大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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妖狐族の奇病

第437話、妖狐のお礼

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 カエデが帰り、ミュアちゃんたちは悲しんだ。
 それもそうだ。お別れもなしにいきなり帰ったんだからな。カエデの国ではカエデがいきなり消えたことになっているから、急いで帰らなきゃいけないことは知っていたけど。
 でも、悲しむミュアちゃんたちを見るのは辛いな。

「にゃうぅぅ……カエデ、ばいばい言えなかった」
「大丈夫。また来るって言ってたし、すぐに会えるよ」
「わぅぅ……」
「ライラちゃんも、ね?」
「まんどれーいく……」
「あるらうねー……」
「お前たちも、元気出せって」

 薬院には、子供たちが集まっていた。
 子供たちは、カエデにお別れを言えなかった悲しみに包まれていた。
 一緒に寝たり、ご飯を食べたり、遊んだり……カエデが来てから一緒にいたからな。
 俺はミュアちゃんの頭を撫で、ネコミミを揉んだ。

「カエデは、お父さんとお母さんが心配してるから、すぐに帰らなくちゃいけなかったんだ。また来るって言ってたし、カエデを信じてあげよう」
「にゃあ……」
「わぅん……」
「まんどれーいく……」
「あるらうねー……」

 子供たちを慰めると、部屋の隅っこに置いてあるこたつから黒いネコミミがニュッと出てくる。
 ネコミミだけじゃない。白いふわふわもちもちの塊も出てきた。

「ふみゃぁぁ~……よく寝た」
『もきゅぅぅ~~~……もきゅ』

 ルミナとニコニコアザラシの子供だ。ルミナ、ニコニコアザラシの子供を毎日連れてるんだよな。
 まぁモフモフで可愛いからその気持ちはよくわかる。
 ルミナは欠伸をして、俺の元へ。

「みゃう。図書館行くぞ」
「ん、そうだな」
「にゃあ!! ご主人さまはわたしたちと一緒なの!!」
「わぅぅん。お兄ちゃん……」
「ごめんね。ルミナと図書館で勉強する約束だから……」
「にゃふぅ……わかったー」
「おい、行くぞ」
「はいはい。ルミナ、あったかい恰好していけよ」
「みゃあ」

 カエデがいつ来るかわからないけど、今は子供たちの傍にいよう。

 ◇◇◇◇◇◇

 カエデが帰って十日。
 薬院で父上、母上、シェリーとミュディ、ローレライとクララベル、エルミナを誘ってお茶を飲んでいると、ドアが乱暴にノックされた。
 外から入る外来用のドアを開けると、久しぶりの顔があった。

「おいアシュト、なんかやべーぞ!!」
「…………ああ、ブランか。なんか久しぶりだな。どこいたんだ?」
「なんか今思い出したみたいになってやがる!!」

 ブランことブライジング。デーモンオーガのブライジングだ。
 そういや最近、まったく顔を見てなかった。雪合戦や鍋会にも参加してなかったし、俺もすっかり存在を忘れていた……こいつ、どこにいたんだ?

「あのな。里帰りするって言ったじゃねぇか!! オヤジんとこ帰ってゴロゴロしてたら叩き帰されたんだよ!!」
「そ、そうだったのか……」
「帰ってきたら楽しそうなイベント全部終わってるし!!……おかげで鍋会には参加できねぇし、雪合戦でかっこいいところは見せられねぇし……うぅぅ」
「な、泣くなよ……」
「泣いてねぇし!!」

 そうだ。こいつ、バシリスク族の『青山椒組』のところにいる父親のデーモンオーガ、ザオウガさんのところに帰省したんだ。そこでゴロゴロしてたら叩き帰されたとか……真冬、雪で歩きにくくなった地面を掘り進んでようやく緑龍の村に戻ってきたら、雪合戦や鍋会は終わっていたとか……不幸な奴。

「だーっ!! オレのことはいいんだよ!! それよか、村の入口に変なのが来てんだっつうの!! 早く来いって!!」
「わわ、引っ張るなって。コート着ていくから……」

 ブランに引っ張られ、村の入口へ。
 興味本位なのか、父上やミュディたちも付いてきた。
 村の入口には、大勢の人が集まっていた。俺はまずディアーナの元へ。

「ディアーナ、何があったんだ?」
「来客のようです。あちらを……」
「…………なんだありゃ?」

 村の入口へ続く街道に、四角いランプ(行燈というらしい、あとで知った)を持つ、妙な服(狩衣というらしい、あとで知った)を着た人が、街道の両端に並んで道を照らしていた……いや、お昼前でけっこう明るいけど。
 よく見ると、並んでいるのは人じゃない。ピンと立った獣耳、そして全員が五本以上あるモフモフ尻尾を持っていた。
 まさか……妖狐族?
 そう思っていると、ディアーナが言う。
 
「……何か来ましたね」
「あれ、何だろう……箱?」
「どこかで見た覚えが……ああ、思い出しました。あれは『籠』です」
「かご?」

 装飾が施された大きな箱だ。そこに取っ手のような棒が四本付き、四人で籠を運んでいる。
 籠の数は三つ。それとは別に、大きな手押し車を何人かで引いていた。
 ディアーナは気付いた。

「恐らく、先日のカエデ様の件でしょうね。アシュト様、護衛を付けて対応をお願いします」
「ご、護衛って……」
「そうですね……バルギルド様にお願いしましょう。カエデ様を発見したのは、アシュト様とバルギルド様ですしね。セレーネ、バルギルド様を」
「かしこまりました」

 セレーネは、家族で様子を見ていたバルギルドさんを呼んできた。
 竜騎士たちが住人の前に立ち、武器を構えて警戒している。
 フンババを押さえ、俺とバルギルドさんが前へ。籠が止まり、箱の側面が引き戸のように開いて、中から人が出てきた……が、驚いた。

「お初にお目にかかります。あなたがアシュトさんでいらっしゃいますかえ?」
「───あ、は、はい」

 まず最初に出てきたのは……『雪』を『美』の形に固めたような美女だった。
 圧倒される美しさだ。狐耳、九本の尻尾、綺麗な服(十二単というらしい、あとで知った)……なにこの美女? とんでもない存在感だ。
 
「わらわの名はモミジじゃ。娘が世話になったようで」
「い、いえ……その、どうも、あはは」

 俺は曖昧に笑った……情けない。
 すると、もう一つの箱から人が……こっちもヤバい。
 高身長、整いすぎた顔立ち、キツネ耳、九本の尾、着物がヤバいくらいに似合ったイケメンだ。
 なんというか『細い』感じ。別世界の人みたい。

「はじめまして。私はフヨウ……カエデの父です。娘が世話になったようで、お礼に参りました」
「い、いえいえ。そんな、別に……あ、あはは」

 つーか、存在感ありすぎ!! 
 バルギルドさんは何も言わないし、緊張しまくりな俺。
 すると、最後の籠が開き、見知った顔が。

「アシュト殿、お久しぶりです」
「カエデ。よかった、元気そうだな」
「はい。先日はご迷惑をおかけしました。此度、お礼に参った所存でございます」
「そ、そうか」

 硬い……もっと親しみやすさを出してくれればいいのに。
 すると、荷車が俺たちの前に。
 従者の妖狐が荷車の包みを外すと、荷台の上には様々な高級品が載せられていた。

「妖狐の里で作られた物です。どうぞお納めください」
「あ、これはご丁寧に……ありがとうございます」

 カエデが頭を下げたので、俺も下げた。
 というか……息苦しい。もっと親しみやすさが欲しい。
 すると、今度はカエデの母モミジさんが俺に言う。

「娘の件ではお世話になりました。それとは別件なのですが……ちとお願いがございます」
「お願い?」
「ええ。ここではちょっと……」

 これは俺が迂闊だった。
 立ち話もアレだし、お客様を立たせたままじゃ悪い。
 俺はディアーナを見てうなずく。ディアーナも察したのか頷き、セレーネとヘカテーに指示、竜騎士たちにも指示を出し始めた。
 俺の意図が伝わったな。よし。

「では、こちらへ。休める場所へご案内しますので、続きはそちらでしましょう」

 バルギルドさんに護衛を任せ、俺は妖狐たちを来賓邸に案内した。
 久しぶりの他種族……また厄介なことにならないといいけど。
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