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13 決着

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「っジルバ!」


今ずくにでも駆け寄って安否を確かめたいが、目の前の敵はそんなことを許してくれるはずがなかった。


リガスケラスは目をギラつかせてこちらに駆けてくる。涎を垂らしてハァハァと荒い息をする様は、シエルに犬を想起させた。

「っ!」


(上の前歯がない・・・・・・。まさかっ)


「ふざけるな、突然人を襲いやがって!」


従騎士が投げたバングルの形をした魔道具がリガスケラスの後ろ左足に当たった。カァッと光ると大きく伸びて、足にキッチリ巻きついた。


リガスケラスのスピードが徐々に遅くなっていく。バングルを付けられた左足を引きずるようにしている。ふらついた、その瞬間を逃さず、


「今だ!」


従騎士達が一斉に呪文を唱え、攻撃を加える。 耳をつんざくような呻き声を上げたリガスケラスは、身体を震わせると、猛スピードでこちらに向かってきた。


折れた左足をひきずり、片目が抉られているのもお構いなく、異様な程に目を光らせて真っ直ぐシエルへ突進する。


「おい、逃げろっ!」

 
そこら中に生えているクガラシの花を大量にちぎっては、握りつぶしていたシエルは、顔を上げてサバラン様に怒鳴り返した。


「魔法で、この紙を魔獣の背中に移動させて!」
「はぁ?!何をするつもりだ!」
「お願いします!時間が無いんですっ」


リガスケラスはどんどん迫ってきている。10メートルくらいしか距離は無いだろう。尖った小石の上に片手でクガラシを絞ったエキスをかけ、紙をひらひらさせて訴えていると、根負けしたのか、正気を疑ったのか定かではないが、


「風の精霊、シルフ、従え。エオーリシッ!」


乱暴な口調で呪文を唱えてくれた。光線のすぐ後を追いかけるように風が通り過ぎていく。びゅんっ。耳元で風が鳴ったと思った時には、シエルの手から紙は無くなり、風に乗って移動していた。


シエルは、紙の上に、クガラシのエキスをふんだんにかけた小石を置く。あと数メートルに迫ったリガスケラスが確実に通るであろう地面の真ん中にそれを配置する。


シエルは、リガスケラスと相対する。視界の端で、紙がふわりとリガスケラの背中に乗ったのを確認する。あと数メートル。



ギリギリまで粘って、シエルは、右に飛び退いた。地面にぶつかる瞬間に手と足で叩き、背中を丸めて転がる。起き上がってリガスケラスを見る。



リガスケラスは小岩に体を貫かれた状態で倒れていた。口からは泡を吹き、筋肉が異様な程興奮したのだろう、死んでも尚、一部の筋肉が痙攣している。


シエルは、膝をついて胸の前で手を重ね、謝意も含めて追悼の意を示した。人を襲うなんて余程の事情があったのだろう・・・・・・。酷い殺し方をしてしまったが、安らかに眠って欲しいと思う。


リガスケラスは草食の魔獣だ。クガラシは人体に影響は無いが毒性がある。しかも、草食動物にとっては、猛毒だ。











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