令嬢リリアーナ。
十年以上受け続けた王妃教育も辞退し、ようやく自由になれると思っていた。
ところが数日後、侯爵家を訪れたのは国王陛下本人。
「王妃教育を辞退されると困る。私の妃になってほしい」
努力を踏みにじった王太子はすべてを失い、選ばれたのは誠実に生きてきた彼女だった。
これは、年上国王に溺愛されながら、世界一幸せな王妃になるまでの逆転ラブストーリー。
王太子殿下、最初の一曲は私ではないのですね 〜我慢をやめた公爵令嬢は、婚約指輪をお返しいたします〜
王太子カーティスの婚約者フローラは、彼に何度も「君なら分かってくれる」と我慢を強いられてきた。王宮の茶会や演奏会、誕生日の晩餐までも、殿下は王弟の落胤であるサビーナを優先し、フローラの傷を見ようとしない。ついに生誕舞踏会の最初の一曲まで奪われた彼女は、周囲の視線にさらされながらも笑顔の裏で限界を迎え、婚約解消を決意する。
翌日、王妃の前でこれまでの扱いを訴えると、サビーナもまた殿下の都合のよい言葉に利用されていたと判明。カーティスは自分の甘えと無責任さを認めきれず、国王は婚約解消と王太子活動の停止を命じる。
フローラは誰かの都合に合わせ続ける人生をやめ、自分の心を優先する穏やかな日々を取り戻す。そして、彼女を一人の人として尊重するルシアンの手を取り、初めて自ら望んだ新たな未来へ歩み出していく。
2番目の番とどうぞお幸せに 聖女は竜人に溺愛される
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
妹ばかり愛した家族へ。私が王太子妃になった日、皆さんは謝りました。けれど、もう遅いのです
【全一話完結】
幼い頃から妹の引き立て役として生き、婚約者まで奪われて家を追放された侯爵令嬢エレナ。
傷ついた彼女が助けた青年は、身分を隠した王太子だった。
一年後、王太子妃となったエレナの前に現れたのは、今さら「家族だから」と擦り寄ってくる両親と妹。
けれど彼女は、もう二度と振り返らない。
王子を身籠りました
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。