継母の心得

トール

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第二部 第3章

466.夜祭



フェリクス視点


「ぃにゃ、にゃー、ばぁ」
「おーおー、めんこいこじゃのぅ!」
「可愛いこですね」
「この愛らしい子が、クレオ枢機卿のお孫さんなのですね」
「初めまして、可愛いお坊ちゃん」
「私の孫も男の子でして、年は12になるのですが、やんちゃで……」
「うちの孫は女の子で……」
「うちは……」

先ほどから24人の爺さん婆さんに囲まれ、代わる代わる抱っこされて、正直もう帰りたい。

クレオが、司教たちに挨拶がてら、顔を見せてやれというので仕方なく来たが、後数年後にはここにいるほぼ半分が引退し、新たな顔ぶれになるので、この顔見せに意味があるのかはわからない。
それに、顔合わせというか……クレオと司教たちの孫自慢大会のようになっているのだ。

「フェリクスや、疲れたのなら、夜祭は止めにしてディバイン公爵家に戻ろうかの?」
「にゃ!? にゃーちゃ、ぃっきゅ!」
「夜祭に行くと言っても、疲れた顔をしておりますぞ?」

ダメだ! 夜祭を唯一の楽しみに、愛想をふりまいているというのに、中止にしたら、いくらクレオでも、怒るからな!

「にょあ、ぺぇちゃ、みゃっちぇ、にゅ!」
「ノア公子は確かに夜祭に行きましたがな、フェリクスを待っているかどうか……」
「!? ちゅぎゅ、ぃっきゅ!」

もう、すぐにでも教会を出なくては、ノアが先に帰ってしまう!

「これこれ、夜祭は教会の目と鼻の先でやっておるのでな、慌てる事はありませんぞ。まだ日も落ちきっておりませんから、ノア公子も帰ってはいないでしょう」
「ぁーきゅ、ぃっきゅ、ちゃーぃ」
「早く行きたいと? 仕方ありませんなぁ。では、そろそろこの孫自慢大会も終わりにしましょうかな」

やっぱり孫自慢大会だった。

その後、やっと爺婆から解放された私は、クレオに抱っこされて教会を出る。
オレンジと紫のグラデーションがかった空が、少し暗くなってきていて、屋台にたくさん付けられた照明が存在感を増し、お祭り気分を上げてくれる。

「にょあ! ぺぇちゃ、きょ、こぉ!」
「ノア公子に、ここにいると教えてあげているのですかな」

だって、知らせなければ、気付いてもらえないだろう。何しろ人で溢れ返っているのだから。

500人という、各地からの司教たちと、帝都の民が集まっている夜祭は、右を見ても左を見ても、人、人、人。ノアがどこにいるのかもわからない。

「にょあー!」
「……ん、」

今、何か……微かに何か聞こえたような? まさか、ノア!?

「にょあー、ぺぇちゃ、きょこぉ!!」
「……ぺーちゃん!」

やっぱりノアだ! どこにいるのだろう?

「ぺーちゃん、わたち、ここよ」

ノアの声が聞こえた刹那、人混みが割れ、その先にディバイン公爵一家が護衛や使用人に囲まれて立っていたのだ。

こ、神々しい!

「ホホッ、これはまた、派手な登場ですなぁ」
「にょあ、にゃっ、うぃー!!」
「この状況で、ノア公子が格好いいとは、フェリクスはノア公子の大ファンですかな」
「にゃ!」

ノアはまさに、英雄だ! 前世、私たちの年代の者は皆、ノアの大ファンだった。それほど格好いいのだ。

「ぺーちゃん、おまちゅり、いっしょ、まわりゅちましょ」
「にゃ!」

やっぱりノアは、私を待っていてくれたんだ。

優しいノア、大好きなクレオ、お母さん。今はこんなにも幸せで……幸せすぎて、いいんだろうか……。フローレンスが捕まった時、私は何もできなくて、見捨てたみたいなもので、ノアが死んだ時も……、結局私はずっと、言い訳ばかりして、逃げまわる人生だった。

「ふぇ……っ」
「ぺーちゃん? どちたの?」
「おやおや、公子様が見つかって、安心したのかの?」

私は、いつまでも、弱いままだ。

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