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20 鑑賞会。
しおりを挟む思い返せば、家に友だちを招くのは初めてだ。
ちょっとどきまぎしつつも、明日みやちゃん達が来ることを伝えるとお母さんは快く許可してくれた。
「友だちを連れてくるなんて、初めてよねー」
なんだか嬉しそうに溢すお母さん。
そうですね、と私は相槌を打った。
翌日。みやちゃんは白いワンピースとピンクのオフショルダーを合わせた可愛いコーデで来た。
狼くんは襟付きシャツにデニム。白銀くんはキャラクターもののプリントシャツに七分丈のズボン。
三人とも私についてこないと家の結界の中に入れないので、私の肩に触れながら入った。
「わぁ!! なんか思ったより落ち着く!」
「そうですね。小紅芽さんの霊力が満ちているからでしょうか」
「そうかもね!」
なんて話すみやちゃんと狼くん達と、家の中に入る。
「初めまして。白銀和真です」
初対面の白銀くんは、礼儀正しく挨拶をした。
狼くん達も「お邪魔します」と笑顔で言う。
「何もないけれど、ゆっくりしていってね」
「はーい!」
お母さんに元気のいい返事をするみやちゃん。
狼くんは手土産のシュークリームを渡した。
そんな気を遣わなくてもいいのに。
シュークリームは三人分しかなかったので、私と安倍夫妻の分と買ってくれたのだろう。私とお母さんは人数分の飲み物を入れて、昨日買っておいたポテチとポップコーンを皿に盛り付けて出した。
DVDプレイヤーが置いてあるのはリビングだけなので、リビングのソファーの前に皆仲良く並んで座る。
「何を観るの?」
「ホラードキュメント!」
「ええ? てっきりホラー映画とかそういうの観るのかと思った」
「ホラー映画は怖すぎる……」
それ、半妖が言ってもいいものなの?
「あれは怖がらせるために作ってあるから……怖い」
みやちゃんはガクブルと震えた。
「いや、ホラードキュメントも怖がらせるために作ってると思うんだけれど」
「いや面白いから観てみようよ!」
「うん……」
とりあえず私はDVDを受け取って、それをプレイヤーに入れる。
みやちゃんと狼くんの間に戻って、リモコンでスタートを押した。
楽しめるのかなぁ……私は疑問に思ってしょうがない。
内容は、心霊ビデオがひらすら映し出されるドキュメントだった。
「ほら観て! 本物の妖が映ってる!」
「たまにあるのですよね。写真やビデオに妖が映り込むことが」
「あ、これ偽物だよ」
「加工ですかね」
「え、そういう楽しみ方?」
始まって三分もしないうちに、思っていた楽しみ方と違うとわかる。
「あ、ここ妖が映ってる! ピースサインまでしてるのに映ってねぇー!」
白銀くんも指差して笑う。
普通の人には視えていない妖が、画面の隅から顔を出してピースサインをしている。それには私も笑ってしまった。
ホラーなのに、大笑いして鑑賞する。
お手洗いに行こうと席を立つと、トイレから出てきた白銀くんとばったり廊下で会った。彼はフイッと顔を背けて、黙ってリビングに戻る。
ん? 気のせいか、白銀くんに避けられていないか?
なんだろう。私、何かしただろうか。
首を傾げたけれど、戻ってみれば白銀くんは普段通りに見えた。
狼くんを挟んでポップコーンを差し出してみれば「ん、ありがとう」と言ってくれたし、考えすぎなのかもしれない。
何枚かDVDを観たあとは、「駅まで送る」という名目で家を出て学校に行った。
幻獣の治癒のためだ。
待っていましたと言わんばかりに校門そばにいた幻獣。
大きな絆創膏が貼られたその箇所に手を翳して、熱をイメージした。
合計三箇所。何かに引っ掻かれたような傷があったので、それを治癒する。
「はい、終わった」
そう言って撫でさせてもらう。
もふもふだった。艶やかな羽毛に顔を埋めたい。抱き締めたいと思った。
でもそれを実行する前に、幻獣は翼を羽ばたかせて舞い上がる。
羽根を撒き散らして風を起こす幻獣は、夜の学校を旋回すると、校庭隅の井戸に向かっていって姿を消す。
私達はそれを呆然と見送るのだった。
翌日、私は丸眼鏡を机の上に置いて、そのまま登校した。
前髪もサイドにしっかりと分けて、前が見えるようにする。
「おはよう」
「! おはよう、今日は眼鏡ないんだね?」
「安倍さん、イメチェン?」
「そんなところ」
緊張気味な私は、毛利さん達に挨拶をして、自分の席に座った。
何やら私が入った瞬間にざわざわし出した気がする。特に男子生徒が「おはよう! 可愛いね!」なんていつもは挨拶してこないのに、挨拶してくれた。
「おはよう。お世辞はいいよ」
なんて笑って見せる。
男子生徒達がそわそわするから、私もそわそわしてしまう。
そこで、みやちゃんが来た。
目の前で鞄をドサッと落として固まるほどの反応。
「か、可愛いぃいい!! 眼鏡外したんだね!! これからはそうするの!? やった!! 目の保養!!」
動き出したかと思えば絶賛して、私を抱き締める。
「おはよう、みやちゃん」
「おはよう! 髪型も変えようよ! ね!?」
「束ねている方が楽だから」
「ゆるふわカールにしてみよう!? 似合うよきっと!!」
「いや束ねてる方が楽だから」
「ゆるふわカールにしようよ!!」
「いやだから束ねてる方が」
ゆるふわカールを推すみやちゃん。
勉強中邪魔になって束ねる自分を安易に想像出来たから、却下をする。
でも「明日コテ持ってくるから!」と試すことを譲らないみやちゃんだった。
「おはようございます、小紅芽さん」
いつからいたのか、ドアに凭れている狼くんが挨拶をする。
「おはよう。狼くん」
「可愛いですよ」
「っ……それはありがとう」
狼くんはサラッと褒めてきた。
だから、勘違いさせちゃうからやめてって言ったのに。
「イメチェンの理由はなんですか?」
「……もう、視えてること、隠さなくていいから……」
「そうですか。それはよかったです」
いつもの微笑みを浮かべて狼くんは、自分の教室に行った。
休み時間になる度にちらほらと私を覗く生徒達。
「美少女がいるって噂になってるよ!」
ビシッと親指を立てるみやちゃんだけれど、私はやめてくれっと思った。
誰だ、そんな噂を流したのは。
癖で前髪を下す仕草をしてしまうけれど、すぐにサイドに退かす。
眼鏡を上げる仕草までしてしまい、時々自滅をしていた。
見ていたみやちゃんは笑う。
お昼休み。お弁当を食べ終えて、お手洗いを済ませて出てくると、白銀くんと目が合った。
彼はフイッと顔を背ける。それだけではなく、回れ右をして離れていく。
やっぱり白銀くんに避けられている?
「あ、あの、白銀くん?」
「っ!」
「ちょっと!?」
白銀くんが走り出したものだから、私は追いかけた。
「廊下は走っちゃだめだよ! 怪我したら危ないから!!」
「じゃあ、追ってくるなよ!!」
「じゃあ、逃げないでよ!」
少しの間、走っていれば、急に白銀くんは止まる。
しゅんと尻尾が項垂れている白銀くんの顔を、後ろから覗いて見た。
すごく浮かない顔をしている。
「どうしたの……?」
白銀くんらしくない。
そう言えば、私が視えるって明かしてから、彼はまともに私と話してくれていないと気付いた。視えていると知って喜んだのは、みやちゃんと狼くんだけ。白銀くんは、ただ距離を置いていた。
「私のせい?」
白銀くんだけは、受け入れられないのか。
無償で受け入れてもらえると、自惚れていた。
仲間に入れてもらえると、自惚れてしまった。
浮かれて、自惚れていたんだ。
「っ」
「ごめん……」
白銀くんはハッとしたように私を見たけれど、私は踵を返す。
「ま、待って!」
そんな私の肩を掴んで、白銀くんは止めた。
「せ……説明するから……」
そういうから、近くにあった空き教室の中に入る。
白銀くんは俯きながら、口を開いた。
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