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第三章
GPS付けないとダメだって
しおりを挟むせっかく元の世界に帰ってきたのだから、本屋に行ってマンガや雑誌を購入して帰ろうと思うよね? 普通。
しかしこの行動が、深淵の森で待っている皆を激怒させるとは、この時の私は思いもよらなかったのだ。
「しっっっんじらんない!!!! みーちゃんが急に消えて滅茶苦茶心配したのに、異世界で買い物してたぁ!? バカバカバカ!!!! 何でそんなおかしな行動してんのーー!?」
『ミヤビ様、フォローも出来ません。反省してください』
異世界から帰って来れば、すでに日は落ち、空には満天の星々が輝いていた。
「さっきまで豪雨だったし!!」
何故かリビングでお通夜のような雰囲気を醸し出しながら、皆が集まっている様子を見て本当に驚いた。忙しいと言っていたロードもいたし、魔神の少年もまだ居たし、トモコは泣いているしで、満足な買い物が出来ホクホクで帰って来た私とは正反対であったからだ。
そんな雰囲気の中、恐る恐る「ただいま~」と声をかけてからが説教の始まりだった。
まずロードが体当たりからの絞め殺しで息が止まり、畳み掛けるようにトモコに首を絞められ、ヴェリウスは下半身にまとわりつき、そして買い物袋を目撃されて冒頭のように激怒されたのだ。
「スミマセン…」
「大体行くなら行くで、きちんと伝えてくれないと!! というか行くなら私も行くし!!」
「いや、今回のは偶然でして…」
ロードの膝の間で正座をさせられ30分。そろそろ痺れが…。
先程経緯を説明したのだが、怒り…というよりは心配だったのか、皆の説教が止まらない。トモコに至っては自分も行きたかったんだと主張し始めた。
「ミヤビ、俺ぁ捨てられたかと思った…」
耳元で囁かれるバリトンにゾクゾクして身体を捻れば、ロードが哀しそうな目で私を見ていた。
「捨てるわけないデショウ。ロードの事も母には一応報告してきたし」
パンチパーマの彼氏だと思われているけどな。母の中では仏様=大仏的なイメージがあるのだろうか? 大仏の頭はパンチパーマじゃないんだよって教えてあげた方がいいのか?
「みーちゃん、おばさんにロードさんの事報告したの!? それはおばさん晴天の霹靂だろうね~」
“青天の霹靂”だ。晴じゃない。
「トモコの家族と一緒に“祝福”してきたから、例えよほどの事があったとしても不幸にはならないよ」
そう伝えれば、トモコは目をパチクリさせた後、エヘヘとうれしそうに笑って「ありがとう~」と言った。
ロードも母に報告したと言った時から若干頬に赤みがさしたので嬉しかったのかもしれない。
そういえば、ロードのご家族にはまだ会った事も話題に上がった事もなかったが、挨拶に行った方が良いのだろうか? 普通は行くよね? もしかしたら魔素の枯渇で亡くなっている事も考えられるが…。
「ねぇロー『しかし、異世界へは神王様のお力でも行けなかったと前に仰っていましたが、何故行く事が出来たのでしょうか?』」
ロードに話し掛けようとしたが、ヴェリウスによって話を遮られた。
「多分前は、元の世界に戻ったらこっちには二度と来れないかもって気持ちが強かったからだと思う。今回はそんな事考えずに、家族の様子が気になっちゃってたから…ほぼ眠りかけだったし…」
説明すれば、『成る程…』と納得された。魔神の少年はキラキラとこちらを見ながら、何かを取り出した。
「神王様、今回のように神王様が異界へ行ってしまえば、オレ…私達は追って行く事が出来ません。唯一、世界を越える事の出来る能力を持っている人族の神も、今はまだ幼い為その力をコントロールしきれていませんから」
確かに。と頷けば、小指の先位の大きさの石を机の上に2つ置かれた。
首を傾げて魔神の少年を見れば、にっと笑って続きを話始める。
「これは力を溜め込む事の出来る石です。ここにこうして神力を送ると…」
石を1つ握り、自身の神力を石に送ると握っていた手を開いた。
魔神の少年の手の平には、ルビーのようにキラキラ輝く赤色の宝石が乗っていた。
「お~っ綺麗な宝石だねぇ」
『ジュリアスの力を僅かに感じるな。もしやこれは“魔石”か?』
トモコとヴェリウスが興味津々に覗き込んできた。
「さすがヴェリウス。よく分かったな」
『力を溜め込む石となれば“魔石”しかなかろう』
魔神の少年とヴェリウスの話に、トモコの瞳がキラキラし始める。
「神王様、この石は“魔石”と言い、先程もお伝えしましたようにこうして“力”を溜め込む性質を持っております」
魔神の少年はその“魔石”とやらで何がしたいのだろうか?
「オレ達…我々神族は、自分の力であればどこへいっても感じる事が出来るので、神王様が異界に行く際の目印にこの“魔石”を持ってもらったらどうかと思ってお見せしました」
成る程。要は発信機か。
GPS替わりに付けておくって事ね。
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