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七大魔将『滅龍』カジャクト②/互いの誇り

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 カジャクトの猛攻。
 俺は『大開眼』状態で躱しつつ、的確に『閃牙』を刻む。
 だが……驚いたことに、『冥狼斬月』でもカジャクトの肌を傷付けることができない。どんな名刀にも負けないと思っていただけに、かなりショックだ。
 
「『撃震竜拳げきしんりゅうけん』!!」
「ッ!!」

 カジャクトの強さが上がっていく。
 竜人……刻まれたドラゴンの力を開放することで強さを増す種族。解放段階は四段階あり、一段階開放で才能あり、二段階で竜族の強者、三段階でカジャクトの側近レベル、そして四段階……最終段階に到達したのはカジャクトだけ。
 さらに、カジャクトは竜族の力だけじゃなく、七大魔将として内に眠る力を持つ。
 間違いなく、魔王を除けば最強。
 俺は、そんな奴と戦っている。

「ラスティスぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 俺はルプスレクスの鎧を纏い、カジャクトの連撃を躱していた。
 強く、速い。
 俺の眼でも躱し続けるのは至難、というか途中で体力が尽きる。
 長期戦は不利。でも……俺はやめられない。

「くそ、たまんねぇな……!!」

 互いが全力を出し、己を高め合う瞬間。
 いくつになっても関係ない。ゾクゾクする瞬間がたまらない。
 カジャクトも同じなのか、笑っていた。

「竜族だけじゃない、あたしの全力を受け止めろォォォォォォォ!!」

 すると、カジャクトの背中に生えていた翼が淡く輝きだす。
 それは光翼……肌に亀裂が入り、カジャクトの全身を青い血管のようなラインが走る。
 
「来たか───『完全獣化オーバービースト』!!」

 肌の色が変わり、髪が伸び、鱗に包まれていた皮膚が人のモノに戻る。
 だが、目の色が変わり、ツノが伸び、背中から生える光の翼が、これまでとは次元の違うカジャクトであると思い知らされた。
 カジャクトは言う。

「『竜化』と『完全獣化オーバービースト』……異なる二体、あたしに宿る二匹の暴龍を屈服させ、完全に手懐けた、あたしだけの姿」

 ぶるりと震えた。
 ルプスレクスですら震えたように見えた。

「ルプスレクス。あんたに負けたことで手に入れた力。あたしは求めた……力を、強さを。今のあたしは魔王様よりも強い!!」

 翼を広げるだけで、その圧力が周囲を押しつぶす。
 実際に、広げた余波だけで岩が砕け、地面に亀裂が入り、サティたちも吹っ飛んでしまう。
 ルプスレクス以上……はっきり言う、勝ち目が消えた。

「『完全竜王化オーバードラゴンライズ』……あたし、『滅龍』カジャクトの最終形態!! ラスティス・ギルハドレッド、そしてルプスレクス!! 命を、誇りを、全てを賭けてかかってくるといい!!」

 その叫びは、魂の叫び。
 これに応えなければ、男じゃねぇな!!

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 吹っ飛ばされたサティたちだが、スレッドが『糸』をサティたちの腕に絡ませ一気に引き寄せる。
 スレッドが、集まったサティたちを見て言う。

「怪我ねぇか? ったく、なんつーバケモンだよあれは!!」

 スレッドは、距離が離れてしまったラスティス、そしてカジャクトに視線を向ける。
 フルーレはカジャクトに視線を向け、舌打ちをする。

「魔王以上、というのも納得できるわね……私も強くなったから理解できる。アレはもう、個人でどうこうできる相手じゃない。七大剣聖を結集……ううん、国家レベルの武力が必要になる。団長、ランスロットに連絡した方がいいわ」

 フルーレはロシエルに向けて言うと、ロシエルも同意見なのか頷く。
 今のラスティスでも勝てない。でも、時間稼ぎはできる。
 なら、その間に……そう思っていると。

「……フルーレさん。少し、思ったんですが」
「何、エミネム」
「その、ラスティス様にはないのですか? 神器と、臨解」
「……そういえば」

 以前、聞いたことがあるが……その時は適当にはぐらかされた。
 サティやエミネムが『神器』と『臨解』を発動させたのだ。師であるラスティスが持っていないわけがない。
 すると、ウェルシュたち滅龍四天王が近付いてきた。
 警戒するフルーレだが、ウェルシュが言う。

「姐さんがああなったら、この辺一帯は更地になるわ。もっと離れるわよ」
「……どういうつもり。あなた、敵じゃないの?」

 サティたちは疲労している。今、戦いになればフルーレ、ロシエルしかいない。
 そう思っていたのだが、ウェルシュが首を傾げる。

「何言ってんの。互いに誇りを賭けて戦ったのよ。終わればもう友達でしょ」
「……はい?」
「そうでしょ、サティ」
「はい!! ありがとうございます、ウェルシュさん!!」
「なら、もう少し離れるわよ」
「いえ、ここで見守ります」
「……はぁ?」
「師匠の戦いを目に焼き付けます!! ウェルシュさんも、カジャクトさんの戦い、しっかり見た方がいいんじゃないですか? ね、ジラントさん」
「……ボクに振るなよ。でもまあ、ああなる姐さんは数百年ぶりだし、見ておきたいけど。ね、ラドン、グイバー」
「……まあいいけど」
「うむ。よし、人間たち……姐さんの余波は、オレたちで防ぐ。近くに寄れ」

 滅龍四天王たちが壁となり、防御してくれる。
 フルーレ、エミネムが顔を見合わせ、スレッドがグイバーの背中をバシバシ叩き、ロシエルはもうラスティスの戦いを見守っていた。
 サティは言う。

「魔族の皆さん、ありがとうございます!! あたし、皆さんのこと大好きです!!」
「……能天気な子。でもまあ、そういうのアタシも好き」

 ウェルシュはサティの肩を軽く小突き、人間と魔族の壁を感じることなく、ラスティスとカジャクトの戦いを見守るのだった。
 そして、エミネムが言う。

「えっと……ロシエル様。ラスティス様の『神器』と『臨解』ですけど」
「…………」

 ロシエルは首を振る……そう、ロシエルも見たことがない。
 だが、ポツリと呟く。

「……団長しか知らない」
「団長……お父様ですか?」
「…………」
「……と、とにかく。今のラスティス様が勝つには、神器と臨解を使いこなすしかない、ということですね」

 ラスティスとカジャクトの戦いは、未だ決着がつかない。
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