独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

文字の大きさ
64 / 144
第六章 雪景色と温泉

ヴェルデの気持ち

しおりを挟む
 その日の夜。
 夕飯を終え、ロッソたちはさっさと寝てしまった。
 ヴェルデは少しロッソたちと話たそうだったが、声をかけることなくショボンとしてしまう。
 俺はまだ少し早いので、コーヒーを飲みながら読書をしていた。
 すると、ヴェルデが馬車から出てくる……ちなみに、マイルズさんとシュバンは、ヒコロクの傍で交代の警備をしてくれている。
 ヴェルデは、寝間着姿で馬車から出てきた。

「ん……おう、どうした」
「いえ、喉が渇いて……」
「待ってろ。そうだな……レモンティーでも飲むか?」
「レモン?」

 あ、そういやレモンっぽい果物ってだけでレモンじゃないわ。異世界にある果物、見た目こそ地球産のやつにそっくりなんだけど、名前は違うんだよな。
 まあいいや。俺はお湯を沸かし、紅茶を淹れ、レモンの薄切りを浮かべてヴェルデへ。

「いい香り……リモンの香りも素敵」

 そうだ、リモンだリモン……この引っかけみたいな名前勘弁してくれ。
 しばし、俺とヴェルデは焚火の前でお茶を飲む。

「なあ、ロッソたちに謝るつもり、あるのか?」

 俺は質問した。
 ヴェルデはぴくっと肩を揺らし、マイルズさんたちのいる方を見る。

「……マイルズにシュバンね」
「悪いな、聞いちまった……どうなんだ?」
「……別に、喧嘩なんてしてないわ」
「でも昔、冒険者ギルドを壊滅させる喧嘩をしたんだろ? しかも、原因はお前で」
「そ、それは……」
「今はなあなあで付き合ってるけど……ロッソたちの性格だと、許してないぞ。あいつら、お前と会った日とか、全然お前の話しなかったし。正直……どうでもいいとか思ってるかもな」
「…………」
「お前はどうなんだ? ロッソたちのこと、どう思ってるんだ?」
「……あなたに話す理由、ありますか?」
「ないな。でもまあ、ロッソたちはいい奴らだし、俺もいい友人だと思ってる。だから、あいつらがあんな、誰かに無関心な姿、見たくないんだ」
「……無関心?」
「ああ。お前、ロッソたちがお前のこと、どう思ってるかわかるか?」
 
 俺は本を閉じ、ようやくヴェルデをしっかり見た。
 ヴェルデはずっと、俺を見ていたのか……カップを持ったまま、俺を見ている。

「……嫌ってるに決まってます。アオとブランシュを馬鹿にして、あんな大喧嘩して……嫌われているに違いないわ」
「そりゃ違う」
「え?」
「なあ、好きの反対って何だと思う?」
「それは、嫌い……ですよね」
「俺は、『無関心』だと思ってる。そもそも、嫌いなヤツのことを『嫌いだ』なんて話題に出すことなんて意味がない。ロッソたち、会話するときは楽しいことしか話さない。お前のことが嫌いならわざわざ『嫌い』なんて話題にならないし、考えるだけ無駄なことだ。だからロッソたちは、お前に対しどこまでも無関心だぞ。現に、俺はあいつらと出会ってけっこう経つけど、お前のことなんて聞いたことない」
「…………無関心」
「ああ。喧嘩して、謝罪しない。しかもそのあとは馴れ馴れしく話しかけてくる。好きとか嫌いとかより、無関心なんだ。もうどうでもいいと思ってるし、適当に相手されてるだけだ」
「…………」

 言い過ぎたか……でも、真実だ。
 好きの反対は無関心。俺はいい言葉だと思う。
 同じ『七虹冒険者アルカンシエル』だとしても、それだけ。
 きっとけじめを付けない限り、ロッソたちとの関係は永遠にそのままだ。

「ヴェルデ。お前、どうしたいんだ?」
「…………」
「素直な気持ちで、今のお前の心の声を聞かせてくれ」
「私の、気持ち……」
「お前、ロッソたちに話しかけては話題振ってただろ? ほぼ無視されていたけど……お前、ロッソたちと友達になること、諦めていないんだろ?」
「…………それは」
「その気持ちがあるなら、俺も協力してやる」
「……どうして、そこまで」
「そりゃ、ロッソたちがあんな、人を無視するようなところを見たくないからだ」
「…………」

 ヴェルデは、カップを置いた。
 そして、小さく息を吐き、俺に言う。

「最初は、純粋な興味でした……私は、婚約破棄されて、実家を追放されても、魔法と戦闘には自信があったので、そのまま冒険者になりました。そして、『七虹冒険者アルカンシエル』にまで上り詰め……私と同い歳の少女が、仲間三人と冒険してると聞きました」
「それが、ロッソたちか?」
「ええ。その当時の私は、まだ貴族としてのプライドがあったので……三人を私の配下にするとか、心にもない言葉をぶつけました」
「あ~……まあ、うん」
「今思えば、ひどい言葉でした。ロッソが稼いだお金を故郷に送ったり、故郷へ続く道の開拓のために莫大な資金を出していることや、アオが孤児院の運営のためにお金を出していること、ブランシュが王都の教会に寄付や、身寄りのない子供たちに勉強道具を送ったりしていることを聞きました」

 ……慈善活動しているのは知っていたが、改めて聞くと自分が恥ずかしくなるな。
 
「私は、彼女たちの活動を嘲笑い……そんな意味のないことはやめろと、言いました」
「…………」
「ロッソと大喧嘩したのは、その時です」
「……故郷を馬鹿にされたら、そらキレるわな」
「ええ。私は意地でも謝罪せず、ロッソたちに喧嘩を吹っ掛けたりしました。でも……本当は、仲良くしたかった。相手をしてくれるだけでも、嬉しかった」
「…………」
「私は、こんな性格だから……友人もいないし、冒険者たちからは敬遠されています。だから、ロッソたちが相手をしてくれるのは、嬉しかった」
「……それで?」
「今の話を聞いて、無関心……嫌う嫌わないという次元ですらなかったのですね。私は、一度すれ違った町の住人みたいな存在と、同じ」
「……ああ、そうだな」
「…………ぅ」

 ヴェルデは、静かに涙を流す。
 俺は慰めなかった。ヴェルデは、やっと素直になれたのだ。
 だから、俺は慰めではなく、これからの言葉を送る。

「ちゃんと謝ろう。そして、ゼロからスタートだ」
「……え?」
「その気持ちがあるなら、ちゃんと謝れるさ。ロッソたちもきっと許してくれる」
「……そう、かな。私……誤りもしないで、しつこく話しかけて……図々しい」
「大丈夫。俺の知るロッソたちは、きっと許してくれる」
「……うん」
「よし。俺も手を貸すぞ。しっかり謝って、温泉の町レレドレを楽しく過ごそうな」
「……わ、わかった。でも……その、やっぱり少し、怖いというか」
「俺に任せな。一緒に謝る計画を練るぞ」
「う、うん」

 こうして、俺はヴェルデと共に『謝罪計画』を立てるのだった。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

【リクエスト作品】邪神のしもべ  異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!

石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。 その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。 一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。 幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。 そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。 白い空間に声が流れる。 『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』 話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。 幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。 金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。 そう言い切れるほど美しい存在… 彼女こそが邪神エグソーダス。 災いと不幸をもたらす女神だった。 今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...