蝋燭館の事件簿

杉野桜姫

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はじめての挨拶

気まぐれマカロンにご注意

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浅見琴音さんは昨日持ってきたキーホルダーの真相を突き止めた
でも正直、琴音さんは趣味がわからない
将来は実家を継ぐために勉強中だけど
紹介するのを忘れました
僕は佐藤智樹、大学生です
浅見は頭を抱えた
「うまくできないわ!」
「琴音、どうした?」
浅見はひょこっと顔を出した
「うまく、できないわ!マカロンが」
「マカロンとは」
浅見は珍しいそうに言った
佐藤はスケジュールをチェックした
「智樹、後一時間よ」
「ありがとう、氷川さん」
彼女は氷川ゆめで僕の友人で僕よりしっかりした人です
周りから憧れの的で僕が通う氷川教授のお嬢様
「父から頼まれているわ」
氷川は懐中時計を見て
「時間だわ」
佐藤は氷川の後を追った
「ゆめ、落とし物」
佐藤の手には懐中時計を巻くためのネジがあった
「着メロが鳴ってるわ」
佐藤はスマートフォンを取り出した
「鳴ってないが」
佐藤は思わず氷川を見た
「ゆめの方からだ、しかも今人気のHicariの」
ゆめの様子が変わったのはこの日だからだ
「氷川さんが来ないんですか」
ゆめは昨日も出来事から突如大学を休むようになった
女子の口々に言うようになった
僕は心配になってゆめの家を訪ねた
「ゆめ、大丈夫?」
「大丈夫です」
氷川の声は弱々しく感じた
「昨日から来ないって」
「ストーカーに」
氷川の手は震えていた
「そうなんだ、でもゆめと一緒に来てほしい場所があるんだ」
「どこですか?」
氷川は興味をそそられた
浅見は達成感を味わった
「上手くできた、マカロンの足が」
浅見は物陰から笑っていた
氷川は蝋燭館のドアを開けようかと迷った
「大丈夫ですよ」
「大丈夫って?」
氷川は躊躇った気がした
浅見はカウンター越しから覗いた
「あら、佐藤さん」
佐藤は驚いた
「金の音が聞こえたから」
佐藤はドアを見た
「本当だ、鳴ってたんだ」
浅見は笑った
「また、謎の持ち込みとは」
「謎の持ち込み?」
「この人?」
氷川は不安にかられた
佐藤は氷川に話した
「ごめんなさいね、父からので」
「人を安易に信用するなか」
「かなり冷えてますね」
「かなり冷えて?」
氷川はわからずにキョトンとした
浅見はおもむろにマカロンを出した
「頭もカラフルにしてみれば」
氷川は思わず笑いそうになった
「足がたたないとダメ?」
浅見はうなずいた
「それで足チェックです」
佐藤は思わず思った
聞かない方がよかったと
氷川は見回して
「こんなふう喫茶があるとは」
浅見は笑って
「あなたには抱えきれないものがありますね?」
氷川は付かれたと思った
「最近、ストーカーが」
浅見はコーヒーを入れた
「大丈夫?」
「大丈夫よ」
氷川の手が震えてた
「あなた、人には言えない悩みでも?」
氷川はピクリとなった
「マカロンで」
氷川は思わずマカロンを口に入れた
「ストーカーですか?」
氷川は思わず口をつぐんだ
「でもどうしてストーカーと言い切れるのかがわかりません」
佐藤もうなずいた
「ストーカーはストーカーです!わたしのスマホに!」
氷川は浅見たちに見せた
浅見はしばし考えた
「この文章事態にストーカー感はします!」
氷川は信頼できる人だと思った
「琴音さん、質問ですが」
「教えて!」
浅見は興味を示した
「このメールがストーカーだとしたらどうしてゆめの家などをつけ回すのが話が通る気がしてしょうがないんです」
「確かに、言われれば」
氷川はコーヒーを飲んだ
「家は隠れ家的なんです」
「隠れ家ですか」
氷川はうなずいた
「メールで気がつかせるためだと」
佐藤は氷川と一緒に帰した
「ゆめ、こんな時間に!」
氷川教授は氷川に怒鳴り付けた
佐藤は教授に訳を話した
「蝋燭館?」
佐藤はうなずいた
「あの店か」
佐藤はこっそりと家に帰った
浅見は大根を見ながら
「あの人には白さがなかったわ」
浅見は首をかしげた
「どうしてだ?」
琴音は大根の糠漬けを食べた
「明日もマカロンです!」
浅見は苦笑いした
「まっ、いっか」
浅見は大根の糠漬けを食べた
佐藤は財布を見た
「ゆめとの約束もあるからな」
氷川は佐藤に
「父に殴られて」
「教授に?」
氷川はうなずいた
「父は」
氷川は話そうとした
「後で琴音さんの店で」
氷川はうなずいた
氷川は父である氷川教授を連れてきた
浅見はコーヒーミルを挽いていた
「いらっしゃい!」
浅見はハキハキした声で言った
佐藤は氷川のことを話した
「大丈夫ですよ、最初からストーカーはいませんでした」
「ストーカーはいない?」
氷川は驚いた
「ストーカーになりかっていたんですよ」
「誰が?」
佐藤は思わず聞いた
「その前に座って」
浅見は佐藤たちを案内した
「マカロンだ」
「黒と赤の」
浅見は氷川教授を見て
「あなたは教授の身でありながら不倫しています!」
「不倫を?」
浅見はコーヒーを置いた
「贖罪のコーヒーです」
「でも不倫って?」
「氷川教授には会わせたくない人間がゆめさんにメールを送ったんですから」
氷川は思わず教授を見て
「父さんが」
氷川教授は小さくうなずいた
「妻です」
浅見はクスリと笑って
「奥様は氷川ゆめさんを実の娘だとは思わずに行ったからです」
「母が?」
浅見はうなずいた
「でもストーカーになって試したのよ」
氷川は母にメールした
浅見は氷川教授に
「赤と黒のラストは主人公は相手を殺そうとしたがケガだけで主人公は死刑宣告したのよ」
「ゆめがどうしてあんな傷を?」
「リストカットです」
浅見は白いマカロンを出した
後日、氷川教授は不倫相手と別れた
教授は大学を辞めようと思ったが教え子や周りの人から嘆願書が届いた
「すごいわね、父がこの大学に残るのも」
「まさか琴音さんがフランス文学の赤と黒を出すとは」
「わたしのリストカットまで」

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