173 / 186
番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編2 〜
しおりを挟むロペス侯爵令嬢視点
わたくしの名前はオーロラ・ブルー・ロペス。ロペス侯爵家の令嬢です。
憧れのディバイン公爵夫人のように、完璧な淑女になる為、日々努力する毎日を送っております。
なぜわたくしがディバイン公爵夫人に憧れるようになったのかと申しますと、もう随分前になるのですが……、わたくしが4歳の時でした。
ディバイン公爵令嬢の遊び相手にと、公爵家へ招待されたのです。
皇族と同等と言っても良いほどの、いえ、皇族以上に富も権力もお持ちの、あのディバイン公爵家です。4歳といえど、とても緊張しておりました。
母に手を引かれ、想像以上に立派なお屋敷へと入ると、そこには我が家よりも沢山の使用人が待ち構えておりました。幼いわたくしは、その光景にも圧倒され、わくわくした気持ちよりも、恐怖が勝ってしまったのです。
そうして、震えながら案内されたお部屋に足を踏み入れたのですが、そこで待っていたのは、わたくしがお気に入りだった貴族街の噴水のそばに立っている、美の女神像と同じ姿をした美しい女性と、その女性にそっくりな容姿の、小さな女神様だったのです。
わたくしも母も、暫く二人の女神に見惚れておりました。
しかし、あまりにも神々しいお姿の為か、身体の震えは止まりませんでした。
その時です。
女神様がわたくしに近付いていくきて、母と一言、二言交わすと、幼いわたくしに視線を合わせるように膝をついて、「ごきげんよう」とにこやかに声をかけてくださったではありませんか!
もちろんわたくしは、声すら出せませんでしたが、女神様は気にせず、わたくしが当時大好きだった絵本や、楽しいおもちゃのある場所へと案内してくださったのです。
するとわたくしは子供でしたから、すっかりおもちゃに夢中になってしまいました。最初の頃に感じていた恐怖が無くなり、楽しいという気持ちで頭の中が埋め尽くされたのです。
もちろん小さな女神様も一緒におもちゃで遊んでいたのですが……、
小さな女神様は、一向に笑いません。
話しかけても、じっとこちらを見るだけで、無言だったのです。
始終そのような状態で、結局わたくしとは、一切言葉を交わすこともなく、笑顔すらなく、交流は終わってしまったのです。
そうして、わたくしは思いました。
わたくしが、立派な淑女ではなかったから、未熟者だったから、小さな女神様は笑っても、言葉を交わしてもくださらなかったのだと。
大人の女神様……ディバイン公爵夫人のように完璧な淑女にならならければ、小さな女神様のお友だちにはなれないのです。
その日からわたくしは、ディバイン公爵夫人のような完璧な淑女になる為に、淑女教育を頑張りました。
公爵家からのお誘いを受けても、お会いする資格はないとお断りし、自らを戒め、必死で己を高めてまいりました。
そしてとうとう、今年の冬にデビュタントという、小さな女神様と再会できる幸運が巡ってきたのです。
ミーシャ様。今度こそ完璧な淑女として、貴方様の前に参ります。待っていてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミーシャ視点
「っくしゅ」
鼻がむずむずして、教室の中だというのに、くしゃみが止められなかった。
恥ずかしい……。
「可愛いくしゃみが出ちゃったね」
コニーがにこにことフォローしてくれるが、「下品ね」とロペス侯爵令嬢の周りにいる令嬢たちが、ヒソヒソとこちらを見て話しているのが聞こえてくる。
「気にすることないわよ。くしゃみなんて誰でもするものよ!」
「そうだね。この間、ワイマン子爵令嬢は掃除中にくしゃみを連発していたよ」
「「「あ、ナツィーおはよう」」」
教室に入って来たナツィーが言う、ワイマン子爵令嬢とは、「下品ね」と言っている彼女だ。
ナツィーはどうやらワイマン子爵令嬢と昔交流があったようなのだが、今は交流のこの字もないと言っていた。
ナツィーの言葉が聞こえたのか、ワイマン子爵令嬢は顔を真っ赤にさせ、怒りに震えているようだった。
授業開始の鐘が鳴り、みんなが席に着くと、鐘が鳴り終わる前に先生がやって来る。
「諸君、おはよう。今日は授業の前に、授業参観について説明するのでよく聞いて、親御さんに伝えてもらいたい」
教壇に立ったかと思えば、先生は参観日についての説明を始めたのだ。
1,723
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる