異世界に二人召喚されましたが、私は無能認定されて辺境送り。……え、なんかすごい力が目覚めたんですけど?

天使の羽衣

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名もなき誇り

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 倒れた男は語りだした。
 
「昔、俺はある村の騎士だったんだ。みんなから憧れられる騎士だった。だけど……ある日を境にそれはなくなった」
「そのある日って?」
「俺とその仲の良かった同僚で門番をしていた日。同僚に誘われて酒飲んじまったんだよ」
 男の顔は今にでも泣きそうな顔だった。
 それに応じて男の声がだんだんと大きくなる。
「俺、酒弱くてさ。なんでかわからねぇけど飲んじまったんだよ。案の定俺は酔いつぶれたんだ……同僚もな」
「それで、どうなったの?」
「わからないか……俺が寝ている間に魔物が村を襲ったんだ。同僚も死んでたさ。俺をかばうようにして。村の中は地獄絵図だった。見るに耐えなかったよ」
 男の声はどこか哀愁が漂い、話すのも辛いだろうになぜ私に話してくれるのだろうか。
「どうして、その話を私に?」
男は、数秒黙り込んだ後言った。
 
「あんたが聖女って聞いたから、話せば死んだあとの罪が軽くなるかなって思ってさ……馬鹿だよな俺って」
 男にかける言葉が見つからなかった。
 私が何の言葉亜をかけようかと考えていると薔薇が言った。
「あんたら、最近怪しい人物と会わなかった?」
 「怪しい人物か……会ったかもな」
 男は思い出すかのように言った。そして、続けて……
「その男が、俺達にお前の情報を言ってきたんだ」
 
 私の方を指しながら言った。
 
「私の情報?私の情報を知ってる人は王都ではいないはずだけど……」
「そうか……だけどその男は言ってたぞ。『辺境の地に聖女が移り住んだ。狙うなら今だぞ』ってね」
「そう……」
 私の情報を知ってるのは王城にいたごく僅かな人のみ。その中に犯人が……
 もしかして、もう一人の聖女?
 
 いや、そんなことはない―― 胸に手を置き気持ちを落ち着かせた。
 
 薔薇が怒りが混じりの声で言った。
「ねぇ、その男なんか薬渡してきたでしょ?」
「お、おう。渡してきたぜ。効果は、筋力の増加って言ってたはず」
 薔薇はその言葉を聞いて青ざめていた。そして、地面に膝をついて腕で地面を叩いていた。
「薔薇!?どうしたの急に」
 薔薇は珍しく涙を流しながら言った。
「だって……だって……その男が渡してきた薬ってやつ禁忌薬の『精霊の秘術』だもん。」
「精霊の秘術?それはどういうこと……」
「精霊の血を使って作れる薬。その薬を摂取したものは24時間後魔物に豹変する薬。」
「精霊の血を……?」
「そう……精霊を捕まえて殺す。その血を使って……作るのよ」
 薔薇の感情はぐちゃぐちゃになっていた。怒りと悲しみ様々な感情が混ざり合い声があまり出せていなかった。
 私は男の方を見て言った。
「じゃぁ、この人も殺さなければあいけないのね」
「そうよ――」
 男は言った。
「思う存分殺してくれて構わない。俺の人生はクソみたいな人生だったからな。もう公開することはないさ」
 私は男の言葉に驚かされた。普通は死ぬのが怖いはずなのにこんなにも潔く死のうとしているなんて……
 私は手が震えながらも男の持っていた剣を持って男の前に立った。
「聖女様に殺されるなんてなかなかないだろうな」
 
「うわあああああああ!!!!!」

 私は大声を上げながら男の首元に剣を振りかざしたのだった――
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