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7 疑問

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「私でございますわ。サバラン様、今頃になって一体何の御用でしょうか。今日は私との顔合わせも兼ねてこちらにいらっしゃったと聞いておりましたのに」
「あぁ、そうらしいな。だが、緊急の用件だ。すまぬが、」
「もうお帰りになるのですか!?私は、今日という日の為に、何日も前から準備をしてきましたっ。わざわざマフィナ様もこのネックレスをお貸ししてくださったんです。貴方様の気分を害してしまわないよう服も仕立て直したんです。ですが、サバラン様は、私を庶子や従者以下、いえ、価値がないとお思いなのですね・・・・・・。」


ワァッと顔を覆ったナハルに同情の視線が集まる。美人の嘆き悲しむ様子に慌てて周囲の男達は、そばに寄っていく。

この騒動を利用してシエルは、巻き込まれて変な言いがかりを付けられぬよう、出口へそろそろと移動した。


(ナハルは、やはり口が上手いわ) 


ナハルの頭の中では、マフィナ様がネックレスを貸してくれたことになっているが、実際は無理やり借りたに等しい。


この街で最も身分の高いラングード家の息子であるシャーム様が深々と頭を下げてから一歩前に出た。


「サバラン様、これではナハル様が可哀想ではありませんか?少しのお時間だけでも一緒に過ごされては如何でしょうか」

 
ぐっと眉に皺を寄せたサバラン様は、手で払う仕草をした。


「・・・・・・拡大解釈が過ぎるようだな。そんなに私と話したければ、森へ一緒に来ればいい」


そう言い残すと、さっさと、こちらへ向かってくる。



すれ違いざま、サバランは、シエルにだけ聞こえるよう囁いた。


「お前もドレーン伯爵家の者だろう?魔木の本を全て貸すから、一緒に来い」


シエルは顔が一瞬引き攣るのを感じた。


ここにいても、機嫌の悪いナハルは馬車に乗せてくれないだろう。それにこの時間では荷馬車も通るまい。


決して誘惑に負けた訳では無い。
サバランがドレーン伯爵家の娘と分かったことが引っかかったのだ。


(私は社交の場に出たことがないのに、どうして・・・・・・)


シエルは覚悟を決めて、遠ざかりつつある背中を追いかけた。
  









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