独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第十章 アズマ、東方の国

アズマの城下町

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 アズマに入国……まあ、思った通りだった。
 まず、文化は日本の江戸時代っぽい。着物を着てる人、マゲを結ってる人が多い。時代劇とかでよく見るような光景が広がっていた。
 連結馬車は珍しいのか、いろんな人たちが振り返っては驚いている。

「すっげ……」
「ははは、驚いたか?」

 サスケが言う。
 ロッソやサンドローネたちも驚いていた。
 こうも文化が違うと、俺たちがまるで異物みたいに思えてくる。

「オレのおススメ宿を紹介するけど、金はあるか?」
「愚問だな。お前、知ってんだろ?」
「あはは。そういやオッサンの総資産、かなりすげぇこと忘れてたぜ」

 まあ、サンドローネのがもっとすごいだろうな。
 ちなみに今回、俺以外の同行者にかかる費用は全て、サンドローネ持ちだ。
 そして、進むこと数十分。デカい三階建ての寺みたいな宿に到着した。

「すげえ……まるで三重塔だな」

 京都の旅行で見たことあるような建物だ。
 サスケは宿へ行き、連結馬車を停める交渉へ。
 俺たちは荷物を下ろし、みんなでヒコロクを撫でて労っていると、サスケが戻って来た。

「交渉できたぜ。宿の裏に連結馬車を置いていいってよ」
「……ヒコロク。裏だって」
『わう』

 ヒコロクはアオと一緒に宿の裏へ。
 そのまま、馬用の厩舎でヒコロクは休むことになった。十日間ずっと頑張ってくれたし、ゆっくりと休んで欲しい。
 部屋はそれぞれ個室……というか、なんと宿を貸し切りにしてくれた。

「サスケ、どういう交渉したんだよ」
「ま、アズマ出身のオレだからできる交渉だぜ」

 全員が個室だ。ああ、ユキちゃんはスノウさんと一緒だけど。
 さて、まだお昼を過ぎたあたりだ。

「おっさん!! さっそく町に繰り出そう!! ごはん行こう~!!」
「いいな。へへへ、酒場とかのチェックもしないとな」
「……お菓子も」
「アズマの美容品も興味ありますわ」
「私、ファッション関係のお店行きたいわね」

 ロッソ、アオ、ブランシュ、ヴェルデが俺と一緒に行くことになった。

「……私は近くでいいわ。イェラン、行きましょうか」
「はーいっ!! やたっ、お姉様とデート!!」
「お嬢、私は」
「あなたはスノウさんたちの護衛に回りなさい。いいわね」
「……はい!!」

 さすがに全員でウロウロするわけにはいかないので、分かれての行動だ。
 リヒターは、スノウさんに「食事へ行くなら護衛します」と言い、スノウさんは笑顔で「まあ」と喜んでいた……あの二人、うまくいってほしいぜ。
 ちなみに、シュバンとマイルズさんは宿屋の隣にある店で適当に食べ、すぐ宿に戻るそうだ。
 というわけで、さっそく町へ出ることにした。

 ◇◇◇◇◇◇

「見れば見るほど、映画のセットみたいな光景だな……」

 町を歩いていると、まるで京都に来たような感じがする。
 赤い傘の下にある長椅子に座って団子を食べる人、飲食店から香るカツオ出汁の香り、ガラスケースの中には立派な陶器が飾ってあったり、カンカン音がするところでは鍛冶師が剣やら包丁やらを売っている。
 さらに、八百屋、魚屋、驚いたことにパン屋などもあった。

「異国~!! なんかさ、こういうの久しぶりじゃない?」
「……わかる」
「冒険でいろいろ出かけますけど、アズマは初めてですものねえ」
「ん~!! そのワクワク感、私もすっごいわかるわ。ゲントクは?」
「俺もわかる。でも……なんか懐かしいような感じかな。ここ、俺の故郷に似てるんだよ。建物というか、雰囲気というか」

 なんとなく、このアズマの始まりには転移者……日本人が絡んでいるような気がした。
 すると、ロッソが鼻をクンクンし、一軒の店を指差す。

「ね、あそこで食べない? なんかいい匂いする」
「アレは……おお、蕎麦屋か!! いいな、行こうぜ」
 
 時代劇のセットみたいな、主人公と取り巻きがメシ食ったり酒飲んだりするような古めかしい家に入ると、着物を着た女性が笑顔で接客してくれた。

「いらっしゃ~い。あら、異国のお方ね。珍しい」
「五人で」
「は~い。お好きなお席に~」

 六人掛けの席に座ると、店員さんがメニューを持って来た。

「うちは『ソバ屋』だけど、異国の方々、わかる?」
「そば? 知らない」
「……私も」

 ブランシュ、ヴェルデも首を振る。

「蕎麦ってのは蕎麦粉を練って細く切った麺にして、カツオ出汁の麺つゆで食う料理だよ」
「あらま、お詳しい。では、掛け……あったかいのと冷たいの、どっちにします?」
「じゃあ俺は掛けで。ザルもあるぞ」
「ざる……冷たいの? じゃあアタシ冷たいので」
「……私、おじさんと同じ」
「じゃあわたくしも」
「私はあったかいので!!」

 今日のお昼は蕎麦だ。
 メニューを見ると、天ぷら蕎麦、かき揚げ蕎麦、山菜蕎麦などもある。それにザツマイを使った天丼やかき揚げ丼もあった。
 焦るな……これから一か月の休暇なんだ。別荘を買って足場を固めたら、じっくり満喫させてもらうぜ。
 それから十分ほどで蕎麦が到着。

「……黒い、細いの?」

 アオが首をかしげる。
 ちゃんと箸が付属していた。異国人用にフォークもセットだ。
 俺は箸を手に、ロッソたちはフォークを手にする。

「じゃ、いただきます」
「「「「いただきまーす」」」」

 蕎麦を啜る……うお、なんだこりゃ、めっちゃ蕎麦の味と香りする。
 一言で表現するなら、『めちゃくちゃ蕎麦の味が濃い蕎麦』だ。
 代わりに、汁はやや薄め。だがちゃんと俺の知る蕎麦つゆだ。
 今気づいたが、テーブルに木製のひょうたんみたいなのが置いてある。まさかと思って手に取って蓋を開け、器にぱっぱと振りかける。

「やっぱ七味か。ここ、マジで日本なんじゃないのか? まさかこの世界は過去の地球!! なーんてあり得ないか」

 七味を掛けると美味さ倍増!!

「おじさま、それは?」
「七味唐辛子……でいいのかな。異世界の名前あるかもしれんけど。これ掛けると辛みが出て美味いんだよ」
「まあ、わたくしにももらえます?」
「私も辛いの好き。ちょうだい」

 七味を蕎麦にかけ、二人は麺をツルツル啜る。

「「!!」」
「辛いか? でも美味いだろ?」
「……私、辛いの微妙」
「美味しそうね……すみませーん!! おかわりくださいっ!! 今度はあったかいの!!」

 ロッソはすでに完食していたのでおかわり注文。
 俺もおかわり。久しぶりの蕎麦、めちゃくちゃ美味い。
 こうして、ロッソはさらにおかわりして三杯、俺は二杯、アオたちは一杯ずつ食べた。
 食後、お茶を飲み一息いれる。

「あ~美味しかった。ソバだっけ……不思議と無限に食べれそうな、つるっとして美味しいのよね」
「……今度は冷たの食べる」
「アズマの食事。エーデルシュタイン王国でも食べれる場所を探すのもいいですわね」
「マイルズなら、アズマでレシピを仕入れると思うわ。あとで私からも言っておくわね」

 みんな満足したようだ。
 俺も大満足。別荘の近くに蕎麦屋ある物件いいなーと思う。

「おじさん、アズマに詳しいね」
「アズマというか、この手の文化に詳しい……って言えばいいのかな。アズマって誰が作ったんだろう」

 そういうと、お茶のおかわりを注ぎに来た店員さんが言う。

「アズマ最初の『殿様』のことかい?」
「ん? ああ、知ってるんですか?」
「そりゃもう。アズマ文化を世に広め、小さな村落だったアズマを、こんなデカい国にしたお方さ」

 なんと、アズマは元は集落だったのか。
 茶を啜ると、店員さんは言う。

「名前は『トクガワ・ジュウザブロウ』様。みんなトクガワ様って呼んでて、今の『殿様』の先祖さ」
「ブッ」

 と、徳川? 徳川、ジュウザブロウ……十三郎? え、マジで。
 俺は布巾でテーブルを拭きつつ言う。

「あの、そのトクガワってのは……えと、転移者?」
「なんだいそれは? ああ、トクガワ様のことが知りたければ、城下町にある『酩酊横丁』にいる『射手座の魔女』ストレリチア・サジタリウス様に聞けばいいさ。あの方、お酒大好きでねぇ……仕事していない日は、朝から晩まで飲んでるから、会おうと思えば会えるさ」
「…………」

 あ、アズマにもいたのか……十二星座の魔女。
 しかも射手座。なんだろう、弓矢の達人的なイメージある。

「と、とりあえず機会があれば……お勘定」
「はいよ」

 勘定を済ませ、俺たちは店を出るのだった。
 うーん……十二星座の魔女か。やっぱりイベント的なの発生するのかな。
 まあ、めんどくさそうだし会わなくていいや。それに……トクガワ。徳川十三郎って漢字でいいのか? やっぱりこの文化、日本人が広げたモンだったのか。
 まあ、俺は俺で、この文化を楽しませてもらおうかね。
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