聖女のおまけです。

三月べに

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 聖女のおまけ。
 それが定着している花奈の印象は、ほぼ皆が同じだった。
 花のように簡単に折れてしまうほどか弱く、病弱。
 それも不運なことに、聖女の召喚に巻き込まれたことが原因。
 病弱で不運体質。真っ白な髪に透けるような白い肌の花奈は、そう思われていた。
 穏やかな性格で、微笑む顔もどこか弱々しさを感じ、儚げ。
 騎士達はもっぱら、か弱く可憐な女性と認識していた。
 第十三番隊も、例外ではない。ただ一人を除いて。
 ノットは獣人。その身体能力の高さに敵う人間はいない。
 その上、魔法も強力ときた。ノットは第十三番隊の中でも一目置かれていて、王弟殿下も名前を覚えているほどだ。
 そんなノットが、その儚い姿の花奈に手合わせを持ちかけた時は、彼女の安否を気にした。しかし、王弟殿下の決定に逆らえるわけもなく、見守ることになったのだ。
 ノットが花奈に怪我をさせないか、セドリックは腹部に痛みを抱えながら見守った。
 その身体能力の高さと強力な魔法を発揮せず、加減してくれと切に願った。
 初めは、ノットの頭上が爆発。指を構えた花奈の魔法攻撃から始まった。
 連続しての爆発。魔導書で習得した念じるだけで発動する魔法。
 先ず、開いた口が開かなかった。第十三番隊の一同のことだ。
 王弟殿下のジェイミーは、喜色満面の笑みで眺めた。
 狙いは的確だが、ノットのスピードに追い付かない。
 間合いを詰めて、ノットが魔法攻撃を仕掛けようとしたその瞬間、まさに今花奈が怪我をしてしまうのではないかと叫びそうになった。
 しかし、攻撃は当たらない。ジェイミーの防御の魔法もあった上に、花奈とノットの魔法がぶつかり合って相殺。
 花奈はとんでもないほど飛ばされた。
 そのことに、ギョッとしたセドリック。そのまま花壇に激突してしまうかと身を乗り出したが、花奈は無事に着地をする。その姿が意外すぎて、またもや口をあんぐりと開けてしまう第十三番隊だった。
 続いて花奈は花壇に触れると、それを操ってノットを捕らえようとしたが、ノットは捕まらない。
 そしてまた魔法攻撃を構えた瞬間に、ノットは本性を見せて動揺させた。
 獣人。それは人間も引き裂く力を持つ種族。

「どうだ? 驚いたか?」

 その言葉は、同時に「恐ろしいだろ?」と問うたつもりだった。
 人間を簡単に引き裂く恐ろしい種族として、世間では有名。
 第十三番隊のメンバーも、密かに恐れているのだ。彼とはじゃれることが出来ない。
 ノットは、怯えた反応をすると思っていた。だが、花奈は違った。
 猫科大好き人間の花奈にとって、獅子の姿のノットは恐怖の対象にはならなかった。もふもふの対象なのだ。
 慣れないスキンシップに、ノットは正直戸惑った。
 本来獣人族にとってスキンシップは交友の証なのだが、他に獣人仲間がいなく、その上じゃれる相手もいないノットにとって、初めてのことだったのだ。
 鬣に触れられ慣れていないため、執拗に頬擦りをする花奈の耳に噛み付いてやめさせる。

「ハナ様!! ご無事ですか!?」

 我に返ったセドリックが、真っ先に駆け寄った。
 吹き飛ばされた時に、怪我を負っていないか、確認する。もしも負っていたら、兄のような存在の魔導師に何を言われるか。恐ろしい。
 他の第十三番隊は、まだ口をあんぐりと開けていた。
 吹っ飛んでからの華麗な着地に、ノットへのもふもふ行為が信じられなかったのだ。自分の目を疑った。
 もしや、か弱いのは見た目だけ?
 そう思っていれば、花奈はジェイミーの色気にやられて倒れてしまった。
 それを無理をしたせいだと、第十三番隊は思ったのだ。
 やはり花奈は、か弱く可憐な女性なのだと。



「はぁ……助かった」

 稽古場に戻ってきたセドリックは、胸を撫で下ろす。

「どうしたんですか?」

 リクは眠たそうに、呟きの意味を問う。

「実はハナ様が第十三番隊の任務につくという話が上がったんだが……なんとか聖女様の初任務についていくことが決定した。よかった……またハナ様に何かあったらオレのクビが……」

 ぶつくさ言いながら、お腹をさするセドリックが離れた。

「……なぁ、ノット。聖女のおまけと任務一緒にしたくね?」

 ランスロットは笑いかける。

「あ?」
「お前とあんなにやり合えるんだし、なんか楽しそうじゃね?」
「……そうだな」

 ノットがぼんやりと返事をした。
 脳裏に思い浮かべるのは、初めて声をかけた日のこと。
 ランスロットとノットの魔法をぶつけ合った時。
 花奈は、拍手を響かせた。目を爛々と輝かせて、満面の笑みをしていたのだ。
 あれを見て、ノットはなんとなく任務に同行させたくなった。
 もっと面白いものが見れると思ったのだ。予想は的中。
 はぐれたから匂いを辿って探してみれば、魔物と遭遇した花奈を見付けた。華麗に避けてあしらった花奈を見て、興味が惹かれたのだ。じっと観察していれば、視線に気付いたのか、本能なのか、警戒した表情になっていた。それはそれで面白かった。

「アイツ、魔法が好きそうだし、誘ってみるか」
「魔法が好き? 聖女のおまけ……えっと、ハナさんは、そうなんですか?」

 壁に凭れてうとうとしていたリクは、聞いていた会話に入る。

「ああ、きっと好きだぜ」

 ランスロットが頷く。

「一緒に説得しに行こうぜ」

 そう三人はセドリックの目を盗んで、花奈を捜しに向かったのだった。


 
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