双子の姉の身代わりという人生から逃げるため、空飛ぶ絨毯作ります

ねり梅

文字の大きさ
25 / 69

25 回想④

しおりを挟む
その日から、シエルは見習いになったばかりのフィンについて回って色々と教わった。薬作りよりも、体力を消耗する作業が多くヘトヘトになったが、シエルよりも細いフィンは平気な顔をしていたのが悔しかった。


年が割と近いフィンと出会えたことで、シエルは色んなことを学べた。


まず、この工房にいる子供はみんな親に売られたか捨てられたかしているということ。フィンも親に売られてこの工房に来たから、何処にも行けないという。


驚いていたら「シエルも同じなんだろう?」と言われてしまった。すぐに否定したが信じてなさそうだった。シエルも1年以上なんの連絡も貰えてないことを思い出し、説得力が無いことに気づいて、開きかけた口をまた閉じた。フィンが優しく背中を叩いて慰めてくれた。


他にも、食事は3の鐘と、4か5の鐘が鳴った時に配られ、ご飯が足りない時は、修道院に行けば子供には分けてくれることを教えてくれた。


「ライ麦パンとスープばっかりで飽きちゃったよ。来たばっかりの頃みたく粥じゃないだけマシだけどね、すぐ腹が減るから修道院でラグーとチーズをいつも貰ってんのさ」
「ラグーってなに?」
「知らねぇの?魚か、ほんとーにたまに、肉が細かく切られて入った煮込んで作ったスープみたいなもんさ。パンにつけて食べると上手いんだぜ」


こんな風にフィンはシエルが知らない食べ物をいっぱい知っていて、作り方も教えてくれた。
 

またある日は、シエルは家から持ってきた2枚の服を交互に着ていたが、ついに破れてしまった。


「どうしよう、私お金持ってない!ペテロいつ来るかな?」
「そうか、お前2着しか持ってないんだな、待ってな」


そう言ってこっそり職場を抜け出したフィンは、暫くして戻ってきたかと思うとお日様みたいな色のワンピースをくれた。


「ど、どこで手に入れたの?!高かったんじゃ・・・?」
「んー、これは俺からのプレゼントだ!上手く交渉したんだ」
「こうしょう?」
「あぁ、この街で、どこで服を安く買えるのか、貰えるのかを俺は知ってるからな。それで他の店の情報を教える代わりにタダで貰ってきたんだ。へへ、どうだ、すげぇだろ!」


誇らし気に胸を張るフィンは、本当にお兄ちゃんみたいで嬉しくって気づいたら、抱きついていた。




シエルが魔道具工房に来てから1ヶ月が過ぎた頃、フィンが春の祭りに連れていってくれた。


出かける時、ペテロが「別の場所に連れていく。フィン達とはもうお別れだから楽しんできなさい」とお金をくれたので、2人で何を買うか話しながら通りを歩いていく。


そこで、ちょうどお店から出てきた女の子の後ろ姿に見覚えがあった。じっと見ていると女の子の後から大人が2人出てきた。振り向いた女の子の顔を見て、シエルは固まった。


「えっ、」
「んぁ、どーした?」


あれは間違いなくナハルだ。お父さまとお母さまと仲良く手を繋いでいる。やっと会えた。


「お父さま、ありがとうございます!こんなに素敵なお洋服を買っていただけて嬉しいです」
「あぁ、勉強を頑張っていたからな。さすが私の自慢の娘だ」


微笑むお父さまの方へシエルは駆け出す。角を曲がろうとしている。


「待って、行かないで!」


急いで追いつこうとして足がもつれてしまった。あっと思う間もなく地面に激突していた。


「くっ、うぅっ」
「おい、大丈夫か?!」


泣きたいのを我慢して立ち上がる。と、派手に転んだらしく、ナハルとお父さまたちもこちらを見ていた。


(わたしを心配してくれているんだわ!これで、やっとお父さまに褒めてもらえる!お家に帰れるわ)


目をぐいっと乱暴に拭って走り出す。お腹の底からありったけの大声を出した。


「おとうさまっ、シエルです!待ってくださいませ!」


一瞬、目が合った。声も聞こえているはずなのに、お父さまは、ナハルとお母さまの背中を押して角を曲がっていってしまう。


「そんな、どうして?!お父さま、シエルですっ!!」


角を曲がった瞬間、シエルは誰かにぶつかった。歪んでいく視界の中で、その人が何かーーーを呟いていたような気がする。聞き取ろうと必死になるが、意識は待ってはくれなかった。

 

優しく揺らされ、薄く目を開ける。顔を覗き込んでいたのはフィンではなく、なぜかペテロだった。ぼやけた景色の中で、ペテロの悲し気な表情がくっきりとしていた。



(あぁ、私は、捨てられたのね。フィンたちと同じように捨てられたのね・・・・・・)



目が覚めた時には、何日も経っていた。それからシエルは何も考えず、淡々と職人のもとで仕事を覚えていった。  


月日が流れていく間に、シエルは泣くことも笑うことも無くなっていた。技術の対価が感情だったのではないかと思うほどだった。


操り人形のようだ、そう人々は囁くようになった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

処理中です...