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第八章
漆黒のドラゴン
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ロストワン帝国から、少し離れた森の中。
ここに、身体を横たえた大きな漆黒のドラゴンが眠っていた。
正確には寝ているのではない。夢うつつ、眼を空けたり閉じたりして、寝ぼけている。
ドラゴンは、ボソボソと言った。
『クソ……ハクリュウめ、面倒な……こと、を』
ハクリュウの『酔夢の呪い』が効いているせいで、なかなか頭が働かない。
さらに、力の一部を制限された状態だ。
その呪いは、体内で分解されつつある。漆黒のドラゴンこと『バハムート』は首をブンブン振り、首を持ち上げ大きな欠伸をした。
『フガァァァァァ……!! ああ、なんとかいけるな。よし……』
バハムートは、ドラゴン形態から人間の姿へ変身する。
漆黒の鎧、漆黒の大剣を背負い、長くボサボサな黒髪、無精ひげを生やした二十代半ばの男性へ。目だけが赤い、暗黒騎士のような姿へ変身した。
バハムートは、首をゴキゴキ鳴らす。
「ようやく呪いが消えた。力も解放できる……よし」
「あーあ。復活したのね、兄さん」
「…………ハクリュウ、てめぇ」
現れたのは、ハクリュウだった。
バハムートと正反対の、白い美女。
ややめんどくさそうにため息を吐き、頬に手を当てた。
「兄さん、やっぱりお父さんの継承者と戦うの?」
「てめぇ……オレに面倒な呪いをかけておいて、最初に出る言葉がそれか?」
「仕方ないでしょう? お父さんが死んで悲しんでる兄さんが、人間たちの国に八つ当たりでもしたら大変だもの」
「誰が悲しんだ誰が!! オレは親父が老衰で死んだことに腹立ててんだ!! 死ぬならオレにやられて死ね!!」
「はいはい。お父さんのこと大好きだから、弱いところを見たくなかったのよね」
「ちっげーし!! てめぇ勝手なことばっか言ってんじゃねぇ!!」
キレるバハムート。
バハムートは「フン」と鼻息を荒くし、ハクリュウに聞く。
「おい、親父の後継者はどこだ?」
「クロスガルド中欧諸国。学園に通ってる子供よ」
「ガキだぁ?」
「ええ。でも、スヴァローグも、テュポーンもエキドナもやられた。リンドブルムがすごく懐いてるわ」
「ほぉ、雑魚とはいえ、あいつら始末したのか。やるじゃねぇか」
「そうね」
「ところで、アンフィスバエナは? ファフニールもやられたのか?」
「アンフィスバエナは傍観、ファフニールは不明。まぁ案外、人間として楽しく生活してるんじゃないかしら」
「けっ……まぁいい」
「あ、兄さん待った。戦うなら、リュウキが完全に力を制御できるようになったらにして」
「……はぁ?」
「そっちの方が、兄さんも楽しめるわ。今、あの子はきっと、お父さんの力を使いこなすために頑張ってると思うの。邪魔しないであげて」
「……そっちのが、面白くなるんだな?」
「ええ。間違いなく」
「まぁいい。じゃあ、メシ食いに行くぞ」
「いいけど、ロストワン帝国は消えたから、近くの国まで行くわよ」
「はぁ? 消えただぁ?」
「あなたがやったんでしょ……この、寝坊助さん」
二人は並んで歩きだし、近くに国へ向かった。
これが、バハムート。
スヴァローグのように傍若無人ではなく、エキドナとテュポーンのように人間で遊ぶわけでもない。
ただ、強者が好きなドラゴン。
父を超えることを目標にしているだけの、ドラゴンである。
「おい、どのくらい待てばいい?」
「そうねぇ……わかんないわ」
「あぁ? まぁいい。メシ食ったら会いに行くぞ」
現最強の『黒天覇龍』バハムートが、ついに動き出した。
ここに、身体を横たえた大きな漆黒のドラゴンが眠っていた。
正確には寝ているのではない。夢うつつ、眼を空けたり閉じたりして、寝ぼけている。
ドラゴンは、ボソボソと言った。
『クソ……ハクリュウめ、面倒な……こと、を』
ハクリュウの『酔夢の呪い』が効いているせいで、なかなか頭が働かない。
さらに、力の一部を制限された状態だ。
その呪いは、体内で分解されつつある。漆黒のドラゴンこと『バハムート』は首をブンブン振り、首を持ち上げ大きな欠伸をした。
『フガァァァァァ……!! ああ、なんとかいけるな。よし……』
バハムートは、ドラゴン形態から人間の姿へ変身する。
漆黒の鎧、漆黒の大剣を背負い、長くボサボサな黒髪、無精ひげを生やした二十代半ばの男性へ。目だけが赤い、暗黒騎士のような姿へ変身した。
バハムートは、首をゴキゴキ鳴らす。
「ようやく呪いが消えた。力も解放できる……よし」
「あーあ。復活したのね、兄さん」
「…………ハクリュウ、てめぇ」
現れたのは、ハクリュウだった。
バハムートと正反対の、白い美女。
ややめんどくさそうにため息を吐き、頬に手を当てた。
「兄さん、やっぱりお父さんの継承者と戦うの?」
「てめぇ……オレに面倒な呪いをかけておいて、最初に出る言葉がそれか?」
「仕方ないでしょう? お父さんが死んで悲しんでる兄さんが、人間たちの国に八つ当たりでもしたら大変だもの」
「誰が悲しんだ誰が!! オレは親父が老衰で死んだことに腹立ててんだ!! 死ぬならオレにやられて死ね!!」
「はいはい。お父さんのこと大好きだから、弱いところを見たくなかったのよね」
「ちっげーし!! てめぇ勝手なことばっか言ってんじゃねぇ!!」
キレるバハムート。
バハムートは「フン」と鼻息を荒くし、ハクリュウに聞く。
「おい、親父の後継者はどこだ?」
「クロスガルド中欧諸国。学園に通ってる子供よ」
「ガキだぁ?」
「ええ。でも、スヴァローグも、テュポーンもエキドナもやられた。リンドブルムがすごく懐いてるわ」
「ほぉ、雑魚とはいえ、あいつら始末したのか。やるじゃねぇか」
「そうね」
「ところで、アンフィスバエナは? ファフニールもやられたのか?」
「アンフィスバエナは傍観、ファフニールは不明。まぁ案外、人間として楽しく生活してるんじゃないかしら」
「けっ……まぁいい」
「あ、兄さん待った。戦うなら、リュウキが完全に力を制御できるようになったらにして」
「……はぁ?」
「そっちの方が、兄さんも楽しめるわ。今、あの子はきっと、お父さんの力を使いこなすために頑張ってると思うの。邪魔しないであげて」
「……そっちのが、面白くなるんだな?」
「ええ。間違いなく」
「まぁいい。じゃあ、メシ食いに行くぞ」
「いいけど、ロストワン帝国は消えたから、近くの国まで行くわよ」
「はぁ? 消えただぁ?」
「あなたがやったんでしょ……この、寝坊助さん」
二人は並んで歩きだし、近くに国へ向かった。
これが、バハムート。
スヴァローグのように傍若無人ではなく、エキドナとテュポーンのように人間で遊ぶわけでもない。
ただ、強者が好きなドラゴン。
父を超えることを目標にしているだけの、ドラゴンである。
「おい、どのくらい待てばいい?」
「そうねぇ……わかんないわ」
「あぁ? まぁいい。メシ食ったら会いに行くぞ」
現最強の『黒天覇龍』バハムートが、ついに動き出した。
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