幼馴染たちに虐げられた俺、「聖女任命」スキルに目覚めて手のひら返し!

さとう

文字の大きさ
13 / 57

二人旅

しおりを挟む
 ヒジリを連れて『はぐれ街道』を歩いている。
 片足が作ったばかりの義足なのに、ヒジリは平然と歩いていた。

「ふむ……少し調整が必要です。主、野営の際にお手をお借りしてもよろしいですか?」
「いいけど……」
「ありがとうございます」

 不思議な奴だ。
 話を聞くと、まだ十五歳らしい。俺と同い年だ。
 長い黒髪は腰まで伸び、顔は小さいのに目は大きくパッチリしている。
 今はボタンのないワンピースを着ているが、スカートが嫌と言っている。
 左腕は手首から消失し、右腕は二の腕から切断……今は鉤爪のような木製の義手を付けている。
 俺と同い年の女が、四肢を失い売られかけ、俺に拾われて自分で四肢を作るとか……壮絶すぎるな。

「とりあえず、そろそろ野営場所探すか」
「では……こちらに川が流れています。行きましょう」
「え……わかるのか?」
「はい。匂いで」
「???」

 ヒジリは街道から外れ、藪の中を進んでいく。
 片足は義足なのにスイスイ藪を掻き分けていく。大したもんだ。
 藪を掻き分けて進むと、本当に川が流れていた。

「おお、すげぇ……しかも魚もいるぞ」
「主、ここで野営をしましょう」
「おし。じゃあ準備するか」

 馬車にあった革製のシートを敷き、枝を拾い集め火を熾す。
 ヒジリに火の番を任せ、俺は弓と矢を持って川沿いへ。

「『鷹の目ホークアイ』」

 視力を強化し、上流へ。
 コンパウンドボウの弦を調整し、矢の先端を細い物に取り換える。
 岩の上に乗り、矢を番え───放つ。

「うし、楽勝……もう一匹」

 矢は魚の胴を貫通。
 続いて二発目、三発目、四発目……魚を四匹ほどゲットした。
 魚を回収し、ヒジリの元へ。
 ワタを抜いて焼こうとしたらヒジリが言った。

「主、塩を忘れています」
「え、焼いてからでいいんじゃ」
「いえ。焼く前のがいいです」
「そうなのか。じゃあ……」

 言われた通りにして焼き、食べると……美味しかった。
 
「……主、申し訳ございませんが」
「あ、そっか。悪い悪い」
 
 俺はヒジリの隣に座り、串に刺した魚をそっと口元へ。

「あ~~んぐっ、あふ、あふい」
「おま、頭からってすげぇな!? 骨は!?」
「骨に栄養があるのです」

 ヒジリは、魚の頭からかぶりつき骨ごとバリバリ食べていた。
 あっという間に二匹完食。小さい薬缶に川の水を入れて沸騰させて冷やし、水筒に入れておく。
 どうもそのまま飲むと腹をこわすとか……これも俺の知識にはなかった。
 食休みした後は、ヒジリの義足と義手を改造する。

「主、脚をもう少し細くお願いします」
「右腕の鉤爪を細く、数を増やしてください。左手の義手もお願いします」
「できれば今夜中に完成を……理由は、その……私も女ですから」
「……あ、主に下の世話までさせたくないのです。それくらいのことはできるないと」

 と、顔を赤くしながら説明した。
 無表情だったのに、いきなり人間味が出てきたな。
 ヒジリの言う通りに義手と義足を造り、新しく左手も作った。
 作って装着すると同時にヒジリは藪の中へ……ああ、トイレか。
 
「主。立派な手足をありがとうございます」
「おう」
「戦いは難しいですが、自分のことは自分でできそうです。これからはお役に立てるように頑張ります」
「わかった。じゃあ今日は休むか」
「はい。夜警ならお任せください」
「ん、じゃあ交代でやるか」
「いえ。私でしたら大丈夫。七日程度なら不眠不休で活動できますので」
「……いや、無理だろ」
「本当です」

 どこまで本当なのかさっぱりわからなかった。

 ◇◇◇◇◇◇

「んが……あ?」
「おはようございます。主」
「……あれ、もう朝?」
「はい。主はゆっくり寝ておられました」
「…………」

 いつの間にかぐっすり寝ていたようだ……おかしいな、気が付いたら寝てたぞ。
 起きて身体をほぐし───え、なにこれ。

「朝食はできています。昨日と同じ魚ですが……」
「……え、お前が獲ったの?」
「はい」

 焚火の傍で、いい感じに魚が焼けていた。
 まさか、いつの間に……というか、どうやって。
 ヒジリの両手は義手だ。多少の『掴む』や『握る』ができるようになったが、魚を捕まえるなんてできるのだろうか。

「主?」
「あ、いや……お前、すごいな。どうやって捕まえたんだ?」
「普通に捕まえました」
「……そ、そうか」

 とりあえず、朝食に罪はない。
 味も昨日と同じだが、焼き魚はとてもおいしかった。
 火の始末をして片付け、カバンに荷物を入れると、ヒジリがカバンを背負った。

「おい、俺が持つよ」
「いえ。この程度でしたら私が」
「でもよ」
「主。私に気を使わないでください。私は主の所有物。それに、この程度の重さ、どうってことありません」
「……わかった。無理すんなよ」
「はい。では参りましょう」

 ヒジリは歩きだした。
 鍋とか着替えとか入っているからけっこう重いはずなのに……義足も調整し、ヒジリの足と同じ太さにして踏ん張りが利くように足の形も変えた。
 後ろから見てわかった。ヒジリは全く動きにぶれがない。
 まっすぐ、折れない鉄芯が身体の中に通っているようだ。そして、こういう立ち方ができる奴は、格闘技や武道の経験者だけ。

「……ヒジリ、お前って何か格闘技やってた?」
「さすが、おわかりですか」
「まぁな。歩き方と姿勢で」
「……それが、私が四肢を失った理由でもあります」
「…………」

 ヒジリは、前を向いたまま表情を変えなかった。
 あまり深く踏み込んではいけないような、そんな気がした。

「主。主の武器は弓ですか」
「ああ。あと目、ナイフ、格闘技かな」
「なるほど。前衛ではなく後衛ですね。私が前衛で戦えればよかったのですが」
「いいよ。それに、俺の戦いはそんなんじゃ……」

 ふと、俺は『鷹の目』で前方を見た。
 街道のど真ん中にで大きな猪が鹿を喰らっている。
 前方900、このまま行けばぶつかるな。

「主?」
「前方900、デカい猪がいる」
「……本当だ。どうします?」
「見えんのか?」
「ええ。目はいい方です」
「そっか。じゃあ、ここから仕留める」

 俺はコンパウンドボウを構え、弦を調整する。
 アスタルテから貰った特殊な形状の矢筒のツマミを廻し、特殊な鏃を矢の先端に装着、矢を抜いた。

「それは?」
鉄鋼鏃アーマーピエシング。先端を鋭く尖らせた鏃にすることで貫通力を高めた矢にするんだ」
「なるほど……つまり」
「ああ、一撃で決める」

 両腕に魔力を集中させ筋力増強。並みの大人では引くこともできないオリハルコン製の弦を弾き、『鷹の目』で巨大猪を見据え、狙いを定める。
 俺は矢を番え、ヒジリに言った。

「俺の戦い方は……真正面から打ち合う戦いじゃない。こうして相手の不意を打ち、自分が必ず生き残るための戦術だ」

 そう言って、俺は矢を射る。
 速度と貫通力がアップした矢は恐るべき速度で真っすぐ飛び、巨大猪の眉間に着弾、貫通し尻から矢が飛び出た。
 即死。巨大猪は痛みも感じず死に、そのまま倒れた。

「なぁ、猪肉って食えるか?」
「はい。かなり臭みがありますが、手持ちの香辛料でなんとか」

 今夜の昼食、夕食は、猪肉になった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...