追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第七章

双頭龍ティアマット

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 俺は真正面から双頭龍と対峙する。
 とんでもない大きさだ。ウミヘビとマムシの頭に、長さは数キロほど、俺が千人いてもあっさり丸呑みできるだろう。
 エキドナ、テュポーンの真の姿は、一体の双頭龍。
 どうやって戦えばいいのか、見当もつかない。
 すると、ウミヘビ側……エキドナが喋った。

『私たちはねぇ……本来は「観客・主催者」なの。弄び、楽しみ、嗤う……自分たちで手を下すことはない。でも、でも、でも……お前は、その線を踏み越えた!!』
『そういうことだ。真の姿を見せるなんて数千年ぶりだ。なぁエキドナ、久しぶりに「真の名」で戦おうぜ』
『そうね……お聞きなさい、クソ人間。我らの真の名はティアマット。双頭龍ティアマットよ!!』
「ふん、だからなんだよ。俺は、お前らなんかに負けるつもりないからな!!」

 黄金の闘気を漲らせ、スキルイーターをセットする。

「スキルイーター、セット!! 『嵐龍闘気』!!」

 ファフニールとかいうドラゴンの闘気。属性は『嵐』だ。
 風属性の上位で、風ではなく暴風を巻き起こす。
 俺は周囲にいくつもの『竜巻』を起こし、エキドナの頭に向かって特攻した。

「まずは、お前からだ!!」
『フン!! シュゥゥゥ───……ブワァァァァァッ!!』
「っ!!」

 エキドナは、口から放水した。
 鉄砲水なんてもんじゃない。喰らったら飲み込まれる、やばい。
 

「───……っっあぶねっ!?」
『フン……オレも忘れるなよ?』
「!!」

 そして、テュポーンの口が開き、小さな紫色の粒が大量に発射された。

「ど、『闘気精製ドラゴンスフィア』───〝黄金盾ゴルシルド〟!!」

 黄金の盾が粒を受ける……が、一発目を喰らっただけで盾に亀裂が入る。俺は闘気を加えて盾を修復するが、それだけで動けなくなってしまった。
 そして、エキドナの放水……先ほどと同じ威力の水砲が盾に直撃、盾は砕け俺は吹っ飛ばされた。

「ぐ、アァァァァ!?」

 地面に激突。鱗のおかげでダメージはあまりないが、今のままじゃ近づくことすらできない。
 
「まずいな。倒すどころか……このままじゃ、ジリ貧だ」

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ボロボロになった宮殿内を、レイたちは走っていた。
 アキューレを探しつつ、レノは叫ぶ。

「なぁ!! リュウキのやつ、大丈夫なのか!?」
「知らないわよ!! とにかく、今はアキューレを探さないと!!」
「くんくん……あっちに、森っぽい匂いする」
「も、森ですか?」

 くんくん匂いを嗅ぐリンドブルムに、アピアが首を傾げる。
 とりあえず、リンドブルムを先頭に進む。
 十字路を通り、その先の部屋に入る。

「な、なんじゃこりゃ……も、森?」

 そこは、森だった。
 枝や蔦に絡みつかれ、身動きのできない人間が大勢いた。中にはキルトやプリメラ、チーム『アークライト』の面々がいる。

「これ、わたしの力。そっか、リュウキがやったんだ」
「た、助けなくて……い、いいの?」

 サリオがおずおず聞く。リュウキがこれをやったということは、間違いなくキルトたちは何かをやらかし、こうして拘束されている。助ければ厄介なことになるだろう。
 レイは考えこみ、周囲を見渡す。

「見て、あそこにドアがある。ここはこのまま放置するわ」
「い、いいの?」
「ええ。あたしたちの目的はアキューレ。その後は……リュウキを連れて、逃げるわよ」
「無理だよ。お兄さま、お姉さまからは逃げられない」

 リンドブルムが断言する。
 レイは歯を食いしばり、リンドブルムを睨む。

「あんた、ドラゴンなんでしょ? あの馬鹿でかいヘビ、なんとかできないの!?」
「無理。わたし……兄妹でいちばん弱い。今のリュウキよりも弱い」
「……ごめん」

 レイは言いすぎたと感じたのか、素直に謝った。
 すると、アピアが銃を抜いた。

「待ってください。誰かが、こっちに来ます……!!」

 アピアが銃を向けるとの、ドアが開くのは同時だった。
 そこにいたのは、気を失ったアキューレを抱えたイザベラだった。

「ふ、ふふ……まだ、まだチャンスはあるようね」
「アキューレ!! あんた、その子を離しなさい!!」

 レイが双剣を抜き、サリオが杖を、アピアが銃の安全装置を外し、レノが指をぺきぺき鳴らす。
 だが、イザベラがアキューレの首を片手で掴み、持ち上げた。
 外見は十代後半にしか見えないのに、恐るべき力だった。

「首、へし折るわよ?」
「「「「っ!!」」」」

 もちろん───……イザベラがそんなことをするはずがない。そもそも、アキューレはエキドナの大事な『オモチャ』なのだ。壊したりすれば、自分が『喰われる』だろう。
 だが、脅しは効果的だった。

「武器を捨てなさい。そして、このうっとおしい樹から、キルトたちを助けなさい」
「くっ……あんた、何者よ。一体」
「時間稼ぎは無駄。ふふ……エキドナ様たちのほん「えい」

 次の瞬間、アキューレを掴んでいたイザベラの腕が、肘から綺麗に切断された。
 リンドブルムが、手刀で落としたのだ。
 ボトリと落ちる腕、崩れ落ちるアキューレをリンドブルムは抱える。

「え」
「「「「え」」」」
「この子、助けるんでしょ?」

 そして───イザベラが青くなり、ぶわっと冷や汗を流し、肘の断面から血が噴き出した。

「い、ッギャァァァァァ!? ううう、腕ァァァァァァァァァァ!!」
 
 イザベラの絶叫をリンドブルムは無視。アキューレを抱え、スタスタ戻ってきた。
 
「これで終わり? あとは、リュウキだけだね」
「え、ええ」
「……な、サリオ。この子マジでやばいな」
「う、うん。一番弱いとか絶対噓だよね……」
「すごい。さすがリンドブルム様!!」

 アピアだけは感激していた。真龍聖教の信者なだけある。
 レイはため息を吐き、剣に雷魔法を付与。身体強化を使い絶叫するイザベラへ接近し、そのまま頭をガツンと殴り気絶させた。そして、腕の止血をして荷物からロープを出し、イザベラを拘束する。

「おい、そいつどうすんだよ」
「とりあえずね。ギガントマキアの構成員なのは間違いないでしょうし、法の裁きで断罪するわ」
「……でも」

 サリオは俯く。
 アピアは、両手を組んで静かに言った。

「あとは───……リュウキくんに、お任せしましょう」
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