30歳の聖女は、精神年齢が「8歳」です。

さくしゃ

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大勝負①

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 「くそぉぉ!今日も負けたぁ!」
 「だっははは!また挑戦しにこい!気分次第でいつでも相手になってやるよ!」

 王都北区にある商店街の一角……コマ協会本部
 B級冒険者にして大剣使いで有名な「イークス」
 身長2m、体重は100kg以上の筋肉の怪物、赤い短髪は彼の情熱的な性格を表している。強面だが、柔らかい笑顔がチャームポイントの50歳。
 そんな彼の趣味は、「コマ」
 クエストが失敗続きで落ち込んでいる時に商店街の玩具店の前を通った時にたまたまコマで楽しそうに遊ぶ子供達に惹かれ、なんとなく始めてから35年!
 今では、コマ協会を立ち上げ、最強のコマ使いの一角として会長を務めている。

 「俺に勝ちたかったらもっとコマと対話するんだな!」

 現在、コマ協会本部となるコマ専門店「コマイヤー」の店内では、「来れ!コマ使いども!会長が相手をする!」というイベントが開かれており、イークスに勝利するとコマ歴代限定モデルがもらえるとあり、毎回30名近い挑戦者がやってきて店内に入りきらず、半数以上は外のショーウィンドーから観戦する。
 そして、今日も最強のコマ使いの名に恥じぬ戦いぶりで30人の少年たちを片っ端から蹴散らし終わった。

 「俺のようにコマに熱中しすぎて奥さんが出ていってしまうくらいにな!……帰ってきてくれェェ!アマンダー!」

 奥さんと思われる人物名を叫び、地面に倒れ伏し、涙を流す。

 「……こんな大人にだけはなっちゃダメということはわかった」

 地面に倒れ込むイークスを見た1人の少年が率直な感想を口にすると周りの少年たちもそれに続き頷く。

 そんな混沌とかした商店街の一角に1人のコマ使いが漆黒の長髪をなびかせ登場する。
 その人物は聖女として教会に勤めているはずの平日の10時に教会を抜け出し、毎回このイベントに参加しにやってくる。
 実力はイークス同様に数多のコマ使い(少年たち)を打ち砕き、5年もトップに君臨し続けている姿から「神!」と呼ばれている。

 「ふっふっふ!きたな!『神!』」

 好敵手(ライバル)の出現に泣き崩れていたイークス(50歳)は不適な笑みを浮かべて立ち上がる。

 「ふ……待たせたな」

 身体中にガラス片が刺さり、血だらけの「神!」は相棒であるコマ「風神」を構える。

 「ふははは!良い闘気よ!受けて立つ!」

 イークスも相棒である「ヘヴィ」を構える。

 「わかっていると思うが、コマの改造はなし。通常のコマで正々堂々戦う事!いいな?」

 コマ協会が定める唯一のルール。

 「もちろん!私は正々堂々戦うために生まれてきた人間だ!そんな卑怯な真似はしない!」
 「ふははは!それでこそ我が終生のライバル!……ならば!尋常に勝負!」
 
 「最強のコマ使い」対「神!」による頂上決戦が今始まる。
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