異世界に二人召喚されましたが、私は無能認定されて辺境送り。……え、なんかすごい力が目覚めたんですけど?

天使の羽衣

文字の大きさ
19 / 21

薔薇の願い

しおりを挟む
 私はルビーとエリックの荷物をまとめて外へ出た。
 2人はただの冒険だと思っているが、実際は違う。
 今から向かう場所は、この世で1番残酷な場所だと私は思う。

 そんな悲惨な光景を子供たちには見せられない。
 外で待っているルビーとエリックにもう一度質問した。
「本当にあなたたちは私の旅についてくるの?」
 そう言うと、ルビーとエリックはお互い見つめ合い言った。
「「うん!!」」
 2人の笑顔に偽りはなさそうだった。

 そして、薔薇の案内のも、私たちは歩き始めた。
 魔物に襲われているアルバジャ村へ。

 私は1度足取りを止め、自分の家に振り返った。
 そこには、いつもの家が立っていた。
 少し寂しい気持ちもあるが、すぐ帰ってくるだろう。そんな気がした。
 家に背中を見せ、私は歩みを進めようだった。


 ー半日後ー

 バラの案内で私たちは進んできたが、アルバジャ村は思った以上に遠かった。
「もう歩けないよ~」
 エリックが駄々をこねたりもした。
 二人の体力を見ながら進まなければいけないので、意外に大変だった。
 大人と子供の体力が全く違うものだと思い知った。

 夜になり少し開けたところで野宿のキャンプを立てた。
 子供たち2人は日中の歩き疲れが来たのか、ご飯を食べすぐ寝てしまった。
 空は星空で満点だった。
 私は焚き火の前で座り込み、ただじっと火を見る。
 なんだか火を見てると、とても心が落ち着く。
 この火の落ち着きのように、アルバジャ村も平和であって欲しい。私はそう願った。
 ぼーっとしていると、薔薇が来て、私の隣に座った。
 数分間、お互い黙り込み気まずい空気がその場を包み込んだ。
 何の話題を振ればいいのか、お互い全くわからずに、時間だけが過ぎていった。
 薔薇はぼそっと言うように言った。
「私さ、妖精の中で、まだ新入りの方でさ……友達って言う友達があんまりいないんだよね……」
「そうなんだ」
 唐突に始まった薔薇の昔話私は思わず聞く耳を立てた。
 優しくうなずくと、薔薇は続けていった。
「1年に1回さぁ、妖精が1度に集まるお祭りがあるんだ……そこで大体知り合うんだけど、私あんまりしゃべるの得意じゃなくて……」
 薔薇は一呼吸置いて続けていった。
「そんな孤立していた私に喋りかけてくれた人がいてさ。それが今向かってるアルバジャ村の妖精ヒマワリって言うんだけどさ」
 私は相槌を打って言った。
「ヒマワリって言うんだ。かわいい名前だね。名前があるって事は契約者がいるってこと?」
「そうだよ。名付け親は前の妖精の女王だよ」
「そうなんだ。だけど、今妖精の女王って……」
「そう不在なんだ。だから、ありさが妖精の女王になって私たちの希望の光となってほしい」
 薔薇はどこか寂しそうな声で語った。
 妖精界では、そんなことが起きているんだと初めて知った。
 いつも明るい薔薇が、こんなに落ち込んでいるのは初めて見た。

「遅いもう遅い寝よ」
 私がそう言うと、薔薇は目を擦りながらうなずいた。

 寝床に入り目をつぶると急に胸が痛くなった。
 私は思わず胸を抑えた。だが、全く痛みは消えない。

 次の瞬間、何かが私を呼ぶ声がした。

 そして、目の前が真っ白になった――
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...