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私、子犬を拾う②

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 「ヴォフ!」

 小次郎は私の元へやってきて押し倒して顔を舐めてくる。

 「あははは!くすぐったいよ!小次郎!」
 「ヴォフ!ヴォフ!(遊べ!ダメ主人)」
 「そうかそうか。遊んで欲しいのかぁ~」
 「ハッハッ…ヴォフ!(そうだ!遊べ)」
 「しょうがないな」

 私は立ち上がる。
 すると、小次郎は遠くへと走っていき100m程離れた所で、私へと向き直る。

 「ヴォフ!(突進!)」

 小次郎は私に向かってものすごい速さで駆け抜けてくる。

 「3日前まではあんなに小さかったのにすっかりと立派になって……」

 私へと鋭い牙を見せ、向かってくる小次郎に感動してしまい涙が流れる。

 本当に立派になった。まるでフェンリルのように。

 私はハンカチで涙を拭う。

 「ヴォフ!ヴォフ!(今度こそ!仕留める!)」

 その一瞬の間に、小次郎は距離を詰めてきており、すぐ目の前にまで迫っていた。

 「おっと、流石の私でも直撃はまずい……」

 アチョオオ!と空中に飛んで半回転、小次郎の額に私の齢によって弛んできたブリッとしたケツ「ブリケツ」を当てる。

 必殺!ブリケツドロップ!

 「ヴォフ!ヴォフ!(負けない!)」
 「うおおおお!」

 小次郎の額と私のブリケツが衝突……
 その余波で公園の遊具は吹き飛び、地面に亀裂が走る。
 
 「ヴォフ!」
 「うおおお!」

 両者互角!凄まじい押し合い。
 かつての魔王と勇者の戦いよりも激しい歴史に残る名勝負!
 しかし、どんな名勝負も唐突に終わりが来るように、

 「秘技!屁(へ)!」

 ぷっぷぅぅぅぅ~

 クミのブリケツから放たれる悪臭。

 「ヴォ!ヴォフ!(くっさぁぁ!鼻がァァ!)」

 あまりの悪臭に小次郎は前足で鼻を押さえて背中から倒れ込み、転げ回る。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。

 「ぬはははは!ブリケツドロップは打撃と悪臭による2段階攻撃となっているのだよ!どうだ!まいったかぁ!」
 「ヴォフ!ヴォフ!(参った!降参!)」
 「うむ!素直でよろしい!」

 鼻を押さえて転げ回る小次郎と小次郎の返答に頷く私。
 って、おい!小次郎!もうそろそろ鼻に残った悪臭が取れる頃だろう!流石の私でも……ん?待てよ?昨日は確か……

 「ああ!すまん!ニンニクとかめっちゃ臭くなるの食ったわ!もうしばらく苦しんでくれ!」
 「ヴォフゥゥ!(マ、マジかよぉぉ!)」

 私と小次郎はユリを忘れて話す。

 「……ええ!フェンリルじゃん!しかも主従契約結んでいるしぃぃ!意思疎通できてるしぃぃ!!」

 さすがは賢者。1発で小次郎の正体を……

 「って、ええ!小次郎がフェンリルぅぅ!」

 まさかの正体に驚愕する飼い主(私)
 似てるとは思ってたけど……ええ!

 「気づいてなかったんかい!」

 すかさずユリにつっこまれてしまった。

 ま、元気に育ってるしいいか!良しとしよう!フェンリルでも小次郎は小次郎だからな!
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