追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
56 / 109
第六章

ゴブリン、コボルト、オーク

しおりを挟む
 ゴブリンの集落。
 集落というか、ただ集まっただけのゴブリンたち。
 ゴブリンにはメスがいない。なので、人間の女性を攫い種付けして繁殖する……クソおぞましい。なので、ゴブリンが集まる場所は、自然と集落や村の近くになる。
 俺たちは、早朝から王都郊外の小さな村の傍にある森に来ていた。

「作戦は、ダンジョンと同じよ」
「俺、レノが前衛、中衛にアピア、後衛にサリオ、レイだな」
「ええ。あたしはいろいろ動くけど、基本的にこの陣形ね……レノ、大丈夫?」
「ああ、平気だぜ」

 レノは拳をパシッと打ち付けた。
 早朝なら、見張り以外のゴブリンは寝ている。奇襲するにはうってつけだ。
 ゴブリンの集落から百メートルほど離れた場所で俺たちは待機している。
 すると、アピアが挙手。

「あの、これから襲撃ですよね?」
「そうよ」
「でしたら……私が先陣を切ってもよろしいでしょうか?」
「アピアが? 何か考えでも?」
「はい。奇襲というか……少し、数を減らそうと思いまして」

 アピアは、背負っていたスナイパーライフルモデルの魔導銃を構える。

「最大射程は800メートルほど。サイレンサーを付けて発砲音を消せば、遠距離狙撃が可能です。リュウキくん、レノくん、私が合図したら、突入を」

 レイを見ると、頷いた。
 俺はアピアに言う。

「わかった。絶対に無理するなよ」
「はい。では……」

 アピアは、近くに生えていた大きな木に登り、狙撃銃を構える。
 プシュ、プシュと何度か音が聞こえ、アピアは言う。

「リュウキくん、レノくん、お願いします!」
「「了解!」」

 俺とレノは、ゴブリンの集落に向かって走り出す。
 俺は闘気精製した。

「『闘気精製ドラゴンスフィア』───『太陽剣サンビトレイヤー』」
「お、剣か」
「ああ。ゴブリン、汚いし触りたくないからな」
「おま、拳が主体のオレにそれ言うか?」

 軽口を叩きつつ、ゴブリンの集落へ踏み込んだ。
 おお、入口と村の周囲に、十体ほどのゴブリンが眉間を撃ちぬかれている。
 残りは七体ほど。

「っしゃぁ!!」
「よし、行くぞ!!」

 レノは拳を叩きつけ、俺は黄金の剣を振りゴブリンに向けて走り出した。

 ◇◇◇◇◇

 コボルト。
 オオボルトを経験した俺たちにとって、少し物足りない相手だ。

「『アクアエッジ』!!」
「だらぁっしゃ!!」

 アピアの水魔法が飛び、腕力強化したレノのショートアッパーがコボルトの顎を砕く。
 そして、レイの雷魔法。

「『サンダーブレード』!!」

 こっちは雷の刃か。
 レベルはまだ1なので規模が小さい。そしてサリオは、死んだコボルトの傷を治すことで回復魔法のレベルを上げていた。はっきり言って、この程度の魔獣に苦戦することはない。
 俺も、闘気で作った槍を振り回していた。

「槍技、『奉天撃』!!」

 急所を狙って一突き。
 レノは「おお」と驚きつつ言う。

「お前、武器なら何でもいけんのか?」
「剣、ナイフ、双剣、槍、鎖、格闘技……使えそうな武器は一通り。俺を指導した武器の先生たちの方針で、いろいろやらされたよ」

 神童と言われていたころは期待されてたからな。
 イザベラが来る前。俺はありとあらゆる武器、体技を学んだ。イザベラが来て魔力を失ってからも、俺を気に入っていた師匠たちは無償で教えてくれたけどな……全員、イザベラが手を回して来なくなったけど。

「この程度じゃ、まだ使わなくていいな」
「あ?」
「いや、こっちの話。まぁ……みんなには見せておきたいけど」
「?」

 レノは首を傾げた。
 みんなに見せたいもの。それは……俺の『龍人変身』した姿だ。

 ◇◇◇◇◇

 最後は、オーク。
 二足歩行の豚魔獣だ。
 王都から地方都市に繋がる街道沿いの森に住みつき、商人の馬車などを襲うらしい。
 数は二十ほど。それほど脅威ではない。
 俺たちは、お昼のサンドイッチを食べながら向かっていた。

「ん~うめぇ!! いい汗掻いた後は飯が美味いぜ!!」
「わかる。しかもこのサンドイッチ、味濃くて最高だ!!」

 レノとハイタッチする俺。
 すると、サンドイッチをもぐもぐ食べながらサリオが言う。

「みんな、スキルレベル上がった? ぼく、レベルが1上がって、アンチドーテ……えっと、解毒の魔法を覚えたんだ」
「オレもレベル上がったぜ。腕力強化の持続時間が増えた」
「私も、水魔法のレベルが上がって新しい技を覚えました!」
「あたしも雷魔法レベルが上がった。なんだ、みんな上がってるじゃない。リュウキは?」
「あー……」

 スキルイーター、いちおうレベル2。
 これ、食わないとレベル上がらないんだよな。まだみんなに見せてない。
 
「リュウキ、スキルイーターだっけ? レアかエピックか知らねぇけど、使えないスキルなら外して新しいスキル付けた方がいいと思うぞ」
「いや、使えるんだけど……」
「使えるの? どんなスキル?」
「……食う」
「「「「え?」」」」

 い、言いにくい。
 まさか『右手でスキルを持った魔獣、人間、ドラゴンを食えばそのスキルを宿せるんだ。今はドラゴン二体のスキルというか闘気を宿してるよ!』なんて言って信じてもらえるかな。
 すると、レイが言う。

「あんた、何か隠してるでしょ」
「隠してると言うか……」
「まったく。プライベートなことはともかく、技能に関しての秘密はナシよ。あんたが隠しているのはどうせ闘気のことだろうけど、使えるならちゃんと使って、どんな力か教えてよ」
「リュウキくん。私たちは、あなたがどんな力を持っていても大丈夫です」

 レイとアピアが言う。
 するとレノが「モテるねぇ」と言い、サリオが「やめなよ」と小突いた。
 いずれ言わなきゃいけないのは違いない。
 それに……他のドラゴンが襲って来る時、みんながそばにいる可能性も高い。
 そう思っていると───。

『ぐぉるるる……』
「お、出やがったぜ」

 街道沿いの藪から、オークが飛び出してきた。
 数は三体。さっそくみんなが戦闘態勢を取るが。

「みんな、ここは俺に任せてくれないか?」
「「「「え……」」」」
「みんなに、俺の力を見てもらいたい」

 俺は前に出て、両手を交差して呟いた。

「『龍人変身ドラゴライズ』」

 両腕が黄金の鱗に包まれ巨大化し、頭にツノが生え、片目が赤と黄金に染まり、髪が金色に変わる。
 いつかの暴走とは違う、俺自身で制御する『四分の一クォーター』スタイル。

「りゅ、リュウキ……だ、大丈夫なの?」
「ああ。完全に制御できる。ドラゴンの力、これが俺の新しい姿だ」
「すっげ……」
「か、かっこいい……」
「リュウキくん、綺麗……」

 各々の感想をもらい、俺は拳を構えた。

「さぁ───ここからは、俺と遊ぼうぜ」
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...