幼馴染たちに虐げられた俺、「聖女任命」スキルに目覚めて手のひら返し!

さとう

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傷だらけの少女ヒジリ

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 黒髪の少女は、俺を見て言った。

「あなたが、私を買ったのですか?」
「え……か、買う?」
「はい。外が騒がしかったようですが……私を買う交渉をしていたのでは?」
「いや、違うけど……ってかあんた、腕と足」
「…………」

 黒髪の少女は、四肢が欠損していた。
 右腕は肘から、左手は手首から、右足は膝下から無かった。
 先端部に包帯が巻いてある。少女は座ったまま動こうとしない……いや、動けないのか。

「手足は、両親と弟に切り落とされました。父が右腕、母が左手、弟が私の右足を斧で斬り落とし、動けなくなった私を奴隷商人マジョリーの元へ売り払ったのです」
「両親、弟って……」

 家族が、娘の四肢を切り落としたってのか。
 どういう狂気があればそんなことができるんだ。

「もう一度聞きます。あなたが私を買ったのではないですか?」
「違うけど……ってか、この馬車の持ち主なら行っちまったぞ。聖女の手当てをするためにな」
「……手当て?」
「ああ。俺を捕まえようとしたからな。返り討ちにした」
「……なるほど。つまり、私は捨てられたということですか」
「は?」
「あなた様が、マジョリーを倒したのですか?」
「そうだけど……」
「では、私の所有権はあなた様にあります。奴隷としてお使いいただくもよし、『穴』として使うもよし、魔獣を誘き寄せる餌にするもよし……この命、どうぞお使いください」
「……は?」

 意味が分からなかった。
 なんで俺がこの子をどうこうしなきゃいけないんだ。
 それに、女……正直、あまり関わりたくない。

「よくわからんけど遠慮しておく。それより、これからどうするんだ?」
「……別に何も。私は捨てられたようですので。ろくに動けませんし、このまま魔獣の餌になるか、餓死して骨になるか……」
「なんだそれ……ああ、動けないしな」
「そうです。あなた様が捨てるなら死、拾ってくれるなら生……私のような四肢のない醜女、生きていても死んでいても、どちらでも構いません。選択を」
「お、俺が選ぶのかよ」
「はい。あなた様に捨てられた瞬間、私はもう死しかありません」

 脅迫……いや、違う。
 こいつの眼。自分の命に興味がない。
 家族に四肢を切り落とされて自棄になっているのか。死んでもいいし生きていてもいい、そんな感じだ。
 
「……俺はセイヤ。炭鉱夫になるため旅を始めた」
「私はヒジリです」
「はぁ~……わかったよ。俺はヤヌズの町を目指しているけど、一緒に来るか?」
「あなた様が望むなら」
「じゃあ、行くか……と言っても、どうやって行こう。お前は歩けないよな? 馬車はあるけど俺は動かせないし」
「お手を貸していただければ、考えがございます」
「わかった」

 馬車に上がり、ヒジリの両脇を掴んで持ち上げた……軽い。
 ヒジリの顔を真正面から見たが、やはり目に生気がなかった。表情も乏しく、まるで人形を抱いているような感触だ。 
 馬車から出て、もう一台の馬車の元へ。

「あ、そうだ。こっちの馬車に服とか日用品あったぞ。そのボロきれよりちゃんとした服のがいいんじゃねーのか?」
「わかりました。あるじ
「……あるじ?」
「はい。私はあなたの所有物ですから。それとも、ご主人様の方がよろしいですか?」
「よくわからん。好きにしろよ」

 ヒジリは指のない左手で器用に木箱を漁り、ワンピースタイプの服を何着か選んだ。
 俺も使えそうな物を探し、簡単な調理器具や香辛料を見つけたのでもらっておく。ついでに少し大きなカバンも見つけたのでいろいろ入れておいた。
 
「その服でいいのか?」
「はい。ボタンがない服は着るのが楽ですから」
「ふーん。で、足は?」
「この馬車の荷台部分の木材を加工します」
「加工って……そんなの、俺にできるかどうか」
「主、私の指示通りにお願いします」
「あ、ああ。できるのか?」
「はい」

 馬車には大工道具もあったので、さっそく作業に取り掛かる。
 荷車の床板をヒジリの指示通りにノコギリで切り、釘を打ち、やすりで磨く。
 ヒジリは椅子に敷いてあった皮を加工し、自分の足の切断面に巻き付けてベルトのようにした。そして、俺が作った木製の足を自分の足にはめ込み、ベルトで固定する。

「これで……っと、なんとか歩けます。一時的な物ですが」
「いや、すごいな……お前、大工だったのか?」
「いえ。こういう作業は私の仕事でしたので」
「……ふーん」

 いろいろありそうな過去だ。でも、別に興味ない。
 同じように右腕の代わりに木製のフックを造った。ヒジリは余った皮を身体に巻き付け、フックを右腕に装着し、皮のベルトで固定。その上にコートを着て隠す。
 
「主。お手を煩わせてしまい申し訳ありません。これで多少は動けます」
「いやー……器用なもんだな」

 ヒジリは普通に立ち、頭を下げた。
 腰まである長い黒髪が揺れ、同じように黒い瞳が俺を見据える。

「改めて。私にできることなら何でもお申し付けくださいませ。救われた命、主のために使わせていただきます」
「いや、まぁ……好きにしろよ。じゃあ行くぞ」
「はい。主」

 やれやれ……よくわからん同行者ができちまったな。
 家族に四肢を切断された大工作業が得意な少女ヒジリ。
 俺が拾わなければ死ぬとか言うので拾ったら、《主》とか言い出して面倒くさいったらありゃしない。
 ま、ヤヌズの町まで同行してもらって、あとは好きにしてもらおう。

「ところでお前、得意なことはあるか?」
「以前は狩りが得意でした。料理も得意でしたが、両手がないので今は……」
「じゃあ、知識だけよこせ。俺が獲物を仕留めるから、今ある手持ちの材料で作れる料理を教えてくれ」
「かしこまりました。主」

 こうして、俺の冒険に(一時的に)ヒジリが仲間になった。
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