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彼らは旅立った。どこかへ
後編
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「リュー君!」
床に崩れ落ちた宰相の息子に駆け寄るモニカ。まっ青な表情で、床で震えている彼を見て、エルドは漸く自分が間違っているらしいことに気付いた。
「カロリーナ。お前は、私の婚約者ではないのか……」
「婚約者だったことは、一度もありません」
父である国王に、カロリーナに対してなにか言われたことはなかったと、今更ながらにエルドは気付く。
カロリーナを蔑ろにして、苦言を呈してきたのは、エルドの母親の側妃だけ。だがその側妃も「カロリーナの気を惹くために贈り物をしなさい」と言っていた。
エルドは婚約破棄を宣言して、初めて自分の婚約者はカロリーナだと言われたことがなかったことに気付いたが、もう手遅れだった。
カロリーナから指示を受けた給仕から話を聞いた衛兵たちが、国王に指示を仰ぎ、命令を受けて会場へとやってきて、卒業パーティーは散々な形で終わった。
そしてエルドは国王から、婚約などしていなかった事実を聞かされ、
「お前とカロリーナが婚約?なんの話だ?お前が嘘を教えたのか?」
「そんなことは言っていません!ただエルドがカロリーナの心を掴めれば、婚約できるとは言いましたが」
エルドの母親の側妃も問い質され、そう答えた。側妃は側妃の息子でしかないエルドが、少しでも強い後ろ盾を得てくれたら、彼の人生は安泰になると考えての、母親として適切な範囲内のアドバイスだった。
「全く心を掴むような行動を取ってはいなかったが。もしもお前とカロリーナの婚約が結ばれていたら、カロリーナはもっとこまめに王宮に足を運んでいただろうし、お前も公爵家に招かれていたはずだが。そんなことも、解らないのか」
エルドは国王の呆れを隠さない言葉に対して、返事を返すことができなかった。
その後、エルドと四名の側近とモニカたちは、カロリーナへの名誉毀損の賠償として、多額の金を支払った。
カロリーナに対してはそれだけで終わったが、彼らのしでかしたことで、彼らの父親である宰相、騎士団長、魔道師団長、大商会は辞任した。
モニカに関しては、身分が低すぎるので、お咎めは無かった。
そして身分が高すぎる国王は、さすがにその地位を退くことはなかったが、側妃は離婚されることとなった。
更に「あれほど愚かな姿を、衆目にさらしては、この先国内では生きて行けないだろう」として、彼らと側妃、そしてモニカは遠くの国へと留学することがきまった。
留学先の学園どころか国名すら誰にも知らせず、彼らは国外留学をし、二度と故郷に帰ってくることはなかった。
帰ってくるなど、誰一人思ってはいなかったが
床に崩れ落ちた宰相の息子に駆け寄るモニカ。まっ青な表情で、床で震えている彼を見て、エルドは漸く自分が間違っているらしいことに気付いた。
「カロリーナ。お前は、私の婚約者ではないのか……」
「婚約者だったことは、一度もありません」
父である国王に、カロリーナに対してなにか言われたことはなかったと、今更ながらにエルドは気付く。
カロリーナを蔑ろにして、苦言を呈してきたのは、エルドの母親の側妃だけ。だがその側妃も「カロリーナの気を惹くために贈り物をしなさい」と言っていた。
エルドは婚約破棄を宣言して、初めて自分の婚約者はカロリーナだと言われたことがなかったことに気付いたが、もう手遅れだった。
カロリーナから指示を受けた給仕から話を聞いた衛兵たちが、国王に指示を仰ぎ、命令を受けて会場へとやってきて、卒業パーティーは散々な形で終わった。
そしてエルドは国王から、婚約などしていなかった事実を聞かされ、
「お前とカロリーナが婚約?なんの話だ?お前が嘘を教えたのか?」
「そんなことは言っていません!ただエルドがカロリーナの心を掴めれば、婚約できるとは言いましたが」
エルドの母親の側妃も問い質され、そう答えた。側妃は側妃の息子でしかないエルドが、少しでも強い後ろ盾を得てくれたら、彼の人生は安泰になると考えての、母親として適切な範囲内のアドバイスだった。
「全く心を掴むような行動を取ってはいなかったが。もしもお前とカロリーナの婚約が結ばれていたら、カロリーナはもっとこまめに王宮に足を運んでいただろうし、お前も公爵家に招かれていたはずだが。そんなことも、解らないのか」
エルドは国王の呆れを隠さない言葉に対して、返事を返すことができなかった。
その後、エルドと四名の側近とモニカたちは、カロリーナへの名誉毀損の賠償として、多額の金を支払った。
カロリーナに対してはそれだけで終わったが、彼らのしでかしたことで、彼らの父親である宰相、騎士団長、魔道師団長、大商会は辞任した。
モニカに関しては、身分が低すぎるので、お咎めは無かった。
そして身分が高すぎる国王は、さすがにその地位を退くことはなかったが、側妃は離婚されることとなった。
更に「あれほど愚かな姿を、衆目にさらしては、この先国内では生きて行けないだろう」として、彼らと側妃、そしてモニカは遠くの国へと留学することがきまった。
留学先の学園どころか国名すら誰にも知らせず、彼らは国外留学をし、二度と故郷に帰ってくることはなかった。
帰ってくるなど、誰一人思ってはいなかったが
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