18 / 25
18 討伐の依頼。
しおりを挟む応接室の中はいたって普通という印象を受ける。
黒革のソファーが二つ、ダークブラウンのコーヒーテーブルを挟んでいた。あとは隅の花瓶に、生け花を飾ってあるだけ。
「まぁ、座ってくれ」
「はい」
私が部屋を見回していれば、座る許可が出た。
奥に一人用のソファーがあったけれど、ギルマスは私と向き合う形で座る。白魔法使いのお姉さんは、ギルマスの後ろに立った。
「オレは、南支部のギルドマスターの座につかせてもらっている。名前は、グラディ。ゴールドランクのレベル1だ」
一つのゴールドダグが、置かれる。
そこにはちゃんとグラディという名前と、1という数字が書かれていた。
「ついでにって言っちゃ悪いが、後ろにいるのはオレの女房のアリー。同じくゴールドランクのレベル1だ」
「どうぞ、お見知り置きを」
「あ、どうも。アイナと申します」
にこりと微笑まれたので、私は会釈をしておく。
礼儀正しい奥さんをお持ちで。
夫婦揃って同じランクか、すごいなぁ。
「単刀直入で問う」
真面目な眼差し。
さて、ギルマスが、一体私に何を問うのか。
「ーーーー神の化身のアイナ様、で間違いはないか?」
まさか、それが出てくるとは思わなかった。
神の化身。だから呼んだのか。
てっきり、ゴールドランクになるために小細工をしたのかと問われると思った。目を丸めつつも、誰から聞いたのかを推測する。
「サファリ街の領主が、知らせたのですか?」
真っ先にサムの顔が、頭に浮かんだ。
とりあえず、先にそれを確認したい。
もしも、万が一にも、ガネット街の蛇男から聞いたのなら敵認定だ。
「そうだ。サムとは長い付き合いでね。身分は違えど気が合う友だ。昨日手紙が届いて、冒険者になりに来ているかもしれないって知らせてくれた」
確かに気が合いそう。
サムと友だちってことなら、信用は出来るか。
足を組んで、私は深く凭れた。
「サムさんの友なら、安心して話せます。私は、神の化身です。神シヴァール様と女神フレーア様の娘のアイナです。どうぞ、よろしくお願いします」
足を組んだまま、ペコッと一礼する。
「ダグを見てもいいですか?」
「ああ、どうぞ」
掌を出して、テーブルの上のダグを引き寄せた。
呪文もなく、ひとりでに飛んだダグを見て、緊張感を抱いた様子の二人。
神の化身だと確信を得たのだろう。
私のダグと見比べて見る。ちょっと傷が付いていたから古いとわかった。
「それで? サムさんの手紙にはなんて?」
「あー会えたら、例の件は片付いたと伝えてほしいと書いてあった。あ、手紙を見るか?」
「いえ、いいです」
証拠として提示したいようだけれど、信用しておく。
「例の件か……仕事が早いですね」
身を乗り出して、そっとダグを置いた。
例の件とは、人身売買の組織だろう。
「それとイサーク団が君を追って街を出たとも書いてあったな」
「イサークですか……」
「オレが知っているイサーク団か? 何度か冒険者にならないかと誘ったが一蹴された……あの狩人のイサーク団?」
「ええ、そのイサーク団ですよ」
他に狩人のイサーク団はいないだろう。そう名乗っていたし、イサークで間違いない。
「あ、そうだ。イサークも冒険者になる気になったので、もう勧誘の必要はないですよ」
「何? あのイサークが冒険者になるのか? なんでまた気を変えた?」
「まぁ、それは私からは言えないので、本人が来たら尋ねたらいいじゃないですか」
獣人族だと隠す必要がなくなったから。そうとは言いふらせない。
そこで「お話中、失礼します」と別の女性が入ってきた。桃色髪を結った女性は、コーヒーを持ってきてくれたのだ。
出て行くまで、会話は待った。
「ギルマスとして、神の化身が冒険者になるのは許せないとか、そういう話がしたいのですか?」
「とんでもない! ゴールドランクのレベル3って判定が出るとばかり思ったんだが……」
「それは多分、経験不足でしょうね。魔力はこの通り、神級ですけれど、戦闘経験がなく、その点を差し引かれたのかと」
私はネックレスにしていた魔力の小瓶を出す。
興味津々で凝視する二人に、よく見えるように渡した。
神級の魔力の結晶。金箔が詰まった小瓶。
「経験不足で減点、か……」
妻アリーに魔力の小瓶を渡したグラディは、少々苦い顔をした。
ギルマスという地位にいても、まだゴールドランクのレベル1なのだ。
経験を積めば、レベルが上がると思っている私の考えは否定しない。
「ゴールドランクからのレベルアップは難しいが、きっと神の化身様はそうなんだろう。あの勇者でさえ、レベル2のままだ。レベル3は、昔の英雄にもいない」
「まさに神レベルですかね」
私は笑って見せた。
私なら届くレベルなのだろう。神の化身の私なら。
そうか。勇者のランクは、ゴールドでレベル2か。
ちょっとムカつく。絶対に経験を積んで、勇者を超えてやる。
『おおー。いいね!』
『面白いわ!』
何故か盛り上がる神様夫婦。
勇者を超えることの何が、そんなに面白いのだろうか。
「実はアントンとも知り合いだ。アメティーー……アメーちゃんとも一緒にいたから、アントンと顔馴染みだろう?」
「アントンさんもゴールドランクのレベル1ですもんね」
今、アメティスと言いかけた?
そう言えば、アメーと初めて会った時、アントンさんはいなかった。このギルマスから直接、水晶玉の件を聞いたのだろうか。いつの間にか、ゴールドランクになったアントンさん。やっぱり強い人だな、としみじみ思う。
「そのアントンにも話を持ちかけた。実はゴールドランクの依頼があってな……ゴールドランクなんて今時早々いない、ましてや王都から外れた国の隅にはな」
「ゴールドランクでパーティーを組んで、その依頼とやらをこなしたいと言うことですか? アントンさん、グラディさん、アリーさん、私」
「そうだ。それとシルバーランクのレベル3を何人か連れていく」
「ふむ……。さっき言ったように、私は戦闘の経験がありません。魔物と一戦交えたこともありませんから、お役に立てるかどうか……逆に足を引っ張るかもしれません」
協調して戦うって難しいことだ。
「先に、内容を教えてもらえませんか? いいですか?」
「ああ、いいぞ。これだ」
アリーさんが、渡してくれた紙を見てみれば、ゴールドランクの依頼とデカデカと書いてあった。
「べレス?」
依頼内容は、討伐。それもべレスという名の魔物。
知らないなぁ。
『べレスは、地球だと悪魔の分類に入れられていたよ』
『悪魔ですか』
『その世界だと、馬面で強力な炎の息吹で攻撃をする魔物なのよ』
馬面で炎を吐く魔物か。
ゴールドランクの冒険者でなくては、討伐が難しい魔物。
紙には、馬面の魔物が描写されていた。これが強敵なのか?
私はイマイチ納得出来ず、首を傾げた。
『あ。大きさは確か、平均五メートルよ?』
五メートルってどのぐらいだ。私は想像したが、あいにく想像力はあまりない。でも間違いなく、でかい怪物だと思った。
いやマジで、でかいな!?
元のレウより大きいじゃん。
「あの、この、べレスって大きさは?」
「普通は五メートルだが、そいつは六メートルはあるそうだ」
巨人じゃん!!
「んー……」
「なんだ?」
「……私が一人で行きましょうか?」
二人が、ギョッとした。
「厳密には一人ではないのですが」
ミニレウを取り出して見せる。
ミニレウは「キュウ」と挨拶をした。
「まぁ可愛らしい」
「……えっと、この可愛らしい魔法生物と?」
「あ、レウ。戻って」
一応部屋を見回して、大丈夫だと判断したので、ミニレウに頼んだ。
ミニレウは、ボンと白い煙を撒き散らした。そして、部屋にその巨体を現す。
「この子は絶滅したとかいうレウドラゴンを元に造ったドラゴンです」
もふもふの長い毛並みを撫で付ければ、レウは「キュー」と頬ずりをした。ひんやりしたもふもふの毛。気持ちいい。
「あ、火を吹きますよ」
また驚いた顔をする二人に、教えたあと思い付きを言う。
「この子でべレスの住処まで行って、首を取ってきましょうか?」
「いやいや! 神の化身様と言えど、それはだめだ! 自分でも言ったじゃないか! 戦闘経験がないって! べレスの強さは、ゴールドランクだ!! 下手をしたら……化身様の身がっ」
「私が不安に思うのは、経験豊富なグラディさん達の足を引っ張ることです。この魔力はどのぐらいの威力を発揮するか、わかります?」
私は再び首にぶら下げた小瓶を持って見せた。
「いや?」
「ガネット街を吹き飛ばすほどです」
「「……」」
「言いたいことわかりましたか?」
にこにこする私と反対に、少々青ざめるグラディさんとアリーさん。
街を吹っ飛ばせる爆弾と力を持っていると知ったのだ。想像でもしたのだろう。
「ぶっちゃけ、爆弾投下も可能なんですよ。だから、お困りなら、私が行ってきてもいいですよ?」
言葉にして伝えてから、私はどうするか首を傾げて答えを待つ。
「そう……出来たら、いいんだが」
腕を組むグラディさんは、悩んだ様子。
「爆弾投下が出来ない理由でもあるんですか?」
私はもう一度、依頼書を確認する。
「べレスの住処の付近には、ハーピィの群れがいる」
「ハーピィとは、なんです?」
「人間と鳥の魔物ってところだ」
あ、ハーピー?
「ハーピィのランクは?」
「シルバーランクのレベル1だ。だが、数が多くて厄介だ。ハーピィの討伐の場合は、シルバーランクのパーティー四人以上を推奨している」
「そうですか……そうなると突破が難しいですね」
レウを撫でて、私は考えた。
レウに乗って、ハーピィの群れを突破は出来ない。
「ああ、だから、ゴールドランクの四人とシルバーランクの何人かでパーティーを組んで挑みたい」
「なるほど。では、そのパーティーに同じく新人冒険者のダレンとアメーも参加させてもらえないでしょうか?」
「それは君の手前にいた子達か。確かシルバーのレベル1だったな」
「ええ、ハーピィの戦いだけさせてもらえれば、経験になります。まぁ、これは私のワガママなんですけどね。アントンさんを加えるとなると、アメーの参加は必然になるかと」
ダレンとアメーに経験させて、あわよくばレベルアップを目論んでみる。
経験が浅い三人が、増えたら困るだろうか。でもアメーを置いて、アントンさんが討伐に出掛けるわけない。
「そうなんだよな、アントンはアメー……ちゃんの従者だから離れることをよしとしないんだよなぁ」
絶対にアメーの素性知っているな、このギルマス。
するとそこで、ドアの外が騒がしくなった。
「勝手に入ってきては困ります!」と女性の声。さっきの桃色髪の女性だろうか。
そんな制止を振り払ったのか、乱暴にドアが開かれた。
「アイナ!!!」
「うお、びっくりした」
ガウッと吠えるように声を轟かせたのは、獣人の姿のイサークだ。
あまりにも大きな声で名前を呼ぶから、ビクッと肩が跳ねた。
「ひゃあドラゴン!?」
レウを見て卒倒しそうになる桃色髪の女性。
「やっと追い付いた! 絶対に離れないぞ!!」
「え? 早いね、サファリ街から走ってきたの? イサーク」
「ふざけてんのか!? 馬で来た!!」
狼のイサークは、息を乱している。三日も馬を走らせて、このギルドまで駆け込んだのかな。馬が可哀想。
「イサーク!? お前、獣人だったのか?」
「ああ!? 獣人で悪いか!?」
「いや悪くねーけど」
「全く! 南支部のギルマスが、アイナになんの用だ!? ああん!?」
「なんでキレてんだ?」
息を切らしながら、キレッキレなイサークだったけれど、一息つくと私の隣にどっかりと腰を落とした。
レウには、ミニレウに戻ってもらう。
それを見て桃色髪の女性は、安心してドアを閉めた。
「そう言えば、私の護衛がしたいんだっけ」
「忘れてんじゃねー!!」
イサークが、毛を逆立てる。
うわ。もふもふしてそう。
「んー、イサーク団も連れていきます?」
私はそうグラディさんに問うてみた。
1
あなたにおすすめの小説
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
完璧すぎると言われ婚約破棄された令嬢、冷徹公爵と白い結婚したら選ばれ続けました
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎて、可愛げがない」
その理不尽な理由で、王都の名門令嬢エリーカは婚約を破棄された。
努力も実績も、すべてを否定された――はずだった。
だが彼女は、嘆かなかった。
なぜなら婚約破棄は、自由の始まりだったから。
行き場を失ったエリーカを迎え入れたのは、
“冷徹”と噂される隣国の公爵アンクレイブ。
条件はただ一つ――白い結婚。
感情を交えない、合理的な契約。
それが最善のはずだった。
しかし、エリーカの有能さは次第に国を変え、
彼女自身もまた「役割」ではなく「選択」で生きるようになる。
気づけば、冷徹だった公爵は彼女を誰よりも尊重し、
誰よりも守り、誰よりも――選び続けていた。
一方、彼女を捨てた元婚約者と王都は、
エリーカを失ったことで、静かに崩れていく。
婚約破棄ざまぁ×白い結婚×溺愛。
完璧すぎる令嬢が、“選ばれる側”から“選ぶ側”へ。
これは、復讐ではなく、
選ばれ続ける未来を手に入れた物語。
---
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる