追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第六章

ゴブリン、コボルト、オーク

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 ゴブリンの集落。
 集落というか、ただ集まっただけのゴブリンたち。
 ゴブリンにはメスがいない。なので、人間の女性を攫い種付けして繁殖する……クソおぞましい。なので、ゴブリンが集まる場所は、自然と集落や村の近くになる。
 俺たちは、早朝から王都郊外の小さな村の傍にある森に来ていた。

「作戦は、ダンジョンと同じよ」
「俺、レノが前衛、中衛にアピア、後衛にサリオ、レイだな」
「ええ。あたしはいろいろ動くけど、基本的にこの陣形ね……レノ、大丈夫?」
「ああ、平気だぜ」

 レノは拳をパシッと打ち付けた。
 早朝なら、見張り以外のゴブリンは寝ている。奇襲するにはうってつけだ。
 ゴブリンの集落から百メートルほど離れた場所で俺たちは待機している。
 すると、アピアが挙手。

「あの、これから襲撃ですよね?」
「そうよ」
「でしたら……私が先陣を切ってもよろしいでしょうか?」
「アピアが? 何か考えでも?」
「はい。奇襲というか……少し、数を減らそうと思いまして」

 アピアは、背負っていたスナイパーライフルモデルの魔導銃を構える。

「最大射程は800メートルほど。サイレンサーを付けて発砲音を消せば、遠距離狙撃が可能です。リュウキくん、レノくん、私が合図したら、突入を」

 レイを見ると、頷いた。
 俺はアピアに言う。

「わかった。絶対に無理するなよ」
「はい。では……」

 アピアは、近くに生えていた大きな木に登り、狙撃銃を構える。
 プシュ、プシュと何度か音が聞こえ、アピアは言う。

「リュウキくん、レノくん、お願いします!」
「「了解!」」

 俺とレノは、ゴブリンの集落に向かって走り出す。
 俺は闘気精製した。

「『闘気精製ドラゴンスフィア』───『太陽剣サンビトレイヤー』」
「お、剣か」
「ああ。ゴブリン、汚いし触りたくないからな」
「おま、拳が主体のオレにそれ言うか?」

 軽口を叩きつつ、ゴブリンの集落へ踏み込んだ。
 おお、入口と村の周囲に、十体ほどのゴブリンが眉間を撃ちぬかれている。
 残りは七体ほど。

「っしゃぁ!!」
「よし、行くぞ!!」

 レノは拳を叩きつけ、俺は黄金の剣を振りゴブリンに向けて走り出した。

 ◇◇◇◇◇

 コボルト。
 オオボルトを経験した俺たちにとって、少し物足りない相手だ。

「『アクアエッジ』!!」
「だらぁっしゃ!!」

 アピアの水魔法が飛び、腕力強化したレノのショートアッパーがコボルトの顎を砕く。
 そして、レイの雷魔法。

「『サンダーブレード』!!」

 こっちは雷の刃か。
 レベルはまだ1なので規模が小さい。そしてサリオは、死んだコボルトの傷を治すことで回復魔法のレベルを上げていた。はっきり言って、この程度の魔獣に苦戦することはない。
 俺も、闘気で作った槍を振り回していた。

「槍技、『奉天撃』!!」

 急所を狙って一突き。
 レノは「おお」と驚きつつ言う。

「お前、武器なら何でもいけんのか?」
「剣、ナイフ、双剣、槍、鎖、格闘技……使えそうな武器は一通り。俺を指導した武器の先生たちの方針で、いろいろやらされたよ」

 神童と言われていたころは期待されてたからな。
 イザベラが来る前。俺はありとあらゆる武器、体技を学んだ。イザベラが来て魔力を失ってからも、俺を気に入っていた師匠たちは無償で教えてくれたけどな……全員、イザベラが手を回して来なくなったけど。

「この程度じゃ、まだ使わなくていいな」
「あ?」
「いや、こっちの話。まぁ……みんなには見せておきたいけど」
「?」

 レノは首を傾げた。
 みんなに見せたいもの。それは……俺の『龍人変身』した姿だ。

 ◇◇◇◇◇

 最後は、オーク。
 二足歩行の豚魔獣だ。
 王都から地方都市に繋がる街道沿いの森に住みつき、商人の馬車などを襲うらしい。
 数は二十ほど。それほど脅威ではない。
 俺たちは、お昼のサンドイッチを食べながら向かっていた。

「ん~うめぇ!! いい汗掻いた後は飯が美味いぜ!!」
「わかる。しかもこのサンドイッチ、味濃くて最高だ!!」

 レノとハイタッチする俺。
 すると、サンドイッチをもぐもぐ食べながらサリオが言う。

「みんな、スキルレベル上がった? ぼく、レベルが1上がって、アンチドーテ……えっと、解毒の魔法を覚えたんだ」
「オレもレベル上がったぜ。腕力強化の持続時間が増えた」
「私も、水魔法のレベルが上がって新しい技を覚えました!」
「あたしも雷魔法レベルが上がった。なんだ、みんな上がってるじゃない。リュウキは?」
「あー……」

 スキルイーター、いちおうレベル2。
 これ、食わないとレベル上がらないんだよな。まだみんなに見せてない。
 
「リュウキ、スキルイーターだっけ? レアかエピックか知らねぇけど、使えないスキルなら外して新しいスキル付けた方がいいと思うぞ」
「いや、使えるんだけど……」
「使えるの? どんなスキル?」
「……食う」
「「「「え?」」」」

 い、言いにくい。
 まさか『右手でスキルを持った魔獣、人間、ドラゴンを食えばそのスキルを宿せるんだ。今はドラゴン二体のスキルというか闘気を宿してるよ!』なんて言って信じてもらえるかな。
 すると、レイが言う。

「あんた、何か隠してるでしょ」
「隠してると言うか……」
「まったく。プライベートなことはともかく、技能に関しての秘密はナシよ。あんたが隠しているのはどうせ闘気のことだろうけど、使えるならちゃんと使って、どんな力か教えてよ」
「リュウキくん。私たちは、あなたがどんな力を持っていても大丈夫です」

 レイとアピアが言う。
 するとレノが「モテるねぇ」と言い、サリオが「やめなよ」と小突いた。
 いずれ言わなきゃいけないのは違いない。
 それに……他のドラゴンが襲って来る時、みんながそばにいる可能性も高い。
 そう思っていると───。

『ぐぉるるる……』
「お、出やがったぜ」

 街道沿いの藪から、オークが飛び出してきた。
 数は三体。さっそくみんなが戦闘態勢を取るが。

「みんな、ここは俺に任せてくれないか?」
「「「「え……」」」」
「みんなに、俺の力を見てもらいたい」

 俺は前に出て、両手を交差して呟いた。

「『龍人変身ドラゴライズ』」

 両腕が黄金の鱗に包まれ巨大化し、頭にツノが生え、片目が赤と黄金に染まり、髪が金色に変わる。
 いつかの暴走とは違う、俺自身で制御する『四分の一クォーター』スタイル。

「りゅ、リュウキ……だ、大丈夫なの?」
「ああ。完全に制御できる。ドラゴンの力、これが俺の新しい姿だ」
「すっげ……」
「か、かっこいい……」
「リュウキくん、綺麗……」

 各々の感想をもらい、俺は拳を構えた。

「さぁ───ここからは、俺と遊ぼうぜ」
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