継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 ベル商会重役会議1 〜 イザベル妊娠初期

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マディソン視点


本日は奥様の商会やお店などを任されております、ベル商会の代表と、各部署、各店舗の長がこの公爵邸カントリーハウスへ集まり、会議をされております。

どうやら一同に介するのは初めてのようで、奥様も初めてお会いになる方もいるのだと、仰っておられました。

そういうわけで、まだ奥様がお席にはついておりませんが、緊張感が漂っており、おもちゃの宝箱本店と、帝都支店の店長であるお二人は、若干手が震えております。

もちろん我が息子であるウォルトの姿もあり、先程から数字の書かれた紙をじっと見て、私にしかわからないでしょうが、ニヤけております。あれは数字(お金)を追うのが大好きですから、ベル商会の利益を見て笑いが止まらないのでしょう。

暫くして、扉が開き、奥様が入って来られました。
健康であるとはいえ、妊娠が発覚したばかりの不安定な時です。そこに殿方以上の仕事量……心配でたまりませんが、侍女長として、しっかりサポートさせていただきましょう。

「皆様、お待たせいたしましたわ」

奥様が部屋に入って来られると、皆様が一斉に立ち上がり、お辞儀をします。

「皆様、本日はお集まりいただきありがとう存じますわ。一度皆様との顔合わせをさせていただきたいと思っておりましたのよ」

ピンと伸びた背筋と、その堂々たる佇まいに品の良さ、そして類稀な美しい容姿は人々の目を釘付けにし、他者を圧倒させるのです。

奥様は貧乏貴族出身だとご自身では仰っておりましたが、とんでもないことでございます。

シモンズ伯爵家は歴史あるお家柄であり、伯爵という高い地位にあります。さらに、礼儀作法は皇族に嫁ぐ事も可能ではないかという完璧さ。まさにテオバルド坊ちゃまに相応しいお相手。
公爵夫人になるべくしてなったと言っても過言ではありません。

そんな奥様に声をかけてもらえた者たちは……あの目をご覧ください。あっという間に心酔させる。これは公爵家の使用人に取って、密かな自慢でもあります。

「お会いしたことがある方もない方も、本日はよろしくお願いしますわ。それと……、旦那様、お願いいたしますわ」
「「「「「!!?」」」」」

奥様の後に続き入って来られたのは、テオバルド坊ちゃまでした。

この公爵家の当主が来たとあっては、こちらにいらっしゃる皆様も大慌てで、顔色が悪くなってしまわれました。

「今日の会議には私も参加するつもりだ。よろしく頼む」

いつもは出てこない最高責任者が出てきたのですから、皆様の緊張感がさらに増しました。

では、使用人は部屋の外に待機ですね。

護衛騎士以外の使用人を下がらせ、私も部屋から出ようとすると、「マディソンは妻のそばにいてくれ」と坊ちゃまに言われ、奥様の後方へ待機することになりました。

やはり坊ちゃまも、奥様のお体を心配されているようです。

「───では、始めてくれ」

坊ちゃまのお声に、部屋の雰囲気がピンと張り詰めました。

「まずは先日ご報告いたしました決算の───」

会議が始まり、声を震わせながらも、氷の大公と呼ばれる坊ちゃまの前で何とか話している皆様に同情いたします。

「て、店舗での、現在のう、売れ筋は……っ、家具部門ですと、ソファが……特に屋外用ソファが売上を伸ばしており……」
「室内用よりも屋外用ソファが人気ですの?」

奥様が最近輸入されているという、隣国の紙に書かれた数字を見ながら首を傾げました。その様子に、皆様が喉を鳴らし、ハンカチで額を拭く者まで現れます。

「室内用ソファは新調するよりも張替えを選ばれる方が多く、今までになかった屋外用ソファをご購入される方が多いのが現状です。ただ、直接ソファを体験された方に関しては、新調を検討される方が多いようです」
「確かに見た目は、今までのものとあまり変わりませんものね……」

奥様は何かを考えるように右手を顎へと持っていき、人差し指でトントンと、自身の顎に触れました。

奥様のことですから、私どもでは思いつかないようなことを考えておられるのでしょう。
坊ちゃまも、そんな奥様を見て、これまででは考えられないような柔らかな目を向けられております。

「皆様に提案なのですが、それぞれの専門店を作り、体験出来るようにしてみるのはどうかしら? 受注生産ですと、どうしても一般の方は体験する事もできませんもの」
「奥様、新たな店舗を作るという事でしょうか」
「ええ。将来的には、色々な店舗が一箇所に集まった、巨大な建物を作りたいと考えているのだけれど……」

やはり奥様は、天才と呼ばれる方なのかもしれません。


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