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14 傷跡
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「はっ、ジルバ様っ!」
ジルバの容態を確認すべく、急いで倒れた場所へ向かう。なぜ草食の魔獣が襲ってきたのか原因が気にはなるが、それは後回しだ。
シエルが着いた時には、サバラン様がジルバの上体を起こしている所だった。
「魔力が一気に減って、欠乏状態になっただけだ」
「なっただけって、そんなっ」
「薬もいまさっき飲ませた、それにほら、怪我もしてない」
サバラン様は、ジルバの鎧の紐を乱暴にほどき、片手で胸当てをどかした。無理やり引っ張った為、下着も一緒にずれて、肌が見えてしまっている。
「きゃっ」
シエルは、小さく悲鳴を上げた。男の人の裸を見たからでは無い。あまりの傷の多さに驚いたのだ。大小様々の切り傷に加え、火傷の跡や青あざも見て取れる。治りかけの箇所に更に怪我をしたのか、膿んだようになっている傷や皮ふが引きつったようにくっついているものもあり、悲惨だ。青年の身体というより、引退した騎士の身体を見ているようだった。
「け、怪我がっ!手当しないとっ」
「今できた傷だけでは無いし、大したことないから放っておけ。それよりお前、頬の傷は大丈夫か?」
シエルは意味が理解できず、ぽかんとする。
(・・・・・・私の傷?あっ、爪で引っかかれたっけ)
怪我していたことを自覚した瞬間、痛みが増すとはよく言うけれど、まさにそうだった。激痛が走り、その場に蹲りそうになる。頬に触れると血がこびりついていた。
「・・・・・・サバラン様、申し訳ございません。シエル様も怪我をさせた挙句、戦闘でも役に立たず申し訳ありません。」
「立て、行くぞ」
サバラン様はそれだけを言い捨てて、踵を返した。ジルバを見ると、既に立っていた。
「ちょっと、無茶苦茶です!まだ無理をしない方がっ」
「いえ、もう大丈夫です。そんなことより、シエル様、治癒魔法をかけさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
にこりと微笑むその顔は、しかし、どこか痛々しかった。断ろうとしたが、縋るような目線を無下に出来なく、治して貰うことにした。パァっと頬が光ると、痛みがピタリと消えた。
「すごいっ!ジルバ様、ありがとうございます」
「完治したわけではないので無理をしないでくださいね。1週間程は、この薬を忘れずに飲んでください」
「はい、承知致しました。あの、本当に動いて大丈夫なんですか?」
包みを開くと、丸い固形状の薬が入っていた。土色で、見るからにまずそうだ。シエルは、受け取った薬をポケットにしまいながら、問いかける。
「えぇ、大丈夫です。よくあることですし」
「で、でも・・・・・・。」
「さぁ、行きましょう」
ジルバは身を翻すと、サバラン様のもとへ駆けていく。シエルは、身体中の傷について聞きそびれたことに気がついた。
(過去に何があったのだろうか・・・・・・。いや、知らない方がいい。私にはどうにも出来ないし、関係ないのだから)
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更新が遅くなり申し訳ございません。
読んで下さり、ありがとうございます!
ジルバの容態を確認すべく、急いで倒れた場所へ向かう。なぜ草食の魔獣が襲ってきたのか原因が気にはなるが、それは後回しだ。
シエルが着いた時には、サバラン様がジルバの上体を起こしている所だった。
「魔力が一気に減って、欠乏状態になっただけだ」
「なっただけって、そんなっ」
「薬もいまさっき飲ませた、それにほら、怪我もしてない」
サバラン様は、ジルバの鎧の紐を乱暴にほどき、片手で胸当てをどかした。無理やり引っ張った為、下着も一緒にずれて、肌が見えてしまっている。
「きゃっ」
シエルは、小さく悲鳴を上げた。男の人の裸を見たからでは無い。あまりの傷の多さに驚いたのだ。大小様々の切り傷に加え、火傷の跡や青あざも見て取れる。治りかけの箇所に更に怪我をしたのか、膿んだようになっている傷や皮ふが引きつったようにくっついているものもあり、悲惨だ。青年の身体というより、引退した騎士の身体を見ているようだった。
「け、怪我がっ!手当しないとっ」
「今できた傷だけでは無いし、大したことないから放っておけ。それよりお前、頬の傷は大丈夫か?」
シエルは意味が理解できず、ぽかんとする。
(・・・・・・私の傷?あっ、爪で引っかかれたっけ)
怪我していたことを自覚した瞬間、痛みが増すとはよく言うけれど、まさにそうだった。激痛が走り、その場に蹲りそうになる。頬に触れると血がこびりついていた。
「・・・・・・サバラン様、申し訳ございません。シエル様も怪我をさせた挙句、戦闘でも役に立たず申し訳ありません。」
「立て、行くぞ」
サバラン様はそれだけを言い捨てて、踵を返した。ジルバを見ると、既に立っていた。
「ちょっと、無茶苦茶です!まだ無理をしない方がっ」
「いえ、もう大丈夫です。そんなことより、シエル様、治癒魔法をかけさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
にこりと微笑むその顔は、しかし、どこか痛々しかった。断ろうとしたが、縋るような目線を無下に出来なく、治して貰うことにした。パァっと頬が光ると、痛みがピタリと消えた。
「すごいっ!ジルバ様、ありがとうございます」
「完治したわけではないので無理をしないでくださいね。1週間程は、この薬を忘れずに飲んでください」
「はい、承知致しました。あの、本当に動いて大丈夫なんですか?」
包みを開くと、丸い固形状の薬が入っていた。土色で、見るからにまずそうだ。シエルは、受け取った薬をポケットにしまいながら、問いかける。
「えぇ、大丈夫です。よくあることですし」
「で、でも・・・・・・。」
「さぁ、行きましょう」
ジルバは身を翻すと、サバラン様のもとへ駆けていく。シエルは、身体中の傷について聞きそびれたことに気がついた。
(過去に何があったのだろうか・・・・・・。いや、知らない方がいい。私にはどうにも出来ないし、関係ないのだから)
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