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8 父親の秘密
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馬車に乗って暫くの間は、互いに無言だった。シエルは話しかけようとして、サバランの素性もよく知らないことに気がついた。彼に付き従う男に至っては、名前さえ分からない。
私の視線に気づいたのか、男は朗らかな笑顔を向けてくれた。
細身で人あたりの良さそうな顔は、とても騎士にはみえないが、格好は騎士そのものだ。軽装備ではあるものの、質の良い鎧の上に深紫のコートを身にまとっている。
魔法使いは深紫のローブを羽織る決まりがあるが、彼は騎士ではないのだろうか。
「シエル様、ご挨拶が遅れて大変失礼致しました。私は、護衛騎士のジルバ・フレンダークと申します。万霊の森への同行、心より感謝申し上げます。同行中、命にかえてもお守りいたしましょう」
「こちらこそご挨拶が遅れました。シエル・ヌ・ドレーンと申します。あの、いま向かっているのは万霊の森なのですか?」
目的地はてっきり近くの古の森だと思っていたのだ。ジルバがちらりとサバラン様を見た。彼は、こちらの事など目に入っていない様子で窓の外を眺めている。
「えぇ、先にそちらへ向かいます。その後に、王都と修道院の間にある古の森へも行きますが、シエル様はいかがなされます?」
万霊の森は、好戦的なハニーニ国との境にある。カタクリン修道院は、イートポーテル国の中央近くの南西部に位置している。
通常なら、馬車で何日かかかる。
(いま、どの辺を走っているんだろう?)
視線を流れ行く景色に向ける。
「えっ」
「ふふっ、驚きました?実は、この馬車、特別仕様なんです。魔術により普通の馬車の何倍も速く移動できるんです」
悪戯が成功したと嬉しそうに目を細めるジルバ。
「ジルバ、もったいぶらずに目安の時間を伝えてやれ。それと、自己紹介がまだだったな。サバランだ。」
「はっ。シエル様、あと1時間程で到着します。万霊の森で1時間ほど滞在した後、宿に向かいます。シエル様がすぐに帰宅されたい様でしたら、お送りすることも可能ですが、夜遅くなりますので、その、出来れば一泊して頂けたらと」
ジルバが、縋るような目線で訴えかけてくる。焦る様子に、年齢はさほど変わらないのかもしれないと漠然と思った。
もうすぐ15歳になる女性としては見知らぬ男性と外泊は見聞は良くはない。が、シエルとしては、寧ろ諸手を挙げて歓迎したい申し出だ。
「えぇ、宿を用意して頂けるなら、構いません」
ジルバは、ほっとした顔をして、連絡用の魔道具を取り出して操作し始めた。
「お前が魔木や薬草に詳しいのは、マルティン伯の影響か?」
「父ですか?いえ、父から魔木や薬草の話を聞いたことはありません」
シエルは首を傾げる。父は、お金にしか興味が無いと思っていたが、意外と博識なのだろうか。
「そうか、意外だな。良品を仕入れるには知識と経験が必要だろう。娘にもてっきり教育していると思ったんだが」
「サバラン様は父と面識があるのですね」
「直接は数回だが、パーティなど公の場でも見かけたことがある。マルティン伯から聞いてないのか?」
「えぇ、私はパーティに出たこともありませんので、話す必要もなかったのだと思います」
顎を撫でていた手が止まった。サバラン様はこちらに身を乗り出す。
「公の場に出たことがないだと?」
「はい。ですから、どうして私がドレーン伯爵家の娘と分かったのか疑問に思っていたのです」
「婚約の話が持ち上がった時に、娘が2人と部下から報告があったからな」
(婚約??そーいえば、ナハルが礼拝堂で言ってたわね)
「ドレーン伯爵の財力を利用したい父上が婚約に乗り気でな、今回が顔合わせとなるはずだったんだが・・・・・・。」
サバラン様を間近でみると、取り繕ってはいるものの、疲れが滲み出ているのがよく分かる。
「色々と問題が発生したのですから仕方ないでしょう。それより万霊の森でも、黒い花が発見されたのですか?」
「あぁ、そうだ。それ以外にも幾つか気になることがある」
私の視線に気づいたのか、男は朗らかな笑顔を向けてくれた。
細身で人あたりの良さそうな顔は、とても騎士にはみえないが、格好は騎士そのものだ。軽装備ではあるものの、質の良い鎧の上に深紫のコートを身にまとっている。
魔法使いは深紫のローブを羽織る決まりがあるが、彼は騎士ではないのだろうか。
「シエル様、ご挨拶が遅れて大変失礼致しました。私は、護衛騎士のジルバ・フレンダークと申します。万霊の森への同行、心より感謝申し上げます。同行中、命にかえてもお守りいたしましょう」
「こちらこそご挨拶が遅れました。シエル・ヌ・ドレーンと申します。あの、いま向かっているのは万霊の森なのですか?」
目的地はてっきり近くの古の森だと思っていたのだ。ジルバがちらりとサバラン様を見た。彼は、こちらの事など目に入っていない様子で窓の外を眺めている。
「えぇ、先にそちらへ向かいます。その後に、王都と修道院の間にある古の森へも行きますが、シエル様はいかがなされます?」
万霊の森は、好戦的なハニーニ国との境にある。カタクリン修道院は、イートポーテル国の中央近くの南西部に位置している。
通常なら、馬車で何日かかかる。
(いま、どの辺を走っているんだろう?)
視線を流れ行く景色に向ける。
「えっ」
「ふふっ、驚きました?実は、この馬車、特別仕様なんです。魔術により普通の馬車の何倍も速く移動できるんです」
悪戯が成功したと嬉しそうに目を細めるジルバ。
「ジルバ、もったいぶらずに目安の時間を伝えてやれ。それと、自己紹介がまだだったな。サバランだ。」
「はっ。シエル様、あと1時間程で到着します。万霊の森で1時間ほど滞在した後、宿に向かいます。シエル様がすぐに帰宅されたい様でしたら、お送りすることも可能ですが、夜遅くなりますので、その、出来れば一泊して頂けたらと」
ジルバが、縋るような目線で訴えかけてくる。焦る様子に、年齢はさほど変わらないのかもしれないと漠然と思った。
もうすぐ15歳になる女性としては見知らぬ男性と外泊は見聞は良くはない。が、シエルとしては、寧ろ諸手を挙げて歓迎したい申し出だ。
「えぇ、宿を用意して頂けるなら、構いません」
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「お前が魔木や薬草に詳しいのは、マルティン伯の影響か?」
「父ですか?いえ、父から魔木や薬草の話を聞いたことはありません」
シエルは首を傾げる。父は、お金にしか興味が無いと思っていたが、意外と博識なのだろうか。
「そうか、意外だな。良品を仕入れるには知識と経験が必要だろう。娘にもてっきり教育していると思ったんだが」
「サバラン様は父と面識があるのですね」
「直接は数回だが、パーティなど公の場でも見かけたことがある。マルティン伯から聞いてないのか?」
「えぇ、私はパーティに出たこともありませんので、話す必要もなかったのだと思います」
顎を撫でていた手が止まった。サバラン様はこちらに身を乗り出す。
「公の場に出たことがないだと?」
「はい。ですから、どうして私がドレーン伯爵家の娘と分かったのか疑問に思っていたのです」
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