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6巻
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しおりを挟む序章 ❖ 望まぬ対峙。
私が生前――転生前に読んでいた、タイトルは思い出せないネット小説。
ヒロインである男爵令嬢が、悪役令嬢を打ち負かして婚約者を奪うという内容だ。
ヒロインの名前は、ミサノ・アロガ。
美しい黒の髪と瞳を持つ、気の強い令嬢。
悪役令嬢の名前は、ローニャ・ガヴィーゼラ。
水色がかった白銀の髪と青い瞳を持った冷たい令嬢。
物語の冒頭から二人の攻防は始まる。
仕掛けたのはローニャ・ガヴィーゼラ。本の山を落として、危うくミサノが怪我をするところだったが、「ごめんなさい、わざとじゃなくてよ」と悪びれもせず笑った。
ミサノが、ローニャの婚約者シュナイダー・ゼオランドと親しくなったから、それが理由で嫌がらせをしてきたのだとミサノにはわかった。
別の日には、ある生徒が暴発させた魔法をローニャが弾き返して、ミサノにぶつけようとした。ミサノは無事だったが、明らかにわざとだと思い、ローニャを睨んだ。
また別の日のこと。魔法対決でローニャと当たり、ミサノは完膚なきまでに負かされた。
だが、ミサノはやられてばかりではいられない攻撃的なキャラクターだ。反撃に出た。
ローニャが取り巻きの令嬢とお茶会をしているところに、大きい蜘蛛をたくさん降らせたのだ。
ローニャは恐怖のあまり固まり、取り巻きの令嬢達は悲鳴を上げて逃げ惑った。
いい気味だと、ミサノは満足げに笑ったが、これだけで済ませる気はなかった。
ローニャの婚約者であるシュナイダーに、ローニャから嫌がらせを受けていると打ち明けたのだ。
シュナイダーが確認しても、ローニャは嫌がらせをしていると認めなかったため、ミサノとローニャの攻防は続いた。
ローニャはなかなか証拠を残さない、狡猾な令嬢である。
よって、ミサノはローニャの取り巻き令嬢達を捕まえ、おぞましい虫の幻影を見せて拷問した。ローニャに命令されていたとはいえ、今まで嫌がらせの実行をしていたのだ。いい気味だとミサノは思った。
ローニャが指示したと吐くまで、証言すると約束するまで、拷問を続けた。
そして、シュナイダーとともに、ローニャの悪事を学園の生徒達の前で暴き、断罪したのだ。
シュナイダーはその場で、ローニャとの婚約を破棄。ローニャは学園を飛び出した。
ミサノは想い寄せていたシュナイダーを手に入れて、ハッピーエンド。
それが、ミサノ・アロガ――ヒロイン視点の話だ。
だが、悪役令嬢から見た話は違う。
私は――悪役令嬢ローニャ・ガヴィーゼラに転生した私は、嫌がらせなんてしていない。
本当にわざとではなかったのだ。
本を落とした時も、たまたまそこにミサノ嬢がいただけ。暴走した魔法を弾いた時も、たまたまそこにミサノ嬢がいただけ。
魔法対決は成績がかかっているから、全力で勝たせてもらったまでのこと。
ミサノ嬢が降らせた蜘蛛にも、別に恐怖は感じなかった。驚いただけで、むしろ可愛いとさえ思っていたけれど、ミサノ視点では固まっているように見えたらしい。
シュナイダーには、嫌がらせなんてしていないから信じてほしいと頼んだ。
けれども、その時点で私はもう、私達二人が結ばれる未来はないと思った。
生前読んでいた小説は、きっと運命を描いたものなのだろう。ミサノ嬢とシュナイダーの運命の話。
その後は、取り巻きの令嬢とミサノ嬢の対決となった。
私は止めたが、虫嫌いな令嬢達は蜘蛛を降らせたミサノ嬢を許せなかったのだろう、聞く耳を持たなかったのだ。
私は断罪を予期し、動き始めた。生前から抱えていた〝まったりしたい〟という願望を叶えるために、遠く離れた地で生活をする準備を始めたのだ。
そして、断罪と婚約破棄をされ、シュナイダーとミサノ嬢のハッピーエンドを見届けたあと、学園を出た。
王国の最果てに位置するドムスカーザの街で、私はまったり喫茶店を開いた。
そこで出逢った人々とまったりと穏やかな日々を過ごしていたのだ。
望んでいた日々だったけれど――
美しい黒い髪と、黒い瞳を持つ、気の強いミサノ嬢。
彼女がまったり喫茶店に足を踏み入れる日が来るなんて、思いもしなかった。
変わらない鋭い眼差しで見てくるミサノ嬢は、いまだに私を敵視しているようだ。
――第二ラウンドは、所望しておりません。
第1章 ❖ 悪役令嬢とヒロイン。
1 デートの申し込み。
もふもふだ。温かさを感じる。
なめらかな触り心地。何度も何度も、触りたくなる。
目を閉じたまま掌全体で味わい、それから頬ずりをした。
いつまでも撫でていたい。もふもふ。
このもふもふは一体、何色だろう。
私は目を開くことにした。
目に映るのは、白だ。白いシーツ。なめらかなシーツを撫でている。――もふもふはない。
なんだ、夢でしたか……
もふもふの夢。とてもいい夢だった。
けれども、あれは誰のもふもふだったのだろうか。
誰のもふもふの夢を、見たのだろう。
この前、狼獣人のセティアナさんにもふもふさせてもらったから、その夢でしょうか。
私はベッドから起き上がって、背伸びをした。ふぅと一息ついて、ベッドを降り、身支度をする。
今日は群青色のドレスを着る。短い袖はバルーン型に膨れ、スカートの裾に星のような模様がちりばめられた、夜空みたいなドレス。くるりと回って確認したあとは、水色がかった白銀の髪を、ドレスに合わせた夜空色のリボンで緩い三つ編みにした。青い瞳を隠さないように、前髪をサイドに流す。
一階に降りたら、ハンガーにかけた白いエプロンを取り、腰に巻いた。
「さぁ、始めましょうか」
私はパンパンッと手を叩いて、お手伝いをしてくれる蓮華の妖精――ロト達を呼んだ。
掌に込めた魔力がライトグリーンの光となって落ちていき、床に円を描く。
ふわりと光ったその円から、ロト達が「ふわわっ」と溢れるように出てくる。
二頭身の妖精、ロトは掌サイズ。ぷっくりした胴体から、摘まんで伸ばしたような手足。そして肌全体はほんのりとしたライトグリーン。夏になると、頭の先がちょっぴり色付く。頬はポッとした桃色で、つぶらな瞳はペリドット色。
「お掃除、お願いします」
「あーいっ」
妖精ロト達は一斉に返事をして、敬礼をした。
店内の掃除をロト達に任せて、私はキッチンで仕込みをする。ロト達も数人、手伝ってくれた。
ケーキ作り。夏になってからは、いつもより冷やしてケーキを提供している。ちょっとひんやりしている方が、人気なのだ。
コーヒーも冷たいものを求められるから、少々改良しているところ。
アイスコーヒーにすると香りが減ってしまうので、お客さんには極力、ホットコーヒーをすすめている。香りもコーヒーの魅力だもの。
とはいえ、アイスコーヒーを求めるお客さんにも満足してもらいたい。だから、ちょうどいい苦みが出るアイスコーヒーを作ったのだ。甘さもしっかり感じられるようにミルクを多めにしてみた。
まだまだ改良が必要だから、朝に飲み比べをしていたりする。
アイスコーヒーは、結構難しいわ……
……そういえば、獣人傭兵団のボス、シゼさんは暑がっているわりに、必ずホットコーヒーを注文してくれる。
セティアナさんも、そうだ。やっぱり、香りを楽しんでくれているのだろうか。そうなら嬉しい。
他にも、ホットコーヒーを注文してくれる常連のお客さんがいるから、喜ばしいことだ。
ケーキ作りが済んだあと、私は換気のために窓を開けていた店内を、粉雪の魔法で涼しくした。
気持ちがいいから深呼吸。ロト達も真似て、すぅーはぁーっと息を吸い込んで吐いた。
窓を閉めている途中で、コンコンとノック音が聞こえてきた。まだ開店時間ではない。
誰だろう、と思い、ドアについている小さな窓から覗いてみると、そこには久しぶりに顔を見る人物がいた。
「オルヴィアス様」
ドアを開いて、私は会釈をする。
「おはようございます」
「おはよう、ローニャ」
白金にも白銀にも見える艶めく髪と、星が瞬いているような藍色の瞳を持つ、エルフの王弟殿下。先が尖った耳が特徴的だ。
戦士として名高い伝説のエルフ、オルヴィアス様。
微笑んでいるオルヴィアス様は、旅人風のマントを羽織っていた。
昨日は、オルヴィアス様の姉で、ガラシア王国の女王であるルナテオーラ様もお越しになった。ルナテオーラ様はこの間まで悪魔に狙われていたけれど、ようやく厳戒態勢が解かれたみたいだ。エルフの国、ガラシア王国から危機が去ったようで、安心する。
「開店準備で忙しいだろうか?」
「いえ、落ち着いたところです。どうぞ、中へ」
オルヴィアス様を、中へ通す。
「昨日姉上から直接礼を言われたと思うが、俺からも言わせてほしい。ありがとう」
胸に手を当てて、オルヴィアス様は頭を深く下げる。
「いえ、オルヴィアス様。手紙にも書き、ルナテオーラ様にもお伝えしましたが、ルナテオーラ様を狙っていた悪魔アモンラントは、私に付きまとっていた悪魔ベルゼータと繋がっていました。私の敵でもありましたし、それに実際にアモンラントを倒したのはセティアナさんという女性です」
「それは俺も聞いた。それでも、ありがとう。姉上を救ったのは、ローニャだ。悪魔を封印したのも、そなたなのだろう?」
「ええ、そうです。ですが、もうお礼は十分すぎるほどもらいました。黄金のクリスタルなんて困ってしまうのに……、あの、国宝ではないですよね?」
恐る恐る尋ねた。昨日ルナテオーラ様と、その夫オスティクルス様からお代とチップと称して渡されたのは、黄金のクリスタル。国宝級だと思うのだけれど、違うとおっしゃってほしい。
「ああ……あれは、まぁ、な……」
オルヴィアス様は、言葉を濁して苦笑する。
やはり国宝ですか。
「ん?」
スカートが引っ張られ、視線を下ろすと、妖精ロトがいた。
うるうるとした瞳で、バタバタと手足を動かす。
「お腹が空いたそうだ」
「そのようですね」
オルヴィアス様が通訳してくれる。私はクスクスと笑ってしまった。
「オルヴィアス様もどうですか? 朝食、ご一緒に」
「……いいのか?」
オルヴィアス様は、少々驚いた表情になる。
「はい、今オルヴィアス様の分も用意します」
オルヴィアス様は少し考え込むように拳を口元につけた。
「……そうか、ではいただこう。ありがとう」
その頬が少し赤らんでいるように見えたけれど、気のせいかしら。
私は手早くオルヴィアス様の分の朝食も用意する。
ホットケーキを焼き、クリームとシロップを添えたあと、アイスは食べるかと問う。
カウンター席に座ったオルヴィアス様が頷いたから、シャーベットアイスをお皿にのせた。
「お待たせしました」
「ありがとう、ローニャ」
「いいえ」
私もカウンター席に座り、オルヴィアス様と肩を並べて朝食をとることにする。
いただきます。
もちろん、ロト達もカウンターテーブルの上で、ホットケーキを堪能中だ。
あ、ロトのほっぺにクリームがついている。可愛い。
クスクスと笑ってしまう。
「美味しい」
「よかったです」
オルヴィアス様の言葉を聞いてにっこりする。オルヴィアス様はもぐもぐと咀嚼している。ごくんと呑み込むと、また一口ホットケーキを運んだ。
「お仕事、大丈夫ですか? オルヴィアス様。ちゃんと休まれているといいのですが……」
「少し無理をしたが、女王を守ることが役目。大丈夫だ。それに、こうしてこの店に足を運ぶことができるようになったのは、そなたのおかげだ」
柔らかくオルヴィアス様は、微笑んだ。
悪魔アモンラントが差し向けた黒いジンの被害に遭ってから、ずっと警戒を続けていたのだろう。
大丈夫――その言葉を聞いて、私はまた安心する。
「とても……そなたに会いたかった」
オルヴィアス様がナイフとフォークを置いたかと思うと、私の右手を取って握り締めた。
「えっ……あっ……」
ポッと自分の頬が赤くなるのがわかった。
オルヴィアス様の眼差しは愛しい人を見つめるそれだ。直視できない。
あまり深く考えずに誘ってしまったが、私に好意を持ってくれている異性を朝食に誘うのはよろしくなかったかも。
オルヴィアス様は一度、私に求婚している。その時は断ったが、オルヴィアス様はまだ諦めずに想いを寄せてくれているみたい。
今も変わらずに想ってくださっていることに、嬉しさと照れくささを感じた。
本人は永遠に片想いする決意をしていると言ったけれど、それはこの先も、変わらないのでしょうか。
「あーん」
そんなことを知らないロトが、口をあーんと開けて食べさせてほしいと求めてくる。
オルヴィアス様が手を放してくれる。私は小さな一切れをロトの口元に運んだ。
あむっと食べたロトが、幸せそうに頬を押さえる。
「このシャーベットも美味しい。新メニューか?」
「はい、そうです。夏なので冷たいものを、と思いまして。あと夏限定のアイスコーヒーも出しているのです。オルヴィアス様もお飲みになりますか?」
「せっかくだが、温かいコーヒーをもらおう」
「嬉しいです。温かいコーヒーの方が香りがいいですし、あまり冷たいものばかりだと身体によくないですからね」
食事を終えたので、飲み物を淹れに行く。
精霊の森で摘んでもらったコーヒーチェリーから作ったコーヒー豆を挽き、フィルターに入れてお湯を注いだ。
やはり、いい香りである。コクの深い香り。オルヴィアス様の分も運び、テーブルに置いた。
「ああ、いい香りだ」
オルヴィアス様はそっと笑みを零して匂いを吸い込んだあと、コーヒーを口に運んだ。
「美味しい」
褒められた私は笑みを返してから、自分も温かいコーヒーを一口飲んだ。
ほっとした。
「……また、店に来てくださるのですか?」
「ああ、そのつもりだ。少しでも、そなたとともに時間を過ごしたい。こうして食事をともにしてくれて、ありがとう。嬉しい」
「あ、いえ……いいんです……」
朝食時に来たから、あまり深く考えずに誘ったのだ。
それだけのことなのに感謝されて、どう言葉を返せばいいかわからない。
「ふっ。そなたがついでに誘ってくれただけなことはわかっている。勘違いしてはいない」
私はもう一口、コーヒーを飲んだ。
「ただ一つ、我儘を聞いてはくれないだろうか?」
「――? なんでしょう?」
オルヴィアス様が我儘なんて、珍しい。
首を傾げていると、オルヴィアス様が立ち上がった。
それから、いつかのように片膝をつく。
「そなたにデートを申し込みたい」
オルヴィアス様の言動に、大きく反応したのはロト達だ。
中には、ぴょんっと飛び跳ねるロトもいた。
かつて永遠に片想いする覚悟さえできていると伝えてくれた、美しい妖精さん。その彼にデートを申し込まれた私は硬直してしまう。
けれど、すぐに心臓が加熱されたみたいに熱くなり、ドッ、ドッ、ドッ、と高鳴った。
「いつも、そなたにもてなされている。今度は俺がそなたをもてなしたい。その機会をもらってもいいか?」
星空のような瞳で、上目遣いをされた。星が瞬いているような綺麗な瞳。
気を抜けば、吸い寄せられてしまいそうな美しさだ。
その声は、とても優しくて甘い。
オルヴィアス様の求婚を断ったのは、彼に苦手意識があったからだ。オルヴィアス様がシュナイダーを叱っていた姿が、私を罵倒するお兄様と重なって見えて、そこが苦手だった。でもオルヴィアス様はそんなところを直すと言い、実際に努力をしてくれている。
現にオルヴィアス様は今、優しい声で話しかけてくれている。
拒む理由が見当たらなかった私は、コクンと頷いてしまった。
花が咲いたように、ふんわりと嬉しそうな笑みを浮かべるオルヴィアス様。
「そうか、ありがとう。次の定休日、一日俺にくれるとありがたいのだが、予定は?」
「あっ……予定は……ありません。ので、大丈夫です」
「わかった。じゃあ次の休みにしよう。俺とローニャ、二人きりで、デートだ」
オルヴィアス様は念押しするかのようにそう言うと、そっと私の手の甲に口付けを落とした。
そしてコーヒーをゆっくり飲み干し、朝食のお礼を言ってお店をあとにする。
頬に手を当てたら、熱かった。いつから私は、真っ赤になっていたのでしょうか。
テーブルの上のロト達も、頬を真っ赤にしていた。
とても、とても、熱いです。
友だちと出かけるのではない。求婚してきた美しい妖精さんと真剣なデートだ。
どうしましょう。顔が火照ってたまりません。
「はっ! 呆けている場合ではなかった! 開店準備をしなくては!」
私が慌てると、ロト達も大慌てでクリームを頬張る。
今日のまったり喫茶店は慌ただしく開店した。
ルンルンと注文を受けたものを配膳していく。
「なんだか、今日のローニャ店長はご機嫌に見えるね」
「さては恋だね」
「えっ。そう見えますか?」
古い友人同士という老人のお客さん二人にそう言われ、私は頬を右手で押さえる。頬が緩んでいたのでしょうか。
「恋する乙女は素敵だよ」
「ローニャ店長なら、なおさら素敵だね」
「恋だなんて、そんな、別に……。ありがとうございます」
しわのある顔で朗らかに微笑まれる。私は素敵と言ってくれたことにお礼を言った。
恋、と呼べるのでしょうか。
ううん、考えるのはあとにしよう。今は仕事中だ。
これから一番忙しい時間帯になる。
女性客が押し寄せるブランチタイムには、セリーナと名乗っている女の子姿のセスが来た。
セスは、獣人傭兵団の一員であるセナさんの弟だ。
美少女の姿は完璧で、実は少年であると見破る人はいないだろう。バルーン型の半袖ブラウスにはオレンジの花がちりばめられていて、胸には大きめなリボンをぶら下げている。ハイウエストの短パンはコルセットデザインになっていて愛らしい。
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セスの注文には、きっとセティアナさんの分も入っているのだろう。
「セティアナさんの具合はどうですか?」
「んー、前のローニャと同じ! なんかボーッとしてて緩んでる感じ!」
少し考えてセスは、にっこりと答えた。
悪魔の悪い魔力の影響を受けて、穢れ状態になってしまったセティアナさんは、私の魔法で浄化されて現在療養中である。
魔法の副作用で傾眠状態になり、負の感情が高まると眠気に襲われるので、安静にしてもらっている。
私もちょっと前に同じ状況に陥って、セス達にお世話してもらったことがある。その時の私と同じ、か。
「仕事が終わったら、お見舞いに行きます」
「いやいや! 大丈夫だよ!」
「でも……」
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