継母の心得

トール

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第二部 第3章

479.魔法契約の穴



謎に包まれた犯罪組織『エンプティ』。
そんな組織の関係者なのだろうか、ベル商会に勤める者の中に、支援センター開設の横槍を入れ、情報をシャットアウトしていた者がいた。

「意味がわかりませんわ……」

一体何のためにそんな事をしたのか。
今回の事は、ただの嫌がらせのようにも思える。

「嫌がらせをして、何になるといいますの?」

ミランダからこの事を聞いてから、私室に閉じこもり、紙とペンを前に、ぐるぐると頭の中でくり返し考えていた時だ。テオ様が心配して部屋にやって来て、わたくしの話を熱心に聞いてくださったのだ。

「ベル、おそらくその者は新素材ベリッシモの情報を手に入れようとしたのだろう。他にも、君のアイデアを横取りしようと狙っていたか……しかし、デルベ関係の調査が進み、これ以上は難しいと考え逃げ出した可能性が高い」

その際、何の情報も得られなかった為に、一矢報いてやろうと嫌がらせをしたのではないか、というのがテオ様の推測のようだ。

新素材ベリッシモはシモンズ伯爵家が一手に担っておりますのに、ベル商会ですの?」
「シモンズ伯爵家は、何故か当家の影ですら情報を掴まさぬ強固なセキュリティで守られている。ディバイン公爵家の関係の者であっても内部に入り込む事が難しい」

そうでしたの!? いえ、でもウチ、そんなセキュリティあったかしら……? わたくしが嫁いだ後に強化した?

「さらに、ベルが新素材ベリッシモの開発に携わっている事は、調査すればわかる。だからこそ、ベル商会に狙いをつけたのだろう。新たな商会を起ち上げる際が一番入り込みやすいものだ」

デルベ元伯爵夫人は、エンプティに利用されたのだろう。とテオ様は淡々と口にする。

「今回の嫌がらせも、撹乱させる為のものかもしれないが……」
「撹乱?」
「そもそも、ベル商会に携わる者、ディバイン公爵家、シモンズ伯爵家の使用人、新素材ベリッシモに携わる者も含め、皆が魔法契約を結んでいる」
「情報漏洩させない為ですわね」
「そうだ。つまり、スパイ行為をしていた者は契約不履行により、死亡している」
「死亡……ですが、魔法契約は万全なものではありませんわよね。以前に前妻……いえ、フィオーレの当主が降爵され、契約が無効になったと口にしていた事がありますわ。それを思えば、もし契約者が名前や身分を偽っていた場合、魔法契約自体無意味なのではありませんの?」

ずっと懸念していた事を話せば、テオ様は対策している事を教えてくれた。

「身分を偽るなどをした場合、その場で判明するよう、二重に魔法契約をしている」
「では、今回の間諜は本当の名や身分を明かし、魔法契約しているという事ですのね。……自らの命をかけて、情報を
盗んだと……」

それって、まさか……っ

「最初から、捨て駒に使われていたという事だろう」
「そんな……っ」
「家族を人質にされるなどの、弱みを握られたのかもしれないが」

なんて事を……

「ベル、君がそのような顔をする話ではない。全ては推測でしかないのだからな」
「テオ様……」

優しい言葉をかけて慰めてくれる夫に甘え、今はスパイ個人の事情はそれ以上考えない事にする。

「しかし、新素材ベリッシモの製造方法は盗まれてはいないだろうが、新型馬車やレール馬車、君の考案したおもちゃなどの情報が漏洩した可能性もある」

テオ様は難しい顔をして、唸るように低い声で呟いた。

「それでしたら、心配はいらないと思いますわ」
「何だと?」

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