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番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャ15歳の日常1 〜
ミーシャ視点
「ミーシャ! 聞いてっ、半年前から予約していたテュエベルホテルのスイーツビュッフェ、やっと明日行けるのよ!」
「へぇ、そうなんだ」
「そうなんだ、って、あのテュエベルホテルよ!? 超絶人気の、予約もなかなか取れないあ・の、テュエベルホテルのスイーツビュッフェなのよ!? 何そのうっすい反応!!」
アカデミーで出来た友人は、嬉しくて興奮しているのか、それとも私の反応の薄さに激怒しているのかわからないが、手を震わせながら、眦をつり上げて迫ってくる。
「いい!? テュエベルホテルは、今までの宿屋の常識を覆した世界初のホテルなの! 外観はもちろん、内装、設備、その他諸々、全てにおいて他の追随を許さず、今やホテル業界のトップオブトップ! その中にある絶品スィーツのお店、モンプティシェリのスィーツビュッフェなのよ!」
すごい熱量で一気に捲し立てられるが、無論知っている。
何せ、私はそこの元締めである、ベル商会の創設者、イザベル・ドーラ・ディバインの娘なのだ。知らないわけがない。
「ミーシャも男爵家の娘なら聞いたことくらいあるでしょ!?」
「まぁ……」
だが、母も、もちろんディバイン公爵である父も有名すぎて、その影響力は面倒……、ゴホンッ、自分の実力を試すことも兼ねて、私はアカデミーを男爵家のミーシャとして一般受験し、通うことにしたのだ。
その際、母にだけは言っておいたが、父や兄たちには内緒にしている。
だから、ここで出来た友人たちは私がディバイン公爵家の娘だとは誰も知らない。
母似のこの顔にも眼鏡をかけ、そばかすメイクまで施しているのだから、バレるはずもない。
「もう! そんなに反応薄いと連れて行ってあげないんだからね!」
「え?」
「だーかーらー、ミーシャと明日行く為に、半年前から予約していたの! もうすぐあなた、15歳の誕生日じゃない」
ああ、そういえば、誕生パーティーの準備をお父様がはりきって何ヶ月も前からしていたような気がする。
デビュタントもあるからって、ドレスも色々作るって言ってたっけ……。
「誕生日、お祝いしてくれるの?」
「そうだって言ってるでしょ!」
「……ありがとう」
この子はクロエといって、裕福な商家の娘で、13歳の年にアカデミーを一般受験した際、たまたま隣の席で受験していたことで出会い、父に似て無愛想と言われる私と仲良くしてくれている数少ない友人だ。
「だから、明日は絶対予定を空けておくのよ!」
「……うん」
「もちろん、ナツィーとコニーも一緒に行くからねっ」
ウィンクしてふふんっと笑うクロエは嬉しそうだ。
ちなみに、ナツィーは男爵家の令嬢で、活発で動物をこよなく愛している、コニーはお花屋さんの娘でおっとりしているが、芯が強い。どちらも、同じクラスで自然と一緒にいるようになった友人だ。
「楽しみにしている」
「じゃあ、明日はまずアカデミーに集合してから、テュエベルホテルへ行くからね!」
「わかった」
翌日、いつも通りそばかすメイクを施し、眼鏡をかけてから、アカデミーに行く用のすごしやすいワンピースを着て玄関に向かっていた。
父も兄たちも、朝食後は早々と仕事に行くので、2年間この格好をしていてもバレたことはない。
「まぁミーシャ、今日はアカデミーはお休みでしょう? どうしてアカデミー用の格好をしていますの?」
「お母様、今日は友人たちとテュエベルホテルへ行ってきます」
「あら、お友だちとお出かけですのね。楽しんできなさい」
「はい」
我が母ながら、皆に女神と言われるだけあって、無駄にキラキラしている。が、昔から母は、私のやりたいようにやらせてくれるのでそんな所も大好きだ。
男爵家の身分も母に手配してもらった。
父も兄たちも母が大好きだから、我が家は母を中心に回っているのかもしれない。
「行ってまいります」
「いってらっしゃい」
母と使用人に見送られ、いつもと同じように公爵邸を出ると、アカデミーの少し手前まで馬車で送ってもらい、後は徒歩で門の前まで移動する。
すでにナツィーとコニーが待っていて、私を見つけ、手を振ってくるので、振り返した。
「二人ともおはよう」
「「おはよー、ミーシャ」」
「クロエは?」
言い出したクロエの姿がなく、周りを見る。
「クロちゃんまだみたい」
コニーがおっとりと返事をし、何が嬉しいのかニコニコしているので首を傾げた。
「ミーちゃん、15歳おめでとう」
「コニー、ミーシャの誕生日、は来週でしょ」
「でも、今日はミーちゃんのお誕生日を祝うために集まったんだし、おめでとうを言いたいの」
「そっか。そうだね! ミーシャ、15歳おめでとう!」
二人はそう言って祝ってくれた。
「うん。ありがとう」
友だちにお祝いしてもらえるって、嬉しいことだな……。
「みんなー! お待たせ!!」
クロエの声がして顔を上げると、馬車からクロエが手を振っていた。
「わぁ、馬車だぁ」
コニーがおっとり声を上げ、ナツィーがポカーンとしている。
「さぁ、乗って、乗って!」
目の前にやって来た馬車から顔を出したクロエは、そう言って私たちを馬車に乗せ、出発させたのだ。
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