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夫と私の幼馴染みは浮気がバレていないと思っていたようだ……馬鹿だから
夫と私の幼馴染みは浮気がバレていないと思っていたようだ……馬鹿だから
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私と夫は結婚して一年半ほどになる。
婚約期間は十年ほどだったが、ほとんど会うことがなかった。
それというのも、夫の両親が外交官であちらこちらの国に赴任していて、夫も一緒だったからだ。
本国には滅多に帰ってくることはなく、異国の地への手紙は届くかどうか解らない状態なので、ほとんどやり取りはなかった。
夫が貴族の跡取りなら、親が赴任していても、入学年齢になったら本国の伝統校に入学しただろうが、夫の両親は貴族ではあるが跡取りではないので、夫も継ぐ家などない。
だから一人っ子の私の所に婿入りすることになった。
顔も知らない相手との結婚だが貴族、ましてや跡取りの婿取りとなれば、そんなことも珍しくはない。
こうして十年の婚約を経て、私は初対面の夫と結婚した。
さすがにこの時は、夫の両親やこの婚姻を結ぶために様々な交渉をした、夫の本家の当主も顔を出した。
「おめでとう、アイラ」
「ありがとう、オルガ」
地位のある年配者たちへの挨拶が終わり、ほっと一息ついている時に、私の幼馴染みのオルガが祝福の言葉をかけてくれた。
夫とは結婚式が初対面だった、私もオルガも。
夫は一目でオルガに恋をして、オルガもまた夫と同じく夫に恋をした。
夫とオルガは、私の幼馴染みという立場を利用して、逢瀬を重ねていたが、
「馬鹿なのかしら。いいえ、馬鹿よね」
私の前に引き出された二人は、青い顔で跪いている。そんな二人に私は慈悲をかけるつもりはない。
「ここは私の邸なのよ?隠れて逢瀬を重ねるなんて、できるわけないでしょう。貴方達はそんなことも解らないの?ああ、解らないから浮気したんだ」
”私の幼馴染み”という関係を利用して二人は密会を重ねていた。だがその切り札を使えるのは”私に会いに来た”……ようするに私の邸しかない。
外で二人で会っていたら、それは言い訳のしようがない。かといって、夫が単身でオルガの実家を訪れるのは不自然。
なので二人は、私の外出中を狙ってオルガが尋ねてきて、夫が持て成すという名目で時間を作っていたが、邸の使用人たち全員の雇い主は私の父。
二人の不倫に感動して、協力するような馬鹿はいなかった。
「身一つで婿入りして浮気とか……はあ……」
私は本家の跡取り娘。対する夫は継ぐ爵位も門地もない貴族でしかない両親の息子。
「儂の顔に泥を塗りおって!」
私と共に二人を眺めていたうちの一人で、夫の本家のご隠居が怒声を上げて立ち上がり、杖を振り上げ夫を殴りつけた。
「いた!ご当主様、おゆるしを!」
夫は手で顔を庇い、赦しを請うていたが、赦されるはずもない。
「手を降ろさんか!この痴れ者め!」
ご隠居が再び杖を振り下ろすと、夫は避けた。それがご隠居の怒りを更に買い、
「この男を取り押さえろ!」
防御できないように取り押さえられ、
「やめっ!いっ!ぎぃややややや!」
何度も杖を振り下ろされ殴られ、振り下ろされる杖の軌道が夫の眼球を捉え、ぼろりとカーペットに落ちた。
(汚いわ。でも、この状況ならご隠居が張り替え費用を持ってくださるでしょう)
「目が!おちじゃっだ!ひどい!ひどいよ!」
眼球が落ちたことで、夫の精神は崩壊したらしく、子どものように泣きわめくが、
「子どもみたいな声を上げているけれど、貴方は不倫をしたのだから、子どもじゃないのよ。そこのところ、解ってる?」
泣く権利すらないのよね。
そして隣で青い顔をしていたオルガは、いきなり立ち上がりドアへ向かって突進して、部屋から逃げ出そうとしたが、
「ぐへっ……げえぇぇぇ……」
衛兵に腹を殴られて嘔吐した。
ほんとカーペットが汚れて嫌だわ。この二人が不倫をしていた部屋も、汚らしくて嫌だけど。ああ、あの部屋も改装しなくちゃ。
「逃げられると思ったの。馬鹿ね?ああ、馬鹿だから、身一つで婿入りした男と、嫁の実家で浮気できたんでしょうね。ちょっと考えたら、無理なこと解るでしょう。どう教育したら、こうなるのかしら?というか、教育したの?」
部屋の隅で土気色した表情で俯いている、オルガの母親。
オルガの父親は王宮で官吏として勤務しているのだけれど、今日をもって馘首になる。だって、オルガの父親に官吏の職を斡旋したのは、私の父だから。
カーペットと一室を汚した元夫とオルガは、部屋から連れ出された。二人はこのあと、娼館に売られる。あの二人がどれほど頑張ったところで、カーペットの張り替え費用ににも届かないとは思うけど。
それから数日後、二人が娼館に売られて初客を取ったと報告が届いた。
皮肉というか、なんというか、不倫をしていたから、オルガは最初から安値で、夫は当然ながら初物なので高値がついたとか。
「そっちの娼館に売られたの……ざまあないわ!」
そうそう二人の不倫理由だけど、私に対する劣等感という共通の感情があったことから発展したんだって。
元夫は結婚するまで、劣等感などは解らなかったかもしれないけど、オルガは彼女から私に近づいてきたんだけど……忘れたのかしら?
きっと忘れたのよね、馬鹿だから。
婚約期間は十年ほどだったが、ほとんど会うことがなかった。
それというのも、夫の両親が外交官であちらこちらの国に赴任していて、夫も一緒だったからだ。
本国には滅多に帰ってくることはなく、異国の地への手紙は届くかどうか解らない状態なので、ほとんどやり取りはなかった。
夫が貴族の跡取りなら、親が赴任していても、入学年齢になったら本国の伝統校に入学しただろうが、夫の両親は貴族ではあるが跡取りではないので、夫も継ぐ家などない。
だから一人っ子の私の所に婿入りすることになった。
顔も知らない相手との結婚だが貴族、ましてや跡取りの婿取りとなれば、そんなことも珍しくはない。
こうして十年の婚約を経て、私は初対面の夫と結婚した。
さすがにこの時は、夫の両親やこの婚姻を結ぶために様々な交渉をした、夫の本家の当主も顔を出した。
「おめでとう、アイラ」
「ありがとう、オルガ」
地位のある年配者たちへの挨拶が終わり、ほっと一息ついている時に、私の幼馴染みのオルガが祝福の言葉をかけてくれた。
夫とは結婚式が初対面だった、私もオルガも。
夫は一目でオルガに恋をして、オルガもまた夫と同じく夫に恋をした。
夫とオルガは、私の幼馴染みという立場を利用して、逢瀬を重ねていたが、
「馬鹿なのかしら。いいえ、馬鹿よね」
私の前に引き出された二人は、青い顔で跪いている。そんな二人に私は慈悲をかけるつもりはない。
「ここは私の邸なのよ?隠れて逢瀬を重ねるなんて、できるわけないでしょう。貴方達はそんなことも解らないの?ああ、解らないから浮気したんだ」
”私の幼馴染み”という関係を利用して二人は密会を重ねていた。だがその切り札を使えるのは”私に会いに来た”……ようするに私の邸しかない。
外で二人で会っていたら、それは言い訳のしようがない。かといって、夫が単身でオルガの実家を訪れるのは不自然。
なので二人は、私の外出中を狙ってオルガが尋ねてきて、夫が持て成すという名目で時間を作っていたが、邸の使用人たち全員の雇い主は私の父。
二人の不倫に感動して、協力するような馬鹿はいなかった。
「身一つで婿入りして浮気とか……はあ……」
私は本家の跡取り娘。対する夫は継ぐ爵位も門地もない貴族でしかない両親の息子。
「儂の顔に泥を塗りおって!」
私と共に二人を眺めていたうちの一人で、夫の本家のご隠居が怒声を上げて立ち上がり、杖を振り上げ夫を殴りつけた。
「いた!ご当主様、おゆるしを!」
夫は手で顔を庇い、赦しを請うていたが、赦されるはずもない。
「手を降ろさんか!この痴れ者め!」
ご隠居が再び杖を振り下ろすと、夫は避けた。それがご隠居の怒りを更に買い、
「この男を取り押さえろ!」
防御できないように取り押さえられ、
「やめっ!いっ!ぎぃややややや!」
何度も杖を振り下ろされ殴られ、振り下ろされる杖の軌道が夫の眼球を捉え、ぼろりとカーペットに落ちた。
(汚いわ。でも、この状況ならご隠居が張り替え費用を持ってくださるでしょう)
「目が!おちじゃっだ!ひどい!ひどいよ!」
眼球が落ちたことで、夫の精神は崩壊したらしく、子どものように泣きわめくが、
「子どもみたいな声を上げているけれど、貴方は不倫をしたのだから、子どもじゃないのよ。そこのところ、解ってる?」
泣く権利すらないのよね。
そして隣で青い顔をしていたオルガは、いきなり立ち上がりドアへ向かって突進して、部屋から逃げ出そうとしたが、
「ぐへっ……げえぇぇぇ……」
衛兵に腹を殴られて嘔吐した。
ほんとカーペットが汚れて嫌だわ。この二人が不倫をしていた部屋も、汚らしくて嫌だけど。ああ、あの部屋も改装しなくちゃ。
「逃げられると思ったの。馬鹿ね?ああ、馬鹿だから、身一つで婿入りした男と、嫁の実家で浮気できたんでしょうね。ちょっと考えたら、無理なこと解るでしょう。どう教育したら、こうなるのかしら?というか、教育したの?」
部屋の隅で土気色した表情で俯いている、オルガの母親。
オルガの父親は王宮で官吏として勤務しているのだけれど、今日をもって馘首になる。だって、オルガの父親に官吏の職を斡旋したのは、私の父だから。
カーペットと一室を汚した元夫とオルガは、部屋から連れ出された。二人はこのあと、娼館に売られる。あの二人がどれほど頑張ったところで、カーペットの張り替え費用ににも届かないとは思うけど。
それから数日後、二人が娼館に売られて初客を取ったと報告が届いた。
皮肉というか、なんというか、不倫をしていたから、オルガは最初から安値で、夫は当然ながら初物なので高値がついたとか。
「そっちの娼館に売られたの……ざまあないわ!」
そうそう二人の不倫理由だけど、私に対する劣等感という共通の感情があったことから発展したんだって。
元夫は結婚するまで、劣等感などは解らなかったかもしれないけど、オルガは彼女から私に近づいてきたんだけど……忘れたのかしら?
きっと忘れたのよね、馬鹿だから。
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