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第二部 第3章
460.人の良い所を見る
『それ、管理者と同じ、魔力の補充の儀式じゃな』
渋い老人のような声が、頭の中に直接響く。これは珍獣や妖精の通信の特徴で、初めて経験した時は、これが念話か! とテンションが上がったものだ。
クレオ大司教から七神祭の事を伺った翌日、遊びに来たイーニアス殿下とそのお話になって、珍獣と通信する事になったのだ。
「フィニ、ならば、かんりしゃは、ひつようないのでは、ないだろうか?」
『いいや。七神祭の魔力補充は、管理者の魔力補充と比べて、魔力補充とは名ばかりの、カスみたいなもんだからの』
わたくしの前で、イーニアス殿下と、焔神殿の珍獣である赤いオウムが念話している。その通信はわたくしやノア、この部屋にいる者には聞こえており、カス……、とカミラが小さく呟いたのが耳に届いた。
「おかぁさま、かしゅ、なぁに?」
「そうねぇ、ノアがクッキーを食べた時に、口の端にくっつけている欠片の事かしらね。ホホホッ」
少々口が悪いですわね。ノアとイーニアス殿下に悪影響を及ぼさないといいのですけれど。
『まぁ、一箇所から全ての神殿に、魔力を送る装置であるから、届く魔力が微々たるものになるのは、仕方のない事よ。今はわしの神殿には、イーニアスという管理者がおるのでな。問題はない』
カッカッカと高笑いが聞こえてくるが、それ、管理者のいない神殿の珍獣に聞かれると、怒られるのではなくて?
「フィニ、かんりしゃでなくとも、まりょくのほじゅうは、できるのだろうか?」
『さすがイーニアス、鋭い所を突いてきおったな!』
「フィニは、いぜん、かんりしゃに、まりょくをほじゅう、してもらわねば、せかいが、たいへんなことになる、といっていた」
『その通り、神殿に直接魔力を補充する者は、管理者でなくてはならん。しかし、管理者一人に負担させるには、管理者がいなくなった時すぐ、世界滅亡の危機に陥ってしまうだろう』
「それは、とてもこまる」
『だからわしらは、加護を持つ者の魔力であれば、補充できるよう、ある装置を作ったのだ。が、』
が?
『これがクソ装置でな! 管理者以外の魔力の中には、所謂、不純物が混ざっとるんだが、それを濾過しすぎて、補充とは名ばかりのちょろっとしか魔力が取れん上、大掛かりな儀式が必要で五年に一回しか動かせぬポンコツ。もう全く使えんのよ』
「つかえぬのか? こわれている……のだろうか?」
「しょーち、こわれてりゅ?」
『そうじゃ! 壊れているのと同意だの!』
えー……
『その、そうちゅ、かんがえたのは、フィニでござんちゅ』
『そうですよ。あなたが、『わしに任せておけ!』と言って設計したのでしょう』
『うぬ!? そ、その声は……っ』
あら、この声、
「あっ、ももんちゅ、ちろあん!」
風と水のモモンガと白龍ですわね。よく考えると、声だけだけれど、この場の人外率が高い上、それに慣れている使用人たちの順応性がすごいですわ。
「ももんちゅ、ちろあん。フィニが、そうちをつくったのか?」
『そうですよ、イーニアス。フィニが装置を設計し、私たちが力を貸したのです。各神殿の管理者が途切れて久しかったものですから、危機感が私たちの判断力を鈍らせてしまいました』
焔神殿の珍獣の立ち位置が、今の一言でわかりましたわ。
「フィニは、せっけいが、できるのだな!」
イーニアス殿下、人の良いところを見つけるのが得意ですわ! なんて純真ですの!!
『さすがイーニアス! わしを褒めてくれるのは、イーニアスだけだ!』
子供一人にしか褒めてもらえないというのも、いかがなものかしら……
「つまり、焔神殿の珍獣……フィニ様が設計をした装置に盛大な儀式と共に魔力を込めるのが『七神祭』ですのね。ただ、それをした所で大して意味がないと」
『その通りだ。だから、土の加護持ちがおらずとも、問題はない。大体、毎回光と闇の加護持ちはおらぬのだし、土の加護持ちがおらなんでも、大きな問題になっておらんのは、何となく教会の者もわかっておるからだろう』
まぁ、そうでしたのね。一応、クレオ大司教にもそのようにお伝えしてあげませんとね。
「ぃまぁ、まじぇ、にゃんにょ……めぇ、ぎちぃ……っちって!?」
「ぺーちゃん、いままで、にゃんのために、ぎちき、ちてたんだ、っていってりゅのよ」
「ぺーちゃん、ぎしきとは、ひとびとの、こころの、へいおん? のために、するものだ、と、クリシュナせんせいが、いっていた。だから、いみはあるのだぞ」
「にゃ!?」
『さすがイーニアス! どうだ、ももんちゅ、ちろあん。わしの管理者は素晴らしかろう! カッカッカ』
『ノアも、まけてないで、ござんちゅ』
『そうですよ。イーニアスも素晴らしいですが、ノアも素晴らしい管理者です』
珍獣たちが、管理者自慢をするのも無理ありませんわ。わたくし、子供たちが天才すぎて、将来に楽しみしかありませんもの。
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