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9・勇者たちの会話
魔王城・屋外異空間穴。
ここは、人間界と魔界が繋がる穴がある場所。
魔王の禁術により、魔界への穴は常に開いた状態になっている。
本来なら、魔界への穴は一瞬しか開くことは無い。だが魔王の禁術はその法則を無視し、魔界への道を自由自在に操ることが出来た。
そしてここに、3人の勇者が揃っていた。
「よーし。大型モンスター部隊はそろそろ指定の数が揃うぜ。調教も完璧だ」
「私の陸戦部隊も完璧よ」
「へっへ~。あたしの空戦部隊もね~」
レオン、サテナ、ネプチュンの3人は、魔王バルバロッサの言いつけ通り、魔界から呼び出したモンスターを、それぞれの部隊として調教していた。
レオンは大型モンスター部隊。
ベヒーモスやドラゴンと言った、一匹だけでも超危険なモンスターをいくつも呼び出し、全てレオンの言うことを聞くように調教した。
サテナは陸戦部隊。
こちらは小型から中型のモンスター。
対人性能に特化した、オーガやオークといった力自慢のモンスターたちで固めた部隊だ。
ネプチュンは空戦部隊。
主に、対空モンスターを集めた部隊。
ワイバーンという飛竜に、ガーゴイルという人間に翼が生えたようなモンスターたちである。
「ところで、魔王様は?」
「ウラヌスに禁術を教えてるわ。それにしても魔王様······本来の力の4割しか回復してないのに、あれだけの強さなんてね」
「すっごいよね。これじゃあたしたち······人間たちが勝てるワケないよね」
「だな。へへへ······さっさと人間界を征服して、自分好みの王国を作ろうぜ。あぁ夢が広がる、オレだけのハーレム······」
「貴方ね、リリーシャ様はどうするのよ?」
「もちろんハーレムに加えるぜ。まぁ大勢の内の1人だけどよ」
「うーわ、サイっテ~~」
「そういうお前らはどうなんだよ。言っとくけど、人間界の領土は3分割だからな」
「あれ? ウラヌスは?」
「ああ、あの子は魔王様に心酔してるから。どうやら魔王様の妃になりたいそうよ」
「へぇ。マイトも浮かばれないな。なぁネプチュン」
「まぁね~。確かに魔王様はイケメンで強いし~。あたしも第二婦人狙っちゃおっかな~」
「いいんじゃない? 魔王の妃だなんて、私も憧れるわ······」
3人は楽しそうに会話する。
それぞれの手には、ドス黒く染まった聖なる武具が握られていた。
「なぁ、人間界······ギンガ王国は、どう出てくる?」
「聖なる武具がない以上、力押ししか手段はないわ。人間界最強の私達がここに居る以上、もう手段が残されていないはずね」
「ふ~ん。じゃあ仕方ないよね」
「だな」
「そうね」
レオンたちは、仕方ないと納得した。
3人で顔を見合わせ、それぞれ苦笑する。
「ま、人間なんてたくさん居るんだ。少しくらい間引きしてもいいだろ」
「ええ。生き残り、優れた人間だけを生かして王国を作る」
「えへへ、あたしの王国は~、お菓子の王国かな。人間界中のパティシエを集めて、毎日パーティーするの‼」
「うっげぇ、吐きそう」
「太るわよ?」
「う、うっさいな。そういうサテナは何よ‼」
「私? 私は戦士の国ね。強い戦士を集めて、毎日武闘会を開くの。そして優勝者と私が一騎打ちして、私を倒した戦士を旦那にするの」
「······お前、ネプチュンと大差ないぞ?」
悪意のない会話。
勇者たちの望む王国は、間違いなく破綻する。
勇者3人は、気が付いていない。
この3人は、もはや勇者ではない。
目的のためなら、殺人すら厭わないだろう。
命が掛かった状況で、3人の精神のタガは外れていた。
********************
地下の空間に、小さな穴が空いていた。
「やはりな。お前には素質がある」
魔王バルバロッサの一言。
魔王城地下にて、ウラヌスに禁術を伝授していた。
「あ、ありがとう······ございます、はぁ······」
「うむ。今日はここまでだ」
ウラヌスは汗びっしょりになりながら、息を整える。
禁術である空間魔術を使い、魔力を使い果たしたのだ。
「このまま鍛錬を続ければ、魔界への道も開けるだろう。現状ではその武具がなければ発動すら出来んが……まぁ、問題ない」
「はい‼」
花のような笑顔で、ウラヌスは返事をした。
「さてウラヌスよ。今夜も我の寝室へ来い」
「は、はい」
恥じらいながらウラヌスは言う。
すでに何度も愛されてるが、未だに照れる。
「ふ、おかしな娘だ。人間界に未練は無いのか?」
「全くありません。私の命と心は、魔王様の物です」
「そうか」
魔王と戦い、格の違いを知った。
気が付くと武器を捨て、魔王に跪いていた。
肩を抱かれ名前を呼ばれた瞬間、理解した。
「私の全ては、魔王様の物です」
マイトを殺すことに、躊躇いを感じなかった。
全ては魔王のため。
ウラヌスは魔王に酔いしれていた。
********************
魔王城・謁見の間。
ここに、4人の勇者が魔王に跪いていた。
「順調だな······」
人間界進行の準備は、間違いなく進んでる。
「モンスター部隊はもうすぐ規定数に到達します」
「調教も完璧、手足のように操れます」
「あたしたちも頑張りま~す」
魔王に跪く4人は、昔からの忠臣のような振る舞いだった。
人間を思う気持ちはもはや無い。
「ウラヌスよ。我は力の回復に務める故、魔界の穴を開く作業はお前に任せる」
「はい。誠心誠意、務めさせていただきます」
魔王は立ち上がり寝室へ向かう。
「ウラヌス。来い」
「はい‼」
その返事は、歓喜に染まっていた。
これから魔王の寵愛を受けるのだ。
全ては順調、だからこそ危険なのだ。
「············ん?」
魔王の視線は、謁見の間の隅に注がれる。
そこは、かつてウラヌスがマイトを吹き飛ばした場所。
魔王の魔力により、壁は完全に修復されている。
「············これ、は」
魔王の視線の先には、見落としても仕方のないゴミが落ちていた。
「魔王様?」
ウラヌスの呼び声にも反応しない。
部屋の隅を見たまま、魔王は硬直していた。
そこに落ちていたのは、真っ赤な文鳥の羽だった。
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