大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
213 / 474
オーベルシュタイン、二度目の冬

第406話、両親と過ごす冬

しおりを挟む
 夜。
 俺、父上、兄さん、シェリー、ヒュンケル兄の五人で、城下町にある兄さん行きつけのバーにやってきた。
 ミュディはルナマリア義姉さんと留守番……というか、ミュアちゃんがスサノオとエクレールに懐かれ、ネコミミや尻尾をオモチャにされてへとへとになり、夕飯を食べたら寝てしまった。何かあったときのためにとミュディが残り、ルナマリア義姉さんと一緒に姉妹でお話している。 
 バーに入ると、さっそく問題が起きた。
 ウェイターさんが俺たちを席に案内しようとしたのだが、困った表情に。

「リュドガ様、お子様はご一緒で大丈夫でしょうか?」
「え?」

 ウェイターさんの視線を追って振り返ると、そこには。

「みゃあ」
「って、ルミナ!? いつの間に」
「お前だけお出かけ、ずるいぞ」
「いや、これからお酒飲むんだよ……子供は寝る時間だぞ」
「ふん。いいから撫でろ」
「おいおい……」

 ルミナが俺に抱き着いて甘えてくる。仕方ないので撫でるとゴロゴロ鳴いた。
 兄さんは苦笑し、ウェイターに言う。

「すまない。大人しくさせるから一緒でもいいだろうか?」
「は、はい。かしこまりました」

 というわけで、ルミナも連れてバーの個室へ。
 適当に酒を頼み、ルミナには果実水を頼む。
 
「では、乾杯」
「「「「乾杯」」」」
「みゃう」

 酒を飲み、おつまみのナッツを食べた。
 ルミナは俺の隣でドライフルーツを食べている。大人しいので気にしないことにした。
 さっそく、俺は言う。

「さっきも言いましたけど、母上には静養する時間が必要です。父上さえよろしければ、うちの村でお預かりしたいのですが……」
「その件に関しては賛成だ。今のアリューシアなら拒まないだろう。それと……わしも同行しようと考えている」

 これには驚いた。まさか、父上が一緒に行くなんて言うとは思わなかった。
 父上は、リュドガ兄さんに言う。

「リュドガ。エストレイヤ家を任せてもよいな」
「もちろんです。オレは父上から家督を継いだ身……エストレイヤ家はオレに任せて、父上は母上のお傍に」
「ふ……立派になったものよ。ヒュンケル、仕事のことだが」
「そっちは気にしないでください。もともと、アイゼン様は臨時指導教官という立場でしたから……まぁ、一部じゃ現役時代より覇気があり強いとかいわれてますけど」
「そうか、助かる。アシュト、シェリー、よろしく頼むぞ」
「はい、わかりました」
「はーい」

 俺は頷き、シェリーは思いついたように言う。

「ねぇお兄ちゃん。お父さんとお母さんだけどさ、あたしたちの家に住むのもいいけど、どうせなら二人きりの方がよくない? 夫婦の時間も必要だし、世話は銀猫族に任せてさ」
「……それもありだな。あまり大勢だと母上の気が休まらないし」
「お父さんもそれでいい?」
「かまわん。アリューシアと話す時間はたっぷりほしい」
「よし。じゃあ竜騎士に頼んで村に手紙を出そう。住まいの準備をしないとな」

 家は空きが山ほどある。
 俺の家の近くにも、何件か空きがあったはずだ。何かあるかもしれないし、家から近い方がいいだろう。
 父上はワインで喉を潤し、俺に質問した。
 
「アシュト。オーベルシュタインの冬はどんな感じだ?」
「そうですね……雪の量はビッグバロッグ王国とは比べ物にならないくらい多いです。寒さはこちらとあまり変わりませんね。でも、寒いときは浴場がありますので、いつでも温まれますよ。それに、新しくバーも作ったので、少量でしたら母上と一緒に飲むのも悪くないかも」
「ほう……」
「そういや、そんなこと言ってたな。へへ、オレも一緒に行きたいぜ」

 ヒュンケル兄は父上にワインを注ぎ、自分のも注ぐ。
 リュドガ兄さんは苦笑していた。

「それを言うならオレもだ。というか、ルナマリアと子供たちを連れて行くのも悪くないな……」
「ふふ。リュウ兄、スサノオとエクレールも連れて遊びに来てよ。ねぇヒュンケル兄、次のリュウ兄の休暇はいつごろになりそう?」
「そうだなー……冬季遠征も近いし、冬の間は無理っぽいな」
「ちぇー……」

 シェリーは白ワインを飲みながら文句を言う。
 俺はルミナを撫で、キャンディを載せた皿を差し出す。

「ほら、甘いぞ」
「みゃあ……甘い」
「よしよし、ごろごろ」
「ごろごろ……」

 父上はルミナをチラリと見て、俺に言う。

「あー、アシュト。その、聞いてもよいか?」
「はい?」
「……その、子供はまだか?」
「…………え」
「お父さんの変態!!」

 
 シェリーが顔を真っ赤にして怒鳴り、この日の話は終わった。

 ◇◇◇◇◇◇

 緑龍の村に行くことに関して、母上には父上から話すらしい。
 二日ほど様子を見ると、母上の身体は少しだけ回復した。まだ栄養状態があまりよくない。
 緑龍の村に向かうのは三日後にして、移動の準備を終わらせた。
 俺も、久しぶりに自分の部屋に入る。

『ワァー……ココ、アシュトノニオイスル』
「ここ、俺の部屋だからな。久しぶりに読書でもするか」

 母上は、出発までシャヘル先生が診てくれる。
 俺も久しぶりの帰省だし、ゆっくりしてくれと父上に言われた。
 ミュアちゃんはミュディとシェリーに連れられ観光へ。ルミナはシャヘル先生と一緒にのんびりお茶をしているらしい。
 俺はウッドと一緒に自室で読書をしていた。

『アシュト、アシュト。オカーサントイッショニカエルノ?』
「ん、ああ……ウッド、母上のこと、気にしててくれ」
『ワカッタ!』

 ウッドは万歳して跳ねる。
 たぶん。緑龍の村は母上にとって未知の世界だろう。
 今更だが……純粋な貴族令嬢の母上が、緑龍の村の環境に耐えられるかな。
 ウッドが俺の机に飛び乗ってきたので頭を撫でる。

『エヘヘ~……アシュトトフタリキリ、ヒサシブリ!』
「あはは。そういえばそうだな。よし、庭の散歩でもするか?」
『ウン!』

 ま、大丈夫だろう。
 シルメリアさんもいるし、エルミナやローレライ、クララベルもいる。
 父上は浴場を気に入ってたし、村長湯もあるから父上と母上の貸し切りにしてもいい。
 ネガティブな考えはやめて、楽しんでもらえるように頑張ろう。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。